兄食系妹
久々の投稿です
暇つぶしなれば嬉しいです
深夜に自室で漫画を読んでいるとノックされた。
「開けていいぞ」
「お邪魔しまーす」
扉を開け入ってきたのは妹の友佳だった。
「何か用?」
と聞いてみたがこの時間に来た理由はなんとなく察しはつく。
また我慢ができなくなったのだろうな。
「あのね、お兄ちゃん」
顔を赤らめスゴく言いにくそうな友佳。
「今日も……お兄ちゃんを……」
容姿は並み、学校の成績は平均的、とこれといって特徴がない普通の女の子。
それが俺の妹、友佳だ。
……だが友佳には他人に言えない秘密がある。
俺しか知らない他人に知られちゃいけない秘密がある。
それは――
「今日もお兄ちゃんを食べて……いい?」
友佳が俺を――実の兄を食べ物として見ているということだ。
とても美味しく感じるらしく薬物のように依存してしまっている。
「しょうがないな……入っていいよ」
「ありがと!お兄ちゃん」
友佳は嬉しそうに部屋に入ってきてベッドに腰を下ろした。
俺も机に隠してある木工用ナイフを取り出し友佳の隣に座る。
食わせると言っても肉を切り取って食べさせる訳でなく血を味あわせる。
友佳は血肉を噛んで飲み込みたいようだがさすがにそれは嫌なので我慢させている。
左腕を捲ると包帯が巻いてありそれをほどくとそこに無数の切り傷が現れる。
いつ見ても痛々しい。多分これ一生残る。
「痛っ!」
そこに刃を当てて一気にはしらせる。線ができそこから血がにじみ出る。
何回やっても慣れないな。やっぱり痛い。
ふと視線を感じ友佳を見ると友佳が切り傷を凝視していた。
鼻息荒く我慢限界といった感じだ。
「どうぞ」
「……っ!!」
腕に差し出すと友佳は勢いよく腕をとり舌を這わせる。まずは切り傷の周りの肌をなめてくる。
肌でも味は感じるらしいが一番美味しいのは血肉だそうだ。
一番美味しいところは最後に味わいたいようだ。
熱くぬめった舌の感触がとても気持ち悪い。鳥肌がたつ。
ピリッと痛みが走った。
肌から切り傷に移動したようだ。
肌のときは優しくゆっくりと舌を動かしていたが、切り傷になると活発に動かしてくる。傷口を拡げるように舌をねじ込んでくるので出血が酷くなる。
血肉を味わうとともにそれを狙っているんだろう。
不思議なもので最初は痛くて仕方なかったが段々と痛みが麻痺してくる。
もしかしたら友佳の唾液には麻酔効果があるのかもしれないし、または単純に痛覚神経がヤられちまったのかもしれないがあまり気にしてない。
痛くないならそれにこしたことはない。若干不安だけど。
10分ほどたってやっと満足したのか口を離してくれた。
「おい、口の周り汚れてるよ」
友佳の口の周りは俺の血と自身の唾液でベトベトだ。
「ん……」
友佳は汚れを舌で舐めとりこちらを向いてニコリと笑った。
「今日も食べさせてくれてありがと、お兄ちゃん」
そういうと馴れた手つきで腕を治療しおやすみなさいといって自室に戻っていった。
「はぁー」
友佳が部屋から出ていった瞬間おもいっきり脱力した。
枕したから黒いリモコンみたいのを取り出す。
スタンガンだ。
今回もこれを使わずにすんだ。
あー恐かった。いつ噛み千切られるか分かったもんじゃない。
でもこれは必要なことだ。
友佳に食べさせるのは2つ理由がある。
1つは食い殺されないようにだ。
定期的に食べさせないと友佳は理性をなくして襲いかかってくる。
前にしばらく食べさせなかったときに後ろから飛びかかってきて首筋を噛まれた。
あの時は本当に殺されるかと思った。
それからスタンガンを常備している。
2つ目は友佳に普通の食べ物を食べてもらうためだ。
友佳は俺の味を覚えてからは一切食わなくなった。
そのため栄養不足になり一時期、歩くこともままならないほど衰弱してしまった。
このままでは命が危なかったので仕方なく俺は約束をした。
俺を食べさせる代わりに無理にでも食べろと。
友佳はそれを了承し今に至る。
どうして友佳は俺に依存しているのかはわからない。
友佳自身もよくわかってなく気づいたら俺を食べたくなったらしい。いつからかもはっきりしていない。
そんな妹に彼氏ができた。その話を聞いたとき俺は期待した。妹から解放されるんじゃないかと。友佳の俺に対する食人衝動は過度な愛情からくるものだと思っていた。だから彼氏ができた今その矛先が彼氏に向かんじゃないかと期待した。彼氏には悪いけど。
結果的には俺の考えは外れた。彼氏ができてからも俺への食人衝動は収まらずまた彼氏に対しても特に食欲を感じることはないそうだ。
