第十二章
何事も無く南門に着くと。
「ひゅうご!無事だったな。何か分かったのか?」
「ああっ、一大事だ。直ぐにギルマスに報告したい。」
「じゃあ直ぐに行こう!」
「えっ?門番の仕事は?」
「とっくに交代の時間だよ。待ってたんだ。」
「そっか。悪いな。」
「なーに言ってんだよ。ほらっ、行くぞっ!」
「お、おうっ。」
二人でギルドに入ると直ぐ、正面で別の冒険者と受付中のミイナさんと目が合った。
すると隣の受付嬢に。
「受付変わってください。」
「ひゅうごさん、戻られたのですね。こちらへどうぞ。」
俺は何の声も発することなく、ギルマスの部屋に案内された。
こういう所は凄いと正直思った。
緊急な対応には慣れているのだろうなと感心した。
「おぉ、ひゅうご。早い戻りだったな。それで何か分かったのか?」
「ああ、緊急事態だ。数はそれ程でもないが、355体は確認した。未発見が居たとしても400には満たない。」
「いやいやっ!多いだろっ!」とダン
「あぁ、ダンジョンの大海嘯に匹敵するレベルだ。」とギルマス
「そ、そうなのか。なら尚更だ。あいつらはいつでもこの街を襲撃、蹂躙できるだけの軍隊を持っていた。そうなる前に対策が必要だ。それで、その場所は」
と、そこでギルマスが右手の掌をこちらに向け、話を遮った。
「ひゅうご、ちょっと待ってくれ。ミイナ!作戦室の用意を!」
「はいっ!」
すると、扉の所で立っていたミイナが、この執務室の中央にあるソファーから見て、左にあるギルマスの執務机とは反対の方に向かい、奥にある暗い部屋に入ると、何やら魔道具で明かりを灯す。
「二人共続きはあちらで聞こう。」
「あ、ああ。」
三人でその作戦室に向かうと、ミイナは中央にある大きな机に、机いっぱいになる程の大きな紙を広げていた。
「その場所とは?」
ギルマスに先程遮られた話の続きを求められると、そこに広げられた紙は、この街を中心とした大きな地図だった。
「この街の南の川がこれか・・・」
俺はこの世界に来て初めての地図に驚きと感動を隠しつつ、自分の脳内マップと照らし合わせながら話す。
「湖がここなら、反対方向で、こ、この緑色の地帯は森を表してるのか?」
「ああ、そうだ。魔の森と呼ばれる森のことだ。」
「あぁ、それならこの森と川と草原の接点にあたる、この場所に木製砦に囲まれた奴らの要塞がある。」
「ぷっ、要塞だって?」
ダンが思わず吹き出し、続けて
「木の柵なんか魔法一発で吹き飛ばせるぞ!?」
その言葉に俺がきつい視線をダンに向けると、ギルマスが尋ねる。
「ひゅうごよ。どうして要塞と?」
ギルマスは至って真面目に俺にそう問う。
ギルマスは俺の力量をある程度知っている為、どうして要塞とまで俺が言うのか聞きたいのであろう。
「何故要塞とまで言うのかと言うと、砦の高さは・・・見張り台には・・・」
俺が先程見て驚いたことをつらつらと並べて説明し始めると、ダンはぽっかりと口を開けたまま目を大きく見開き、ギルマスは顎に手を付け地図を凝視しながら眉間に皺を寄せる。
すると突然ギルマスが作戦室入り口に立つミイナに向かって叫ぶ。
「ミイナ!冒険者緊急招集だ!」
「はいっ!」
とだけ言い、ミイナは執務机に向かい、机の上にある何かの魔術具を作動させ、その魔術具に向かって叫ぶ。
「ギルドマスター命令!冒険者緊急招集! ギルドマスター命令!冒険者緊急招集!」
緊急招集の命令を魔術具に2度伝えると、ギルド棟全室に繋がっていたようで所々で慌ただしくなるのが分かる。
しかも1階の冒険者達の喧騒までこの部屋に届く位だ。
執務机から戻ったミイナさんは、何故か俺たちの居る机の横を通り抜け、一番奥まですたすたと歩いていく。
