ep2
ふむ
第2話 初めてのスキル発動
陽の光が、やけに眩しく感じた。
草原の風が頬を撫で、遠くでは鳥のような鳴き声が響く。
――現実感が、ある。
夢ではない。ここは本当に“異世界”だ。
俺はしばらく歩きながら、周囲を観察した。
地形、空気、気温。どれも地球と大きな差はない。
だが、空に浮かぶ二つの月だけが、確かに“非現実”を証明している。
「さて……まずは街だな」
ルミナから与えられた最低限の知識によれば、
この草原を抜けた先に「リュミエール」という交易都市があるらしい。
まずはそこへ向かい、情報と生活基盤を確保する。
――その前に、確認しておくべきことがある。
俺は足を止め、軽く息を吐いた。
「“衝撃吸収”……どんな条件で発動するのか」
スキルの説明は曖昧だった。
おそらく、何らかの“外的衝撃”を受けたときに機能する。
つまり、試すには実際に衝撃を受ける必要がある。
俺は近くの岩を見つけた。
膝ほどの高さのそれに、ためらいなく拳を叩き込む。
ドン――!
本来なら、拳の骨に痛みが走るはずだった。
だが、痛みはない。
代わりに、胸の奥にわずかな熱のような“圧”が生じた。
【衝撃吸収:発動】
「……これが、スキルの反応か」
拳に傷ひとつない。
なるほど、物理的な衝撃を“吸い取り”、自分の内部で放出できるエネルギーに変換している。
「防御特化……いや、使い方次第では攻撃にも転用できるか」
試しに、その“圧”を意識して外に放とうとする。
次の瞬間、掌から軽い衝撃波のようなものが発生し、草が波打った。
「やっぱりな。蓄積したエネルギーを放出できるわけか」
初歩的な実験にしては上出来だ。
このスキル、応用次第で相当面白い。
だが、その時だった。
――ガサリ。
草むらが揺れた。
音の主は、灰色の獣だった。
狼に似た姿だが、毛並みが荒れ、赤い瞳が異様に光っている。
【ファングウルフ】【ランクF】
――低級魔獣。ルミナが役立つであろうと
教えてくれた魔物情報にあった。
「……実戦テストか」
獣が低く唸り、飛びかかってきた。
速度は想像以上。反射的に腕を構える。
ドガッ!
牙が腕を噛む――が、痛みはなかった。
衝撃は完全に吸収され、代わりに体の奥にエネルギーが流れ込む感覚。
【衝撃吸収:蓄積許容量10%】
【蓄積率 18%】
「数字まで出るのか。便利だな」
狼が再び距離を取る。
俺は一歩踏み込み、拳を突き出した。
「今度は、放出だ」
【衝撃放出】
拳から放たれた見えない衝撃波が空気を歪ませ、
狼の体を吹き飛ばす。
ドガァンッ――!
獣は木に激突し、沈黙した。
「……想定より威力があるな」
静かに息を吐く。
その瞬間、体の奥でわずかな痛みが走った。
筋肉が軋み、視界が一瞬だけ揺れる。
「なるほど。吸収量が限界を超えると、反動が来るのか」
諸刃の剣――まさにそういうタイプのスキルだ。
だが、理解できれば制御もできる。
問題はない。
俺は倒れた獣を見下ろし、淡々と呟いた。
「検証完了。……次は寝泊まりできる街だな」
風が吹き抜け、草原が波打つ。
二つの月が静かに見下ろすその下で、
俺は拳を握りしめた。
「この世界、理不尽すらもスキルで覆せるなら……生きる価値はある」
そう言い残し、俺はリュミエールの街へと歩き出した。
頑張っていけるかな




