第十六章
「あ、そういえば店主にお願いがあったんだ。」
「なんだよ、旦那、急に改まって。何だ、その願いってのは?」
「にかわを取り扱ってる所を紹介して欲しいんだ。」
「にかわなら何種類も取り扱ってるぞ。どんなにかわがいい?っていうより何に使うんだ?」
「あぁ、木刀の握りに革紐を撒いて滑りにくくするんだ。」
「木材に皮か、それならこれだっ!何本位巻く気なんだ?」
「あぁ、さっき話してた、大剣の木刀を5本かな、今の所。」
「あいよっ、5本ならこん位あれば足りるさ。持ってきなっ」
「いやぁ、自分で買うよ。紹介だけでいいって。」
「なーに言ってんだって話だ!さっきの30枚分、ダンの野郎に酒奢る位ならお前さんにもっとお返しがしたいってもんだ。」
「な、なんだとおやじっ!俺の紹介で救われたんだぞっ!」
「なぁ、旦那、あんたの言ううぃんうぃん・・が、うぃんうぃんうぃんうぃん、うぃんっ!ってなもんだ!?」
店主は5つのwinの最後だけ大きく叫び、それが俺で、俺には大きなwinを返そうってことらしい。
「はははっ」
「ふふふっ」
「な、なんだよっ、皆何を笑ってるんだ?」
「そういうことなら遠慮なく貰うぞ。それと店主、並べてる武器を少々見ていってもいいか?」
「勿論でさぁ、旦那。それとあっしの事はガイスって気軽に読んでくれぇ。ダンと同じようにおやじでもおっちゃんとでも好きなようにお願いするぜ。」
「じゃあ俺はおっちゃん、な?」
すかさずガイスがハーデンの頭にげんこつを落とす。
「早すぎだっ、まあ旦那のお仲間で俺の逸品の使用者になるってんだから、それでもいいがな。」
「っててててっ。いぃなら殴んなよぉ。おっちゃん!」
「はははっ、その位気軽に接して貰えて嬉しいぞ。ガイス。」
「ふふふっ」
俺は鞄の中に小さな黒穴を作り、そこから革袋に金貨1枚と大銀貨80枚を入れて取り出す。それをガイスに渡すと。
「まいどおおきにっ!剣は好きなだけ見てってくれ。この二つは包んどくから、出来たらここに置いておく。悪いが俺は緊急の依頼の続きに入らせて貰う。今日はホントにありがとうな。」
「あぁ、こちらこそだ。ありがとう。いい買い物が出来た。」
「俺もいい橋渡しが出来て嬉しいぞ、ひゅうご。良い酒にも有り付けそうだしな!」
「こちらこそだ。ありがとう、ダン。俺からも今日のお礼に食事でも誘うよ。」
「そりゃあ楽しみだな。じゃあ、俺はここで先に帰らせてもらうな。この後ギルド作戦室で最後の詰めがあるんだ。」
「そうか。それじゃあなダン。何かあったら呼んでくれて構わないからな。俺達はこの後は梨花亭にいると思う。」
「おぉそうか。だがここまで来たらそんな事にはならないがな。じゃあな。」
ダンは振り返らず手だけ振って店を出て行った。
俺は店の大剣をいくつか手に取って、重さや形や重量バランスなんかを重点に見て言った。
この後作るハーデン用の木刀の参考の為だ。
時々ハーデンにも持たせて、現時点での力量を推し量る。
俺は何本かハーデンに試させ、自分なりにこの後作成する木刀のイメージが完成し、皆に聞く。
「お前達がこの他何か見たいものが無ければ、これで帰るがどうだ?」
「俺はねぇぞ!それより早くその剣を振ってみたい!」
「私も無いです。」
「そうか、じゃあ。ガイス!これで帰るな!今日は本当にありがとう!」
俺は奥の鍛冶場で作業しているガイスに聞こえる様に出来るだけの大声を出す。
「おぉ!旦那!きぃ付けて帰ぇれな。明日はきぃ張って当たれよ!」
「あぁ!ありがとう!」
「じゃあなおっちゃん!」
「失礼します。」
マインの声は届いてないだろうな。と俺は思ったが、そこは気にしない。
帰り道、俺はハーデンに残念な忠告をする。
「なぁハーデン。とても残念な報せだがな。」
「なんだよ、師匠。そんな改まって。」
「気持ちが急いてる所申し訳ないが、この剣はまだ振れないぞ。」
「あ゛あぁぁぁん?なんでそぅなるんだぁ!?」
「店の中でも言ったが、この剣はまだお前には過ぎた物だ。まともに振れないどころか、下手をすると腕か足を一本切り落とすぞ。そんなレベルだ。」