不思議に思った俺はミイナさんを目で追うと、徐に大きな扉を開いた。
「えっ、あそこ扉だったんだ!」
と小さく独り言をいうと、1階の喧騒が急に大きくなり、それに掻き消される。
この部屋の下にギルド受付があったようだ。
俺はギルドに入ると吹き抜けの天井に解放感を感じるのに、受付カウンターの上だけせり出した天井があるのに違和感を感じていたのだが、この部屋だったのだと記憶が繋がる。
すると、突然ミイナさんが1階に向かって。
「冒険者緊急招集発令!シルバーパーティー全員とブロンズパーティーリーダーは作戦室に集合!」
俺は大人しそうな顔と穏やかな雰囲気のミイナさんが、冒険者達の喧騒を掻き消すだけの声量で、1階のギルド全体に響かせたことに驚きを隠せない。
それとミイナさんが魔術具で発令した冒険者緊急招集の直後から、この建物の屋上辺りから鳴り響く鐘の音が、この喧騒をより大きくしているのではと、耳障りに感じてギルマスに聞く。
「ギルドマスター、さっきから鳴っているこの鐘の音は何ですか?」
ぎょっとしてこちらを向くダン。
不思議そうに尋ねるギルマス。
「あ、あれ?C級昇格時に説明しておらなんだか?」
「えぇ、C級冒険者以上は緊急時には招集されるとだけ。」
「それはすまなかった。緊急時に冒険者招集を棟の外に知らせる合図がこの鐘の音なんだ。緊急冒険者招集の場合には4連3の鐘と読んでいる。」
確かに、先程から聞こえる鐘の音は
「カンカンカンカン、カンカンカンカン、カンカンカンカン」を繰り返していた。
「3回位聞こえましたが?」
「そうだ。4連3の鐘を3回鳴らすんだ。」
じゃあ4連3の3の鐘じゃん。と心の中で思ったところでギルマスは付け加える。
「最大緊急時には6連の鐘が叩かれることになっておる。ひゅうごの言うゴブリン部隊によるこの街への襲撃が起こった時などだな。」
「それは何回叩かれるのですか?」
「いや、6連は叩き手が命続くかぎりだ。」
うわっ物凄い世界っと背筋に冷や汗が流れたが、今正にそれが起こる可能性の話をしているのだと、改めて気を引き締める。
「それで、この部屋に呼ばれた方達が集まってから話せば良いですか?」
「ああ、そうして欲しい。私がひゅうごに偵察任務を依頼した経緯も含め簡潔に願いたい。それとひゅうご。」
「え?あ、はい。」
「内密に願われてた件、少しだけ話しても宜しいかな?ひゅうごの話の信憑性の為に。ここに集る者は信用に足る者だけなので。口外を禁じることも含めてだが。如何だろうか。」
「私に関わる事でしたらギルマスに全て一任します。」
「ご了承、ありがたく思う。」
すると執務室の入り口に立つ衛兵が何やら声を発した。
「白虎パーティ様の全5名様ですね。中へどうぞ。」
と遠いがそう聞こえた。
すると今度は作戦室の入り口に立ったミイナさんが発する。
「白虎の全5名様入られます。」
すると作戦室に5名の冒険者が入ってくるとそのリーダーらしき男がギルマスの前に片膝をつき、その後に4人が続いて膝まづく。
「エルネスの危機と聞き馳せ参じました、我らびゃっ」
何かの挨拶だったんだろうが、ギルマスが途中で遮る。
「緊急故挨拶不要だ。」
皆は立ち上がる。
「全く、冒険者にこの様な挨拶は不要だというのに。」
とギルマスが小さく独り言を言い、続けて
「ミイナ、衛兵に申し伝えろ!緊急につき挨拶不問を伝えろと。」
「はいっ!あ、エルネスの翼全4名様入られます。」
と言ってミイナさんが慌てて扉の衛兵に駆けてくと、代わりに4名の冒険者が入ってきた。
するとその中の一人の男が。
「ハルド!緊急って何があった?」
「ギルマスと呼べ、ギデル。話は皆が集まってからだ。」
俺は、あれ?
挨拶不問ってまだ聞いてなかったのでは?
聞こえたからかな?
