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郊外
歩いていると、徐々に光が近付いてくる。
町々が、こちらに迫ってくるように、せり出してくる感覚だ。
「すごいな……」
「こら、まだ郊外も郊外のところだ。ここからが本番だよ」
犬が俺のすぐ横にぴったりついて歩いている。
通りの人は、奇怪な目でこちらを見ている程度だ。
どこぞのように塩をまかれるということはない。
「……どうした」
犬が俺を見ながら聞いてくる。
「いや、ここは魔術とかそういう話は出てこないんだろうなって」
「この街は、昔から科学と芸術で成り立っているからな。伝承は聞けども、さほどそれ一辺倒ということはない」
なるほどと、俺は思った。