「ひぇぇぇぇ!」
「・・・・」
二人共俺が言うのなら本当にそんな事態になりかねないと想像したようだ。
「あ、それでも落ち込むことはないぞ。今日、明日俺の今から作る木刀で練習すれば、明後日にはこの剣でアントを狩りに行けると思うぞ。真剣に練習すれば。だがな。」
「するするするっ!練習する!」
「はははっ、その意気だ。それに振れずとも夜にはその剣を持って魔法剣の練習はするから、先ずはそれで我慢してくれ。」
「そ、そっか。さっきの話を聞いた後じゃあ、もう十分満足だっ!っていうか魔法剣!めっちゃ楽しみだ!」
「私も魔法剣使ってみたいです。」
「え? マインも練習だけなら良いと思うが、本番ではそこに使う魔力が勿体ないかな。」
「え?何故そう思われるのですか?」
「マインはスピード重視の戦法になるから、俺の影移動なんかを取得して、魔法剣にて剣の威力増加するより、より相手の急所を正確に、より数か所当てるって感じかな。」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ、それで、明日の作戦の後は、杖を持たない戦法での訓練に変えていきたいがいいか?」
「わ、私は杖無しで魔法を発動したことは無いのですが。」
「そうか?俺が見る限り、最近のマインは杖での魔力増幅にそんなに頼らず発動しているぞ。特に先程の塩採取なんかでは。」
「ああ、あれですか。あのより小魔力で発動させてた時ですね。あれがそうなのですね。理解しました。」
「そうだな。逆に言うと、先程の俺への魔力譲渡や、俺やハーデンへのバフの時なんかは杖を通して魔力が増幅して掛かってたな。」
「はい。私の理解と同じです。」
「そうだな。一番自然に感じられたのは、そう!初めてマインの部屋で瞑想して貰った時だ。マインは寝てたと言ったが、身隠しの魔法が発動してたから決して寝てはいない。」
「はぁ。」
「それに俺があの距離でもマインを認識出来ない程の精度のものを初日で完成させてたんだ。勿論杖は持ってなかったし、杖があったらああはならなかったと思うぞ。」
「あの時は特に意識していなかったですし、、、」
「そう!それだ!意識しないでやれる様に訓練すればいいんだ!流石マイン。いつも魔法の訓練についてはマインに教えられる。」
「わ、私は何もしてないのに。」
「いいや、そんなことはない。俺が思うにお前が話したがらない一族に関してるのだと思う。」
「えっ? そうなのですか?」
「ここからは俺の想像だけだから、反応しなくていいし、聞き流して欲しいのだが、マインの一族は闇魔法に特化しているのだと思う。」
「は、はぁ」
「マインは魔法が余り得意でないと言ってたが、相手にバフを掛けるなんて上級なのを唯一得意としてた所を見ると、一族か家族との関係性から現れてると。俺が自分なりの方法を教えただけで、簡単に俺を上回る所をみて確信している。」
「そう、ですか」
「それと一族が皆、若しくは殆どが闇属性なのに、ミイナさんは俺とマインの二人以外会った事がないと言ってた事から、一族は人里から離れた所で隠れ住んでいるのだろうと。そしてそれは、一族の生活の中に、人から見たら忌避される事があるからなのではと。例えば魔物をただ狩るのでは無く、魔物を使役するとか、魔物を飼うとか。」
「え?」
「これはマインの魔法が、対魔物には驚く程効率が良い所からそう思う。そしてマインは人間から考えると少し驚く程に年を重ねているだろうと。これは月日を重ねてしか精度を上げられないものが非常に高いことからだ。精神集中や魔力ロスなどだ。」
(俺はチートで爆上がりしてるからね)
「うっ」
「そんな長年、他人にバフや魔物からドレイン、魔力譲渡ばかりをさせられた。もしくはそれしか教えて貰えなかったと。」
「・・・」
「そんな環境から一転、街に出てパーティーを探した。これには何も想像出来ないが、何か特別な理由があったのだろうことだけは想像出来る。」