と疑問に思った。
ギルマスとの関係性も知らないし、色々あるのかな。
先程のえるねすが2回続いたのも気になる。
エルネスの翼パーティー以降も続々と入室してくる。
その度にミイナさんが
「玄武の幹部6名様入られます。」
(白虎に玄武って、四神も前世と同じだな)
「漆黒の炎リーダー様入られます。」
(漆黒の炎ってかっこいい。)
色々な情報に勝手に色々想像する俺。
「疾風煉我リーダー様入られます。」
(おおっ!渋いっ)
「蒼龍の爪リーダー様入られます。」
(青龍じゃないのかいっ)
「黒龍牙リーダー様入られます。」
(龍って使いたいよねぇ)
「炎の鳥リーダー様入られます。」
(不死鳥だもんね、あやかりたいよねぇ)
「全員集まったな。緊急故一人一人の紹介は省くが、皆にとっては初対面であろうこちらの者だけは紹介しておく。ひゅうご、こちらに。」
「はい。」
「この者はひゅうご。訳あって先日この街で冒険者登録をしたのだが、この者が見つけた事でこの街の危機が迫っておることが発覚し、俺が其方らを緊急招集させて貰った。それではその本人から詳細を聞いてくれ。ひゅうご、頼む。」
「はい。私はひゅうごと言います。以後宜しく願います。それでは今回の経緯から・・・」
と昨日、今日起こった事、先程依頼で確認してきた事を皆に話した。
すると
「俄かには信じられませんね。ゴブリンにその様な統制が出来るなど。それに、ひゅうごとやらは一昨日冒険者登録したばかりで、あなたがC級に取り上げただけのFランクパーティーリーダーだと聞いています。その様な者のこの様な大層な話、戯言としか思えません。」
確か玄武のリーダーだったか。
辺りがざわつき始めた。
「そうか、俺がC級に取り上げたことを知っても尚、ひゅうごの言葉が信じられぬとは。」
「俺もジゼルと同じ意見だ。何かエルネスに混乱をもたらそうとしてるとしか思えん。」
「うぅむ、俺はC級どころかAでもSでも与えると言うたんだが、こやつが要らぬ言うてCに留めただけと聞いてもか?」
皆が一斉にエルネスの翼のリーダーに目を向ける。
な、な、何が起こった!?と俺は困惑するとその男はギルマスに向かって
「ギルマスは俺とこの男で模擬戦をしろということかな?」
な、な、な、何でそうなる!?
困惑しまくる俺の様子に気付いたギルマスは俺に説明してくれる。
「あぁ、今の話は俺がこの場で一番強い、唯一のA級冒険者のギデルよりお主の方が強いと言ったからだ。」
「はいっ!?」
「仕方がない。ミイナ盗聴防止を。」
「はいっ!」
ミイナは返事をし、先程開けた窓を閉じ、この部屋を出て、入り口に何やら魔道具を設置し始める。
「あ、あの。今更なのですが、ダンはここにいて大丈夫なのですか?ただ俺を心配して付いて来てくれただけで・・・」
「ああ、言うてなかったな。ダンは衛兵長の代理でここにおる。本人の希望で許可を取ってな。」
あぁ、そうなんだ。そこまで心配してくれて先回りしてくれたんだ。
今度また食事でも誘おう。
「準備出来ました。」とミイナ
「発動してくれ。」
「はいっ。」
「それではひゅうごよ、腰のものを皆に見せてやっては貰えぬか。」
「はい。」
俺は背中に回した黒虎徹を左の腰に履き、ローブを捲って刀の全長を皆に見せる。
殆どの者がポカンである。
「そうか、分からぬか。儂も本物を見たのは初めてだったが、知ってはいたぞ。なら、話を変えよう。シルバーに聞く、お主らはダンジョンをどこまで攻略した?」
何故突然ダンジョンの話に変わったと思うものが殆どなのに、2,3人だけまさかなという軽く顔を横に振っていた。
「翼は42層だ。うちのメンバーには蛇嫌いがいてな。ちょっとてこずってる。が、近いうちにクリアする予定だ!」
自信満々にギデルが答えた。
「玄武は40層の蜘蛛のボスで撤退したが、今は対策がほぼ出来たから近いうちに突破は出来ますよ。」
負けず嫌いなんだろうなぁ。
「白虎は35層だ。うちには蜘蛛嫌いがいてね。」
やっぱ負けず嫌いなんだろうなぁ。
「ひゅうごや、まだ売りに出してない所をみると持っておるんだろ?出してみろ。」
「あぁ、はい。」
と言い、その場で黒穴出を作り出すと、一斉に殆どの者が武器に手を掛けた。
部屋に緊張が走る。
「悪い悪い。」
