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天守
身分が高そうな人は、門衛を黙らせると、俺たちを門の内側へと入れてくれた。
「いやはや申し訳ない。末端まで教えるのが難しかったようで」
「いや、構わない。しかし、大統長は頑張ってるのか」
犬はその人に聞くが、残念そうな表情を浮かべて答えてくる。
「床に臥せっておられる。もう、長くはないだろう」
「……そうか」
犬も、何やら残念そうだ。
歩いている間、この人に対して誰もかれも頭を下げているところから、やはり身分がすごく高いようだ。
俺はそう思いつつ、その人を見ていると、ふとこちらを振り向いた。
「ああ、そういえば何も行ってませんでしたね」
歩きながらですが、と彼はいい、俺に自己紹介を簡単にしてきた。
「この国の老中格です。どうぞよろしく」
老中格がどんな役職か分かる前に、天守へたどり着き、そして扉が開かれ、さらに階段や廊下などなどを歩き続けると、やっと統長の部屋へとたどり着いた。
天守の中は、ほとんど無音といってもいいほど、会話すら聞こえない世界だった。