そんな生活が何年も続くとだんだんと慣れてきた。初めは寝るのも怖く不眠症気味だったが今ではすっかり寝れるようになった。慣れって恐ろしい。
そんな時だった。
夜中、何かの気配を感じて目を開けると
「――っ!?」
友佳がいた。俺の顔を覗き込んでいた。
暗いので表情はわからない。だけど頭の中で再生された友佳の顔は肉食動物が獲物を狙うような――とても恐ろしい形相をしていた。
「ひぃぃっ!!」
思わず悲鳴を上げ友佳を突き飛ばす。きゃっという声が聞こえたがそんなのにかまってられない部屋を飛び出し家から逃げ出す。
深夜、人通りは皆無で静かな住宅街の中、俺の荒い呼吸音だけが響いていた。
肺も限界だったので走るのをやめ軽く前屈姿勢になりながら呼吸を整える。足がズキズキと痛むので視線を向けると靴を履いてなかった。靴を履く余裕なんてなかった。
「お兄ちゃん」
後ろから声が聞こえた。振り返らなくてもわかる。友佳だ。友佳が追ってきたんだ。俺を……俺を食い殺しに
「あ……ああああああああっ!!」
叫びながらがむしゃらに駆け出す。頭は恐怖で一色だった。だから気が付かなかった。猛スピードで迫る車に――
「え……」
今まで味わったことのない衝撃と一瞬の浮遊感。それから何かを引きずる音。視界は暗転して状況がつかめない。体が動かない。感覚がない。
「う……あ……」
だんだんと目が見えてきた。どうやら車にひかれて道路の真ん中で大の字なって転がっているらしい。体は相変わらず動かないので頭を少し上げ目を動かし自分の体を見てみる。見て後悔した。右腕はありえない方向に曲がってるし左腕は皮がそぎ落ちていて血が止まらない。右足からは骨が飛び出ている。背中なんかもきっとひどい怪我をしてるんだろうな。……どうして生きてんだ俺……?
ふと気配を感じ視線を向けると友佳が俺のすぐ近くにいた。街灯がない真っ暗な道路なので友佳の顔が見えない。でもなんとなく想像がつく。大好物を目の前した子供のような顔をしてるんだろうな。こんだけ血を流してんだ。もう友佳の理性なんか欠片も残ってないだろう。このままじゃ食い殺される。……あ、やばい。意識がもうろうとしてきた。
「お……ちゃ……だ…………」
友佳が何か言ってる。でもなにを言っているかわからない。そのまま意識が落ちた。
目をあけると白い天井。あれどうなったんだ?
「……お兄ちゃん!!」
「……友佳……か?」
横をむくと友佳が青ざめた表情で見下ろしていた。そこで気が付いた。自分が横たわっていることに。
「すぐにお医者さんを呼んでくるね!!」
ばっと身をひるがえし部屋から走って出て行った。ここは病院なのか
そのあと、医者やら、両親やらが飛んできていろいろと話を聞いた。事故にあってから丸三日がたっていてしばらくは入院生活を送るらしい。そして俺をひいた車はそまま走り去ってしまいまだ捕まっていないとのこと。両親は夜中に突然奇声をあげ家から飛び出していった俺を変な薬でも使ってんじゃないかと疑っていたが薬物検査の結果、特に異常がなかったのでほっとしていた。これについては怖い夢をみて思わず家を飛び出て行ってしまったということにした。いい年こいて子供かと呆れられたが本当のことを言うわけにはいかないしな
やることがあるらしく両親と医者は部屋から出て行って友佳と二人きりになった。
「お兄ちゃん……ごめんなさい……!!」
ぽろぽろと友佳が泣き出した。
「ど、どうしたんだよ急に」
「わたしのせいだよ。お兄ちゃんがこんな大けがしたのは……わかってるんだよお兄ちゃんがわたしを怖がってるってことは……それはそうだよね。わたしがお兄ちゃんにしてきたことを考えると……わたしね、最近夢を見るのお兄ちゃんがほしくてほしくてたまらなくなってお兄ちゃんを残さず食べちゃう夢を。そのたびにお兄ちゃんの様子を見に行くの……不安で不安でしょうがなくて……あれは夢じゃなくて本当の事じゃないかって」
肩を震わせ嗚咽をもらす友佳。こんなことを考えていたなんて予想もしなかった。
「わたし、決めたの。このことをお父さんとお母さんに伝える。伝えて病気として治療することにしたの」
「ちょっとまって、それじゃあ友佳が……!!」
「いいの、これ以上お兄ちゃんに迷惑かけたくないし」
「迷惑なんかじゃ……!!」
言葉に詰まってしまった。何も言えなくなった俺に友佳は笑みを浮かべる
「お兄ちゃんはわたしにとってガマンできないぐらいとってもおいしい食べ物だけどそれ以上に……大好きで……大切なお兄ちゃんなんだよ」
読了感謝感激です