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御目見え
城の中に通されると、何も言わずに、ただ歩き通しだ。
昔の日本の城と言った感じで、あちこちに懐かしさすら感じさせるような造りになっている。
「傘蒲殿へ、御目見え願い奉る」
ある部屋の前で、役人が平伏して、部屋の中へと叫んだ。
俺らは立ちっぱなしだが、別に何も言われなかったのでそのまま立っていた。
「入れ」
「はっ」
役人が一言発すると、すぐにふすまを開く。
中には、裃に身を包んだ偉い人がいた。
「おぬしは下がれ。犬と旅の者よ、こちらへ」
その人に言われ、俺は犬のすぐ横に立ちながらその人のところへと寄った。
「ふむ、なるほど」
傘蒲は、俺がここに来た顛末を一通り聞き終えると、さらに奥の間へと呼びかける。
「城主殿、かの者がお目通し願っております、いかがいたしますか」
「…通せ」
「はっ」
城主に言われ、再び平伏している傘蒲は、すぐに姿を正し、ふすまを開ける。
上座に座っていたのは、肘掛けに身をもたせている城主、木下正邦だ。