そう言って俺の前に出て手を広げて立ち、皆を諭すのはギルマスだった。
「こやつは常識知らずなところがあってな。先程剣を抜かなかったので安心しておったが、会議などの場で武器を抜いたり、魔法を発動する時には許可をとるもんなんだ。」
んもぉーーっそれならそれで先に言ってよぉ。と思ったが、別の世界から来てここの常識を知らないことには理解してくれてたんだ。
「すみません。この魔法は収納魔法なんです。中から言われたものを取り出すだけです。」
そう説明すると、ギルマスが
「先程から思っておったが、冒険者同士に敬語は不要だぞ。」
そうなんだぁ、それも先に言ってよぉ。
ま、そう思いながらも、黒穴出から蜘蛛の糸を取り出して皆に見せる。
またしても皆ポカンだ。
だがエルネスの翼の4人だけはまさかって顔。
そこにギルマスが
「ほぉ、やはりまだ持っておったか。ギルドが金貨5枚で買い取るぞ。」
そうギルマスが言った瞬間、部屋の中の者が一斉に叫んだ。
殆どの者はその金額に。
翼の4人と他数名は40層クリアドロップだと気付く。
すると
「そんな筈はないっ!翼の他に40クリアの報告は無い!」
そう言ったのは、玄武のリーダージゼルだった。
余程自分たちの前に40層クリアされないか報告を確認してたんだろうなぁ。
しかし、ジゼルの言葉に、金貨5枚で驚いてた面々が一斉に更に声を出して驚いている。皆にもこれが40層クリアドロップだと認識された。
「俺もそんな報告は無いと聞いたばかりだ。絶対に嘘だ。ハルド!お前も一緒に謀ってるだろ!?何の目的だ!?」
そうギルマスまで疑って掛かるのはギデルだ。
「ひゅうご、もしかしてそれって今朝のことか?新米のロッツがお前がダンジョンから出てきたって。交代の後俺に相談があったんだ。俺の名前出しただろ?」
ダンが援護してくれる。今朝の事だからまだ新しい報告を聞けてないだけだと。
「いいや、俺の確認はさっきだ。緊急招集が掛かったから、もしかしてと思って受付で確認してからここに来たんだ。無いってな。」
ギデルの言葉にまた部屋がざわつく。
「ダン、ありがとう。でも今朝じゃないんだ。今朝は通って来ただけなんだ。」
俺の言葉にまた皆がポカン。
「はっはっはっ。皆にはひゅうごの言葉の意味も分からんだろ。報告もないのも全て、こやつは反対から通って来てるからだ。なにやら祠に用事があるみたいでな。」
「な、なんとっ黒魔虎様の使いだったのか!?それは強い筈だ。」
誰が言ったのか分からないが、皆が納得したような顔をするようになり、あちこちで俺を御使いみたいに称賛しはじめた。
(祠で黒魔虎ってヒョウのことだよな。こんな状況では友達とか、ましてや従魔なんて口が裂けても言えない。従魔登録に連れてくる前で良かった!)
「そ、それでは先程の剣は本当に?」
そう聞くのは白虎のリーダーだったか。
「あぁ、そうだ。」
もう一度先程と同じようにローブを捲って皆に見せる。
「おぉぉぉっ!」
皆が騒ぐ。
「これドロップするのには苦労したんだ。あいつリスポーンに7日も掛かるから。」
また皆をポカンとさせてしまった。
するとギルマスだけは目を細めてこちらを睨む。
それを見て、あっやってしまった。
必要以上の情報提供だったみたいだ。
「りすなんとかって再出現のことか?黒蛇様を2度倒したってことか?」
そこにギルマスが割り込む。
「そこまでだ!これ以上の情報はギルドが統制する。直接ひゅうごにも聞こうとするなよ。ひゅうご!お前は世間知らずにも程がある!正規ルートでのクリアで無い為、ギルドでは把握出来なかったが、ダンジョンの各層のクリア報酬の他に情報も報酬としてギルドが買って、情報は秘匿されるものなんだ。それをギルドが判断したものだけ与えるということで安全を買ってるんだぞ。」
「そうだったんだ。それは悪かった。以後気を付けよう。」
「分かればいい。」
「そういう事だ、ひゅうごがダンジョンをクリア出来る実力の持ち主と分かればそれでいい。」
すると部屋の中に歓声が沸き起こる。
所々に
「エルネスの宝だーっ!」
と聞こえる。
さっきから疑問に思ってた俺はギルマスに聞く。
「エルネスってこの街の名前か?」
言った瞬間、部屋の中がまた静寂になり、皆ポカンが起きる。
「はぁぁ。」
