解き明かし、迷宮にいれるクマちゃん。
名探偵クマちゃんはハッと、もこもこしたお口をピンク色の肉球で押さえた。
「クマちゃ……」
まちゃかこれは……、と。
クマちゃんのつぶらなお目目にはしっかりと映っていた。
鉢植えからこぼれた土。
倒れたコップから流れ出た水。
そしてその下で乱れ、白から茶へと変化していく謎の袋――。
クマちゃんは、子猫がミィ……と鳴くような声でつぶやいた。
「クマちゃ……」
事件ちゃ……。
遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。
――リーダー俺の枕カバー知らない?
――知るわけねぇだろ。
生後三か月の子猫をはるかに超える頭脳をもつ名探偵は、うす汚れた袋の謎を解明するため、秘密の道具をごそごそ……と、大体何でも入る鞄から取り出した。
それは、近場で手に入れたハサミを、名探偵が色々凄すぎる魔法で猫手サイズに作り替えたものだった。
子猫の肉球でもつかみやすく、それでいて切れ味はするどい。
まるで刃物にこだわりがある冒険者が、毎日欠かさず手入れをしているような、上質なハサミだ。
遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。
――リーダー俺のハサミ見なかった? ここ置いてたんだけど……。
――知らねぇっつってんだろ。
穢れなき被毛を持つ名探偵は、何でも切れそうなハサミを手に、きちゃない袋にヨチヨチ……と近づいた。
◇
汚水にひたされた袋は名探偵の拾得物によってやや斜めに開かれ、その結果、『中には何もない』という真実が解き明かされた。
名探偵が証拠品をずるずる……と部屋のすみへ運ぶ。
それから、大体何でも入る鞄の中に、びちゃ……と、かつて袋だったものをファイリングして、今回の事件を締めくくった。
袋があれば引きずってしまう子猫とよく似た性質をもつ名探偵は、丸くてふわふわな頭をうむ、と頷かせて言った。
「クマちゃ……」
解決ちゃ……、と。
遠くから、青年たちのはなし声が聞こえる。
――うわっ、何ここぐっちゃぐちゃなんだけど!!
――リオ、うるせぇ。