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峠2
しばらく夜盗の1人か2人は追いかけてきたが、気づいたらいなくなっていた。
「もうそろそろいいだろう」
俺が犬に言うと、ゆっくりとスピードを緩め、そして俺をおろした。
ブルブルと、水浴び後の犬のように体を揺する。
「では、こっちだ」
かなり駆け上がってきたようで、もすうぐで峠というところまで来ていた。
向こうの空が、ほのかに明るくなっている。
「古国の一つが、この峠の向こうにある」
犬は言いながらも、俺に並走している。
「いよいよ、初めての古国なんだな」
「ああ、お前にとっては初めてだろう」
懐かしそうな顔をしている犬とともに、俺は峠に到達した。