困難なGoodBye
そう。俺は自分の関係から如月睦月という存在を簡単に消し去ったのだ・・・。
―次は宮本・・・と言ったところか?
prrrr・・・・
「はい?」
「宮本か。大事な話がある。研究室に来てくれないか?」
「?構いませんが。では、今すぐ行きますね。」
□■
研究室。
「それでどうかされたんですか?」
「うん。少し昔の話を宮本としたくなってね・・・。」
「?また、奇妙なことを言いますね。昔の話とは?」
そこで一息置く。
「俺たちの出会いだ。」
宮本は人差し指を顎に置き、視線は少し上を見ている。
「寝てましたよね?」
「あぁ。覚えていたか・・・。」
「そりゃまぁ・・・。それがどうかしましたか?」
そう返されることは計算内なのだが、返す言葉がない・・・。ここで関係を黙って消すことも出来る。だが、消したところで宮本が必ず死なないとも言えない。つまり・・・。
―現実逃避。
分かっていた。次に俺が発したのはわかっていながら文脈がつながらない内容だった。
「ジパングどう思う?」
「???。あの、どうかされましたか?」
いつもと違う俺がそこにいたのか・・・。宮本は顔色を伺う。
「しかし、どうしてお前は俺と一緒にいる?出会いは本当にしょうもないことだろ?」
「そんなことが聞きたかったんですか?」
俺の覚えている範囲じゃこいつとは席が近くて一度話した程度。その後、フジ会館に足を運ぶようになり今に至る。つまり、彼女が俺たちと活動していることはおかしかった。
「教えてもいいですが、少し付き合ってもらえませんか?」
「?。構わないが・・・。」
□■
京命大学付属高等学校。
実に卒業来にやってきた。在校中にアンカープランが発動し、池田の死体を乗せたタイムマシンが作った傷はいまだ修繕されていなかった。
屋上。
「どうした?」
「ここに座って話をしたんですよね?」
「あぁ。」
あの時とまったく同じ位置に俺と宮本は腰をかける。目に映るのは未だ大きな傷を残した棟の姿。
静寂な時間が流れ続ける。まるで時間が止まっているのかと錯覚するほど。
「どうして、今でもあなたと一緒にいる理由ですよね?」
「・・・あぁ。」
「あなたは私がギターを弾くことに興味を持ってくれたからです。」
―?
頭に浮かぶクエスチョンマーク。
「私は聞かれるまでは答えない方なんです。たまたまバンドブックを見られたりとかじゃないと。でも、いつも返ってくる反応は『似合わない』、『変わっている』という言葉。ギターって結構誰でもやるものだと思っていたんです。それだけに・・・。多分普段の真面目な性格が原因なんでしょう・・・。」
「・・・・。」
俺は黙って聞くことにした。
「極めつけは親でした。あの時言いましたよね?姉の形見だと・・・。親としては思い出したくなかったんでしょうね。相当怒られました。」
「・・・・。」
「でも、あなた。山口正彦さんだけは馬鹿にしなかった。あの時事故と言ったと思いますが違うんです。」
―・・・・?事故じゃない?
「強盗に殺されたんです。母も傷を負いました。それで思い出したくなくそう言ったんです。」
「・・・・。そうだったのか。」
「あの、私どうしても聞きたいことがあるんです。」
そこで何を言おうか悩んでいた俺に希望のようなものを感じさせる言葉。
「私、最近殺されたりしませんでした?」
―ッッッ!?。まさか・・・思い出しかけている?
「それから、如月さんはどこへ行ったんですか?」
チクリと胸の奥底が何本もの針で刺される感覚に陥る。
「何・・・隠しているんですか?」
「な、何も隠していな・・・い。」
「あの、もう言ってしまいますが”思い出していますから。”」
―な・・・。
「な・・・。」
頭で考えたことが反射で声に出る。
「私とのことも無かったことにするんですか?」
「研究室に戻ろう・・・。」
やっとひねり出した言葉はそれだった。研究室には誰かいるだろう・・・。ならば、この話をしなくて済む。
□■
研究室。
が、考えていたことはかき消された。そこはガランとした部屋。つまり、誰もいない。
「で、どうするんですか?」
「・・・・・。外に行く。紙は持っていかない。ペンもな。」
□■
―そりゃそうだ。消されて堪るかっての・・・。
「ッ!」
だが、体は恐怖をかき消したいのか、拳を握り締め血をにじませていた。
数字を書き終わっていた。
その頃には俺は。
―これでいい。
という意識が支配していた。
そして、必要なところを指で消し、書き直そうと3桁の数字を入れようとする。
「何をしているの?」
「み、美紀・・・。」
「あんた、その数字。何をしようとしているの?」
「消すんでしょう?宮本さんとのこと。」
何故こいつが知っている?
「メール来たから。なんとかなるよ。」
「何ともならないから言っているんだろう!!!!!!!・・・。す、すまない。」
「・・・・。」
そこで俺は膝を落とした。
「だ、誰か・・・・・・・。俺を助けてくれ・・・・・。・・・・・・・・・。なんて言えるわけないんだ。これで間違いないんだ・・・・。あと少しなんだ・・・。」
最後の2を入れてしまった。
「本当にいい・・・・・・・」
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間違ってなんかいないんだ・・・。