「ひっ、ひっ、ひっ」
マインは引きついている。
「その理由とやらが何なのかは関係なく、俺はマインの力になりたい。それがマインの一族全てを敵に回す様なことだったりしても、な。」
もはやマインは大泣きしている。
「所々って言うか、殆ど外れてたとしても、最後のマインの力になりたいってのは本当だからな。何かあるんなら気軽に相談しろよ。いや、相談してほしい。今でなくとも。」
「う゛っ、う゛っ、ぞごまでわがっでで、いばばでぎょうぎょぐじでぐででだんでずね。」
マインがここまで感情的になるなんて驚きだ。言葉はぐちゃぐちゃだが何を言いたいかは分かる。
「まぁ、最初から全て理解してた訳では無いし、しかしそれが俺の望みでもあるからな。」
「のぞびでずが?」
「あぁ、今は分かり難いかもしれないが、明日の作戦が終わったら、俺の生い立ちを全てマインには話すよ。」
「それを聞いて尚、俺が相談相手に足ると思えばいつか相談してほしい。」
「あ゛い゛。ぞのばなじぼぎい゛だあ゛ど、ぞう゛だんじでぼい゛い゛でずが?」
「あぁ、ちゃんと聞いて貰った後ならな。」
「あ゛い゛。お゛ねがい゛じばず。」
俺たちは梨花亭に着いた。
泣き顔のマインを見て駆け寄ろうとするアギレンを、俺は右掌を向け制止し、困り顔を見せて思い留まらせる。
三人で二階に上がり、俺の部屋へ向かうとハーデンに、
「ハーデン、どうせ我慢の限界だろうから剣は渡しておくが、絶対に抜くなよ。刀身の刃元を見る程度なら良いから。鞘から抜いたら怪我すると思え。」
「いいのかっ?分かった。絶対に抜かない。」
「そして、今はその興奮が抑えられる位に精神統一してみろ。それが出来たら剣を振れる日が早まるぞ。」
「ほ、本当かっ!?俺、やってみる。やってみせるぞ!」
「おう、その意気だ。俺は隣でマインを落ち着かせて、その後木刀を作ってくるから、木刀が完成して戻ったら抜かせてやる。そこでどうして怪我するかも説明する。それまで待っててくれ。」
「あいよっ」
マインとマインの部屋に入る。
「マイン、落ち着くまでここで休んでてもいいし、俺はこの後ヒョウの所で木刀を作ってくる。付いてくるか?」
「いぎまず。」
「そうか。」
そう一言だけ言い、黒穴の引と出を作り、マインと共に入る。
「ヒョウ、来ないと言ったが予定が出来て寄らせて貰った。マインを頼む。」
「くぅうん。」
マインはヒョウの隣で横になる。
するとヒョウが尻尾でパタパタとマインの頭を撫でる。
マインの顔が落ち着いてきて、寝たかな?と思えた。
俺はその様子に微笑みをこぼしつつ、影で木材を置いてある所から数本持ってくる。
「ヒョウ、ごみは処理するから、ここで木刀作らせてくれ。」
「くぅうん。」
俺は木刀を削り始めながらヒョウに話す。
「そういえば、ワイルドボアを2匹狩ってきたぞ。
明日の作戦で魔力電池として使うから、まだ生かしてるけどな。
明日以降に絞めて肉の補充をしておくよ。」
「くぅんっ」
俺は今朝、3人でどんな事をしてきたかを順に話した。暫くして、
「それとな、その後海に行ったから、お前に魚をいくつか獲ってきてるぞ!食べるか?」
そう聞いたとたん。
「くぅんっ!くぅんっ!」
とても嬉しそうに鳴き、前足で地面をバタバタと叩く。
その声と動きにマインがビクンッと起きる。
本当に寝てたようだ。
「ひょ、ヒョウ様?どうされたのですか?」
マインはもう大分落ち着いているようだ。
「ヒョウはさっき獲ってきた魚を喜んでるんだ。」
そういってヒョウの前の大皿に1匹大き目の魚を黒穴から入れる。
「びちびちっ!」
跳ねる魚を右の前足でバンっと押さえ、美味しそうに食べ始める。
そのがっつき具合に二人共笑みがこぼれる。
「はははっ、面白いだろ?こいつ魚に目がないんだよ。」
「ふふふっ」
「マインが落ち着いたようで安心したよ。」
「ご心配お掛け致しました。」
「明日の作戦前に話さない方が良かったかな。今更だが。」
