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船頭
川岸まで降りてみると、船がいた。
「おい船頭」
声を聞いたのか、こちらを煙草をふかしながら振り返る。
「この男だけ乗せてやるよ。犬はお断りだ」
「何文だ」
俺がとりあえず聞いてみた。
「どんだけ金を積まれても、犬はお断りだ。お前は5文だな」
「んじゃ、こっちは泳ぐか」
伸びをする犬を見ながら、俺は財布を開ける。
「あ……」
「あ?」
船頭が聞き返す。
「なんだ、金持ってないのか?」
「ええ、そのまさかのようで」
「ったく、しゃーないな。なら、なにか5文ぐらいの物渡してくれたら、載せてやるよ。でも、犬はお断りだ」
もう3度目にもなると、さすがにいらっとくるが、それについては何も言わずに、カバンの中をあさり始める。




