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大統長
ふすまを静かに開けると、そこは30畳ほどの畳敷きの部屋だった。
その中心に、時たま咳をしつつ臥せっている老人が一人いる。
「大統長」
「おお、その声はハクだな」
臥せながらも、その声には張りがあり、今にも襲いかかってきそうな気迫が込められている。
「よく分かったな」
「当たり前だ、何年来の付き合いだと思っている」
ガホガホと喀血しつつ、体を横にして、俺たちをその老人は見た。
「お前は変わっていないな」
「そっちは大いに老けたな」
「違いない」
わずかにしゃがれたその声ではあるが、目は煌々と照っており、思わず後ずさりをしてしまうほどの力があった。
「それで、この儂に何の用だ。囚われていたはずのハクよ」
「簡単だ。この少年を元の世界に返してほしい」
単刀直入に、犬は大統長に告げた。