15/49
山越え
海へは山を越えなければ行けないそうだ。
「どうやってだよ」
山は四方にあるが、犬が歩いているのは日が出ている方向だ。
「道は常に続いているものだよ。そして、我々が歩いているところが道なのだよ」
「確かにな…」
道と言われれば、石畳がずっと山の向こう側まで続いている。
だが、長い間使われていなかったようで、ところどころ獣道と化しているところもあるほどだ。
「さて、こっちで間違ってはいないはずなんだが…」
犬が不安をあおるような言葉を吐き出す。
「おいおい、俺はお前を頼りにしてるんだからな」
「それぐらい分かってるさ。ほれ、もうすぐ峠だ」
山の峰がそこまで迫っていた。