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第十六、五章

 皆が充分離れた所で、俺も少し下がり、影を出して紐の隙間から確認し始める。

 が、やはり封魔の力で良く見えない。

 そのまま影で紐を外すと、ゴブリンの親指が少しだけ動く気配。


 俺はそれに嫌な感じを覚え、影でゴブリンの指を1本ずつ押さえながら、指の触れている面を確認する。

 すると親指が当たっている面だけ形状が違っていた。

 と言うか違う素材が挟まる様にそこにあった。


 やはりと思いながら、魔粒子を出来るだけ細かくし、その親指の下の挟まった素材の隙間から流し込み、中の状態を確認していく。


 完璧に理解した。

 思った通りだった。

 魔法のある世界だとこんな使い方になるのかと感心した。


 俺は影でそれを押さえたまま、皆の所に向かった。

 「理解したよ。あれはかなり危険な物で間違いない。しかも既に発動しかかっている。ギルマスの勘が働かなかったら死人が出てたかもな。」


 「あの小さき魔道具で人を殺せると?」

 「あぁ、近くにいたら10人でも20人でも殺せる位にな。」


 「なぁ、発動しかかってるってのは?」

 「あぁ、あれは指で発動ボタンを押して、指が離れたら発動するんだ。だから発動しかかってると表現した。実際にはもう発動を止められない状態だ。この場で爆発させてしまった方が良いと思う。」


 「爆破だと!?あれには爆破の呪文が掛かっているというのか?」

 「そういう事ではないな。勿論魔力を使っているが、爆発を誘発する素材や気体を上手く噛み合わせてあったな。」


 俺には素材の名前が分からないし、この場で作成出来るようなヒントになる所までは言いたくない。


 「それは錬金術ってことか。錬金術を使った魔道具なんて、人間でも作れる奴は限られると思うぞ。そんな技術をゴブリンが持っているってか?」

 そこは俺も気になった。

 だが持っていたのは事実だ。

 明日の作戦に向けて威力も確認しておきたい。


 「そこでだ、ここはかなり魔法結界があって魔法では壊れないんだよな?」

 「あぁそうだ。かなりの魔法でもここの結界は壊せぬぞ。」

 「かなりとは?」


 「あぁ、ひゅうごには言葉が足らなんだか。そうだな。あそこに銅像があるのが分かるか?」

 「あぁ。」

 ギルマスが指さす先に視線をおくると天井近くに、闘技場を見下ろす様に銅像の上半身がある。


 「ここでもしあの銅像を壊せる程の爆破魔法を放ったとしても、天井や壁には傷一つ入らんて。」

 「それは凄い結界なんだな。」

 「あぁそうだ。因みに、あの銅像はギルド創設者だからな。あれを破壊するとギルド反逆罪に問われる。絶対に壊すなよ。」


 「そんなことするかよ。威力を聞いただけだろっ?」

 「はっはっはっはっ、そうだったな。で、ここであれを発動させたいのか?」


 「あぁ、さっきも言ったように、もうあれは発動してる。あいつの指が離れない様にどこかで研究するとか移動させるとか、そんなリスクな事をさせたくない。それと、明日、同じものを使われる可能性が高い、今この場で威力を確認しておきたい。それが理由だ。」


 「所有者権限で、危なくない物だったらひゅうごの物だった。危ない物だったから俺の権限で押収は出来るが、危なすぎて取り扱いたくない。という所で、所有権限と押収権限の両方で、この場で爆破させることを許可する。」


