宿
女将さんの謎が解けないまま、俺は2階の部屋へと犬と一緒に通された。
「それでは、どうぞごゆるりと」
ふすまを音もなく閉められて、俺はやっとカバンを床へ置いた。
「どうしたんだ」
犬も伸びをしながら俺に聞いた。
なにか聞きたいという顔でもしていたのだろう。
そして、それは事実だった。
「いや、聞きたいことがあるんだ」
「ここの女将さんのことだろ」
伸びを終えると、犬は俺に大雑把ではあったが、説明をしてくれた。
「ここの女将さんは、昔はとある古国で将軍をしていたんだ。だが、大混乱によって国は滅亡。従うべき主君を失い、放浪しているうちにここにたどり着いたんだ。それいリア、ここでずっと仕事をしている。俺が知り合った時には、すでにここで女将さんとして働いていたな」
「じゃあ、お前は女将さんから見たら、敵じゃないのか。落ちてしまうきっかけを作ったんだから」
「だが、そう考えていないようだ。俺は政治的なことには疎いが、少なくとも、俺がはめられたということを信じているようだな。だから、俺は何も言われない」
「女将さんは何を知ってるんだろう…」
「さあな。少なくとも、俺にゃ関係ないさ。たとえそれが俺が無実だということを証明してくれるものであってもな」
言いたいことを言い終わったのだろう。
犬はそれからすぐに丸くなり、あくびを一つしてから眠り始めた。