09 庵
久しぶりの更新です(´・ω・`;)
足音一つ聞こえない暗い路地裏に黒い影が二つ。一人はフードの奥から綺麗な金髪をなびかせている少年、否少女。もう一人は茶髪で傷だらけの少年。紫と緑のオッドアイは虚ろで焦点が合っていない様に見える。
「………おい、少年」
「………………」
「返事がないな。生きてるのか、それとも死んでるのか」
少女の問いかけに少年は反応を示さずにただ虚ろな瞳で何処か一点を見つめている。
「少年、お前はそこに居て何がしたい?」
少女は淡々と少年に問いかける。
「お前はそうやって現実から逃げて過ごすのか?」
「……うるせぇ、黙れよ」
少女の言葉に殺気をだしながら睨む少年。
「……周りにある小さな幸せにも気が付かずに不幸な事しか見つけられないなんて、可哀想な奴だな」
「黙れって言ってるだろ!」
目をギラギラさせて今にも襲いかかってきそうな少年を見た少女は満足そうに口角を上げる。
「それだけ元気があれば充分だな。少年、お前は俺の手をとるか?」
少女は少年に手を差し伸べる。少年は差し出された手を悲しそうな目で見た後無言で顔を背ける。
「……もしお前が気に入らなかったらその後は自由に好きにすれば良い」
「お前それは本音で言ってるのか?」
「もちろん。本音だ」
「…………」
少年は何かを決意したように顔を上げ、少女の手をとる。ゆるりと口角を上げ少女の目を真っ直ぐにみる。
「しょうがないから拾われてやるよ」
「……ふっ、しょうがないから拾ってやるよ」
「………お前良い性格してんな」
「よく言われる」
お互い悪態をつきながらも力強い、何かを約束する様な握手をする。
「少年名前は?」
「……ねぇよ、んなもん。拾ってくれんだろ? だったらお前がつけろよ」
「ん、確かにそうだな。今日からお前の主人は俺だからな」
「いや、待てよ。確かに拾われたがお前の犬になった訳じゃねぇぞ」
「……………冗談だ」
「今の間は何だよ」
「そうだなぁ、名前か」
「は、無視か」
少し拗ねた様な表情をする少年を横目に見て少女は名前を考える。
「……庵」
「い、おり?」
「そう、庵。お前の名だ」
「ふん、まぁまぁだな」
「……ふっ、素直じゃない奴だな」
金髪を風になびかせ目を細めて笑う少女は実に美しく艶やかだった。また、少女につられて口元をゆるりと緩ませる少年も綺麗な笑みを浮かべていた。
「じゃ、ついてこい」
「どこ行くんだよ」
「どこって……、来ればわかる」
「は? 教えてくんねぇの?」
「いや、来ればわかるって言ってる。黙ってついてこい」
「………チッ」
「舌打ちしても無駄だ」
少年はもう一度少女の手を握る。すると少年は少女の手を少し不思議そうに見て一人首を傾げた。そんな少年を見た少女は静かに苦笑いを零したが何も言わずに歩き出した。