 「じゃあ、この場以外の方は退場で、この場で残りたい奴はなるべく距離を取ってくれ。」


 「出来ればあっちの角まで行って欲しい。それと盾を借りて来て構えながら耳を塞いでて欲しい。」

 「ほれ、闘技場の訓練用盾を貸し出そう。許可する。」


 「マインは出ていて欲しいが、もし残りたいならダンの影に隠れていて、耳を塞いでいてな。」

 「はい。」

 「何で俺の影なんだよ?」

 「だって明日の護衛だろ。その前哨だよ。」

 「そうかよっ、承ったよ。」

 「あぁ、宜しく頼む。」


 俺は操影が使える100mぎりぎりまで下がる。

 が、その直ぐ後ろにギデルとハオクが盾を持って構え、そこから倍の距離にジゼル、俺の指示通り端で構えてるのがギルマスとダンとマイン。


 これは丁度実験に良いかもと思えてきた。

 100m、200m、300m地点にそれぞれが居る事になる。


 「それでは解除するぞ。解除後数秒後、恐らくは5秒前後で爆発が起きると思うので、それぞれ盾に隠れてくれ。金属破片がランダムに飛んでくるぞ。」

 「後は耳も塞いでないと暫く音が聞こえなくなるだけでなく、運が悪いと耳の中を傷つけて全く聞こえなくなるぞ。」


 返事はない。了承と捉えて良いのだろう。

 俺は影で押さえていたゴブリンの指を魔道具から話す。


 「解除した!まもなく爆発が来るぞ!備えろ!」


 俺は今出来るだけの黒界を強め、自身の前に大きな影盾を作って備え、自身の耳を操影で塞ぐ。1,2,3,4心の中でカウントする。


 「バッバーーーーッン!!」

 10のカウントと同時に轟音が炸裂し、


 「ガシャンッ!」「ガシャッ!」「パキンッ!」「パキパキッ!」「パキッ!」

 と金属片が所々に当たる音がし、

 「うわっ!」「ぐぬっ!」「何ですと!?」「何っ!」

 との声は爆音と金属の衝突音に掻き消される。


 「どーなってんだよ!これっ!鉄の盾がへこんでんじゃないかっ!」

 「いってーっ!耳がいってーっ!何なんだよこれっ!誰か何とか言えよ!」

 ギデルとハオクが叫んでいる。

 耳がやられたみたいだ。


 「どういう事ですか、これは?私の所まで破片が飛んでくるとは?」

 とジゼル。


 「この飛んできたのは何だ?これがお前の言う破片ってやつか!?」

 「そいつに触るな!火傷するぞっ!」

 「あっちぃーーーっ!」

 「熱っ熱っ!」

 聞こえないんだった・・・。


 「あっちぃっ!ハルドっヘレンを呼べっ!」

 「熱っ熱っ!手が熱いっ!誰か神官をっ」


 「やれやれ、2階のヘレンを呼んできてくれ、お前は闘技場付き神官にハオクを診るようにと伝えてこい。」

 「はっ」「はっ」

 ギルマスが闘技場の扉を開け、そこに待機していた職員二人に指示した。


 駆けつけたヘレンがギデルの今の姿を見て声を上げる。

 「ギデルっ!何があったの!?この闘技場がこんなになるなんて!ギデルは大丈夫なの?どこをやられたの?」

 「おぉ、ヘレン!何言ってるんだ?聞こえないんだ!耳がやられたのかも!手も火傷して!」


 俺はヘレンの言葉を聞き、爆弾のあった所を見渡すと、闘技場が所々破壊されているのを認識した。


 「ギルマスは大丈夫だって言ってたのに。俺のせいになっちゃうじゃん。」

 「またひゅうごなんでしょ!?」


 「この人が聞かなかったって言うのもあると思うけど、私達にとって大事な人なの!もっとしつこい位に注意してあげて!」

 「私からのお願い。」


 昨日顔は合わせたけど、会話は初めての筈。

 それなのに辛辣な物言い。

 余程ギデルを大事に思ってであろうが。

 しかし「また」とはどの事を指しているのか。解せん。


 「こんなに危ないんだったら、もっと下がれと言ってくれよ!」


 無視である。

 俺は、聞こえないふりをして闘技場の被害状況を確認しに行く。


 すると後ろに来ていたギルマスが、

 「まさかこの闘技場にここまでダメージを与えられるとは。想像以上だ。」

 「結界があって大丈夫だと言ったよな?」

