表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

解き明かし、迷宮にいれるクマちゃん。

 名探偵クマちゃんはハッと、もこもこしたお口をピンク色の肉球で押さえた。


「クマちゃ……」


 まちゃかこれは……、と。


 クマちゃんのつぶらなお目目にはしっかりと映っていた。

 鉢植えからこぼれた土。

 倒れたコップから流れ出た水。

 そしてその下で乱れ、白から茶へと変化していく謎の袋――。


 クマちゃんは、子猫がミィ……と鳴くような声でつぶやいた。


「クマちゃ……」


 事件ちゃ……。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――リーダー俺の枕カバー知らない?


 ――知るわけねぇだろ。


 生後三か月の子猫をはるかに超える頭脳をもつ名探偵は、うす汚れた袋の謎を解明するため、秘密の道具をごそごそ……と、大体何でも入る鞄から取り出した。


 それは、近場で手に入れたハサミを、名探偵が色々凄すぎる魔法で猫手サイズに作り替えたものだった。

 子猫の肉球でもつかみやすく、それでいて切れ味はするどい。

 まるで刃物にこだわりがある冒険者が、毎日欠かさず手入れをしているような、上質なハサミだ。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――リーダー俺のハサミ見なかった? ここ置いてたんだけど……。


 ――知らねぇっつってんだろ。


 穢れなき被毛を持つ名探偵は、何でも切れそうなハサミを手に、きちゃない袋にヨチヨチ……と近づいた。



 汚水にひたされた袋は名探偵の拾得物によってやや斜めに開かれ、その結果、『中には何もない』という真実が解き明かされた。


 名探偵が証拠品をずるずる……と部屋のすみへ運ぶ。

 それから、大体何でも入る鞄の中に、びちゃ……と、かつて袋だったものをファイリングして、今回の事件を締めくくった。


 袋があれば引きずってしまう子猫とよく似た性質をもつ名探偵は、丸くてふわふわな頭をうむ、と頷かせて言った。


「クマちゃ……」


 解決ちゃ……、と。


 遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。


 ――うわっ、何ここぐっちゃぐちゃなんだけど!!


 ――リオ、うるせぇ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