「いいえ、その逆です。いつかは話さないといけないのか、とか、いつかばれるかも、と不安が絶えませんでしたが、それらが無くなり、スッキリとしている位です。」
「それなら話して良かった。」
「えぇ、いつもひゅうごさんは私に会えた事を喜んで頂けますが、今日こそ本当に、私こそ、ひゅうごさんに出逢えたことに感謝しかないです。」
「そうか、それなら良かった。」
俺は明日、俺の話を聞いても同じことを言ってくれるのか心配で、マインの言葉をそのまま喜べなかった。
マインは俺の反応の薄さから何かしら気付いたようで、そのまま沈黙が訪れる。
「帰ったらさ、ハーデンにも聞かせられる話はするよ。」
その言葉にマインは明日の話が、今日この後聞ける内容とは異なる事を理解し、きりっと口を結ぶ。
「はい。」
俺は静かになる部屋で黙々と木刀を作成するが、重さとバランスを重視し、形は捨て大きさに寄せて、少しずつ大きさを変え1本1本と作成した。
「くぅんっ、くぅんっ!」
「まぁだ喰うのか?もう収納に繋げてあるから自分で獲ってみなよ。今後俺が居ない時に魚が食べたくなった時の為にもさ。」
「くぅうん。」
ヒョウはそう言って立ち上がり、祠の奥へ向かい、食料を収納している黒穴に顔を近づける。
俺はその様子を木刀を削りながら一部始終見ている。
すると、近づけた顔に、まるで手品のように次の瞬間ヒョウの口に生きた魚が咥えられている。
「なんだそりゃぁ?」
そう言う俺を無視して、何事も無かったかの如く、咥えた魚を大皿に載せ、ビクビクッと動く魚を足で押さえ、美味しそうに食べ始めた。
「マイン、もう後1本で戻るから、そろそろ準備してくれ。」
「はい。」
最後の1本は立ち上がって削った。長さが俺の身長に近い程大きい。
「器用なんですね。」
「あぁ、ずっとやってるからな。俺はこの刀を得られるまで、ずっと木刀とナイフだけでこの森の魔物や動物を狩って生活してたんだぞ。そりゃあ器用にもなるってもんだ。」
「魔物を木刀でですか?信じられない。」
「何言ってるんだ。大黒蛇だって4回中3回は木刀で倒してんだ。木刀も侮れないんだぞ。」
「黒蛇様を木刀でですか!?この話、誰かにしましたか?信じて貰えましたか?」
「あぁ、そういえば、大黒蛇を倒したことはギルマスには話したが、木刀でとは言ってなかったか。」
「良かったです。もし話してたら、ひゅうごさんをどう見られてたか、想像したくないです。」
「今でもギルマスと明日の作戦メンバーには変人と思われてるよ。」
「変人だなんて、失礼です。ただ、ぶっ飛んだ力の持ち主ってだけなのに。」
「くぅん、くぅん。」
「なんだヒョウ、お前までもか。」
「ふふふっ」
重苦しくなった雰囲気を変えてくれて助かった。
丁度最後の1本が仕上がる。
「丁度終わったぞ。帰れるか?」
「はい。」
「じゃあ、ヒョウ、行ってくる。今晩は帰らないと思う。明日の作戦は1の鐘で開始だからな。夜明けには起きて集合だ。ここだと起きれなかったなんてなりかねないからな。」
「くぅうん。」
そう言ってマインとマインの部屋に戻る。
二つの黒穴を消す。
「ハーデンの様子を見に行こう。」
「はい。」
俺の部屋をノックし、返事がないのでそのまま入ると、ハーデンは物凄く綺麗な瞑想をしていた。
マインの瞑想にはまだまだだが、俺の瞑想に近い程だ。
「凄い集中力だな。ハーデン。いつの間にここまで精神統一を図れるようになったんだ?」
「今だよ。この剣を早く振るいたいから、出来るだけ精神統一しようと頑張ったんだ。」
ハーデンは剣を胡坐の足の上に置き、瞑想していた。
普通なら剣の喜びに、過剰に意識してしまい精神統一どころでなくなる所を、無理矢理に統一したんだと思う。
それは俺でも無理だ。
ここに来た初日なんて全く出来なかった。
「お前は本当に凄いな。これなら明日にも振れるようになるかもな。」
「ねえ、どうして精神統一が剣に関係あるのですか?」
「んーとな、、、」
俺がどう説明したら良いか悩んでいると、
「なあ師匠、考えてる所悪いんだけど、さっきアギレンから師匠達は居ないか尋ねられたんだ。ギルドから来て欲しいって連絡があったみたいでさ。」