 俺はもう一度言質を取って言い逃れようとする。


 「爆破魔法だと聞いたからな。まさか質量兵器の効果がここまであるとはの。」

 やばいっ、戻ってきた。


 「質量兵器?それも魔法の一部ではないのか?」

 「違う!これは何かの金属が凄い熱量を持って、凄まじい速さで飛び散って出来た衝撃だ。物理結界もあったが簡単に破られておる。」


 被害状況を見ると、床には大き目の穴が空き、所々の壁に黒い金属が刺さっている。

 だがその被害状況はまだらで、破裂した金属の大きさ等が影響したのだろう。


 しかし被害が100mあるなんて、投げる奴も自殺行為だな。と、そう考えた時、何かに閃いた。


 「ギルマス、このメンバーで話がしたい。盗聴防止が出来る部屋って他にないか?」

 「ひゅうごよ、それは理由も聞かせて貰えるんだろうな。」

 「あぁ、それも含めて話す。」

 「それならある。先日の隣の小会議室にミイナに盗聴防止器を用意させておく。」

 「あぁ、それで頼む。」


 「皆、小会議室に集合だ。」

 皆が了承し、2階に赴く。


 皆が小会議室に着いたところでギルマスがゆっくりと言葉を発する。

 「ひゅうごよ、では説明してくれるかの。」

 「あぁ、さっきの衝撃で思い出した事がいくつかと、明日の作戦に懸念材料が出来たことがいくつか考えられて、それで相談したくて集って貰った。」


 「お前の記憶が戻ったと?」

 「あぁ、ごく一部だけだが。」

 「それで?」

 「あぁ、この事はここの者だけに留めて欲しいのだが、」

 皆がこくりと頭を振って了承する。


 「今回の騒動の一連の黒幕に、俺と同郷の者がいる可能性が高い。」

 「え?」

 「何っ?」

 「どういうことだっ?」

 「なんの記憶が?」

 「黒幕って?」


 俺は様々な反応には無視して続ける。

 「先程の武器は、俺が以前に居た世界の武器を、この世界にアレンジして強固にした物だと解った。」


 「以前に居た世界?」

 「アレンジ?」

 「強固にした?」


 理解して貰えなくて当然。

 俺は現状、起こり得る事だけを話し、それの対策を皆と共有したい。

 そこで考え、言葉を発する。


 「皆には明日の揺動戦の後、砦戦の際に先程の武器を何度も使われる対策を考えて欲しい。」

 「俺が狩ったゴブリン小隊にすら持たせてたという事実。明日の決戦では10個や20個どころでは無いと思った方が良い。」

 「ふむ。」

 「あぁ。」

 

 「これは、人間ではせいぜい5、60メートルしか無い投てき力を、遥かに超える、100メートルを超える持ち主が居る筈だ。」

 「・・・」

 皆信じられないとばかりに沈黙。


「俺はそれが、俺が見た弓使いのゴブリンジェネラルであって欲しいと思うが、そうでなかった場合。もう一人のジェネラルが投てき型のゴブリンだった場合を想定して、対策に臨みたい。」

 「ふむ。」

 「して、その対策とは?」


 「あぁ、この場に明日の砦に立つ、盾使いと土魔法使いと風魔法使いを全て集めて欲しい。」

 「全てじゃと?」


 「あぁ、全てだ。昨日までの弓使いへの対策では無く、弓使いとこの手榴弾を含めた投てき者への対策訓練をする。」

 「訓練じゃと?」


 「あぁ、魔法使いには魔力を枯渇させる位に訓練するが、明朝には全回復する事を保証する。」

 「こ、枯渇?」

 「そ、そんなっ?」

 「保証するじゃと?」


 そうして、全ての盾使いと土魔法使いと風魔法使い、それに、数名の火魔法使いと水魔法使いも加え、訓練に入った。

 そこにはハーデンの姿も。

 俺の訓練と聞き、数名の魔法使いが、明日、何かの役に立てないかと進言してきたからだ。


 そうして訓練を終え、盾使いはそのまま別れ、魔法使い達には操影で目隠しをして、自ら歩けるものは歩いて、魔力欠乏で倒れた者は操影で運び、祠に案内して魔力回復した。


 それで、決戦当日を迎えた。


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