運命の指輪
運命の指輪が見える、男が居た。
彼には人々がみな薬指に指輪をして見えるのだ。老若男女、誰と言わずに、大抵の人間はそうだった。指輪には何種類かあって、親しげにする二人の指には同じ指輪が見えるのだった。
結ばれる二人のしている指輪は、必ず同じものだった。しかしそれはその男にしか見えておらず、彼の指には指輪が無い。
彼はある日好きになった女性と、友人がお揃いの指輪を嵌めてるのを見付け、
友人の指輪を抜き取ってしまった。友人と彼女は間もなく交際を始めたのだが、その指輪を男が嵌めるようになって数日後 友人は見知らぬ女と共に逃げ出し、彼女を置いて行方をくらましてしまった。
男は彼の友人として、親しかった彼女を慰めるうち、二人は惹かれ合っていき、結ばれることになる。男と彼女の薬指には揃いの指輪があった。
もう、他人に見えない指輪ではなく、本物の指輪で結ばれている。そう思って男は安心した。
何年か幸福に過ごすうち、本来ここに居るのは自分ではなかったかもしれない、という考えが浮かばないではなかったが、それは友人に「見る目」が無かったせいだと自分を納得させてきた。
しかし、指輪は元々友人のものだったから、男の指に合っていなくて、ふとした時になくしてしまった。
男は不安になり、何日も指輪を探した。
けれど見付からない。彼は焦って、元の指輪が見付からないならと、彼女の指輪と同じものを持っている人物を探し始めた。そいつから指輪を頂戴すればいい。
男が何かを探し続けている様子に妻の不審がつのっていく。彼女は彼の様子を観察していた。
そうして彼が見知らぬ女と浮気をする現場を目撃したのだ。男が彼女と同じ指輪の人物を探して、商売女に運命の相手など必要無いだろうと考え、手当たり次第に呼びつけていたことなど、知る由もなかった。
夫婦は離婚することになった。
別れの日、男は彼女の薬指から 二人お揃いの結婚指輪と、
彼女の運命の指輪を 抜き取っていった。
一度目の男に逃げられて、二度目の男には浮気され、恋ができなくなった女性のはなし。