「それで何と言ったんだ?」
「あぁ、今までも二人がマインの部屋に入ったら、いつも声を掛けても返事がないからさ、二人で魔法でどこかで修行とかしてるんだろ?俺に気を使ってさ。だから、出掛けて帰ってないって言っておいた。」
「そ、そうなのか。そこを理解して対処まで。ありがとうな。じゃあアギレンに声を掛けて、ギルドに行ってくる。それまで以前の木刀で練習してて貰えないか。新しいのは説明してから渡したいんだ。」
「いいよ。早く行ってきなよ。」
「あぁ、行ってくる。」
アギレンに声を掛けた後、マインと二人でギルドに向かった。
ギルドに着くと、受付職員が作戦室へと手振りで案内される。
そのまま二人で2階へ上がる階段に向かい、作戦室に入ると、ギルマスから声を掛けられる。
「ひゅうご、悪いなお呼び出しして。」
「いや、いいんだ。何かあれば呼んでくれて構わない。それで、何があったんだ?」
「上がって貰ったばかりで悪いんだが、一緒に地下まで来てくれ。」
「あぁ。」
そう言うと、ギルマスが辺りの数人と目を交わす。それを俺が警戒すると、それに気付いたギルマスが
「悪い悪い、不思議な物だったんで、シルバーリーダーとダンだけ呼んであったんだ。」
「そういうことなら。」
ギルマスに続いて、マインと俺、ダン、ギデル、ジゼル、ハオクと続く。
「地下は確か闘技場だよな?」
「あぁそうだ。危険そうだったからだ。お前から回収したゴブリンの中から、やはりアークメイジがおってな。そ奴が何やら懐で怪しい魔道具を手にしてたんだ。俺の勘がこいつはかなりヤバいと告げてな。ダンに相談したらひゅうごを呼んだ方がいいとなったんだ。」
「あぁ、その為に闘技場ねぇ。」
闘技場に着くと、数人の冒険者が明日の作戦の前に、高ぶる心を落ち着かせる様に体を動かして訓練に励んでいる。
そして闘技場の最奥には何やら結界で守られた物を二人の職員が立ち入らない様に警備している。
俺達一行がそこに近づくと、二人の職員は少し離れて俺達をその結界内に案内した。
「ひゅうごならこれが何か分かるかの?」
そう言われ、覗き込むと、何やらどす黒い丸い物体を包み込むように持ったままのゴブリンの手が、腕ごと切り取られて、何やら魔力を抑える力のある紐でぐるぐるに巻かれている。
それを見たマインが
「ひっ」
と息を飲む声が漏れる。
他の者は一度見た様で驚くことはなく、俺の反応を見ている。
俺はこの物体を見た瞬間にある物を連想したが、もしそうであれば、何故この世界にこの様な物が存在するのか、存在し得るのか。
頭の中がぐるぐると色々な思想が駆け巡る。
そして、それでも確認しなくてはいけない。
俺は、恐る恐る言葉を発する。
「ちょっとこの魔力を封じる紐を離しても良いか?」
「ほほぅ、これが封魔の紐と解るのですか?」
「あぁ、魔力を抑え込んでるからな。逆にこれがあるとはっきりと中身が見えん。」
「中を見るとは?」
相変わらず全部聞きたがるジゼルにいらっと答える。
「そのままの意味だ。外していいか、ギルマス。皆は下がってても構わない、というか下がっててくれ。念のため。」
「説明が後になったな。ひゅうご、これはお前たちが獲った物だから権利はお前たちが持っている。」
「そうか。」
「あぁ、だが、危険物と解ったならギルドが押収することがある。今回は緊急事態の為、お前には特別依頼を出してた事でもある為、解体自体をこちらが請け負ったから今この状況にある。」
「複雑だな。」
「あぁ、そして、その物の危険度合いも分からなんだからな。そこでこの物の所有者という立場と、鑑定者という二つの立場で呼んでおる。」
「そういうことか。」
「あぁ、危なくなければ処分してもギルドに売っても構わない。好きにしてくれて構わない。が、危険な物なら報告してくれ、ギルドマスターとして判断する。」
「良く分かった。じゃあ鑑定に入るが、紐を外した途端に何かあるといけないから少し離れててくれ。」




