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尾行
「確かに、本物のようだ」
「ふむ、ならば通り給え」
槍先を俺たちからそらし、どうにか通してくれる。
「あんがとよ」
犬も一緒に通ることができたが、しばらくして気付いたことがある。
「……なんだよ、尾けてきているのか」
俺は軽く舌打ちをして、独り言を言う。
「気付いたのか、優秀だな」
犬がそのひとりごとに反応する。
「あれだけ気配出されてたら、どんな素人でもばれるだろ」
「案ずるな。どうせ手は出してこん」
俺たちがいるのは、この都市でも有数の繁華街の一つだ。
そうそう事を起こしはしない、犬はそう思い、そんなことを言ったのだ。