と息を漏らしたギルマスが額に指を当てて悩んでる。しまった。また余計な事を喋ってしまったらしい。
「世間知らずで通そうと思っておったが、これも秘匿事項だ。こやつは数日前の記憶が無い。南西の海で遭難しておったとな。どこぞの国の騎士だったのであろう森を抜けて南門まで辿り着いたそうだ。そうだろ?ダン。」
「は、はい。真実の間での事は話せないので。ですが出自はそう聞きました。」
ほほぅ。
二人で俺の事はそういう事にしようと決めてたんだな。
根回しが良い事で。
「それでだ。本人もこの街が気に入り、本人の希望で情報を秘匿することを約束した。個人の強さだけでも素晴らしいのに、こやつは成人したてで半月前に登録したばかりの冒険者剣士に剣を教え、それに、先週登録したばかりの魔法使い、そやつは先日Dランクパーティーに登録したらその日の内にパーティーから解雇を受けたような者だ、その物には魔法を教え、たった1日教えただけで二人でアントを14匹を狩らせた実力がある。」
「ほほぅ。」
「そして指導2日目にはその二人でゴブリンを20匹も倒せるまで育てたという実績も持っておる。」
「ほぉ。」
「そして更にはその剣士に魔法特性を見つけ出し魔法まで修得させておる。」
「はぁ?」
「こんな逸材を他領や他国に取られたくないであろう?この情報が洩れれば自国の者だったと謀って近付く者がどれ程現れることか。皆も理解出来るであろう?」
また部屋中が歓喜と称賛に溢れる。
で、街の名前はどこにいった?しかし、アントは俺が手伝った分を含めて盛ったんだと思う。
確かに報告は二人だけで行ったからそれでも良いが、どうしてハーデンの魔法の事を知ったのだろう。
ハーデンのファイアーボールは威嚇だけで当たっていなかったって聞いたのに。
ゴブリンの死体から何か情報があったのか?いや、それだけではゴブリンメイジの誤発かどうか分からない筈だ。
「ギルマス、どうしてハーデンの魔法の事まで知ってるんだ?」
「ふっふっ、俺がただお前の報告を何もせずに待っておったと思うか?」
どうやら梨花亭まで職員に聞き込みに行かせたらしい。
やるなぁ流石根回し上手。
「なあギルマス、ギルドに頼んだらひゅうごの魔法特性判定を受けられるのか?」
そう聞いたのはギデルだ。
「その件だが、まだひゅうごには詳細を聞いていないのだ。ギルドが情報を買って皆に売れる様になるかは今の所不明だ。だが、もし可能になった場合はここにいる者を優先的に勧めよう。」
「あぁ、宜しく頼む。」
ギデルは魔法特性に何か想いがあるのかな。
そっと一人奥でダンが何かを思い出したかのようにはっとした顔をしたかと思ったら、何やら口に手を当てて顔を青ざめている。
きっとこの前の食事の事を思い出したのだろう。
「湧いておるのは勝手だが、本日の招集の目的を忘れておらんか?皆が認めたひゅうごでも今回の事態が異常だと感じて、それを報告受けた俺が招集掛けた事を思い出せ。事態は急を要する。」
その言葉を聞いた皆は、はっとして、急に真剣に悩み始める。
「最初からこうして欲しかったもんだ。」
とギルマスが呟く。
作戦会議が再開する。
「誰でもいい、その盗聴防止の魔道具を解除してくれ、ミイナを呼んで欲しい。ここに居た者全てに告げる、ここまでの話は全て口外禁止だ!肝に命じよ!」
「はっ!」
そう言って皆がギルマスに賛同し、誰かが入り口の魔道具に触れると入り口の黒い結界の様な幕が無くなり、ミイナさんが入ってきて奥の窓をまた開け放つ。
先程の様な喧騒は既になく、それでも1階のざわめきは聞こえてきた。
「こちらに来て欲しい、俺がひゅうごから聞いた情報から作っておいた。」
作戦室の奥、入り口から見て右側にまた大きな机があり、その上には何やらジオラマのような立体の地形模型があった。
しかも結構俺が見たゴブリンの砦に近い。
どうやらこれも魔術具の一つで、頭に思い描いたものを形に出来るそうだ。
しかしいつの間に?
「本当にここに迷路のように建物が配置されてるのか?もっとほんの些細でもいい、どんな配置だった!?」
そう尋ねるのは白虎のリーダーだ。
俺はそれに応えることは可能だ、うる覚えでも迷路の形を伝えるのはやぶさかでもない、だが、俺はそこに興味はない。
「あぁ、それは可能だがそれは必要ないと思う。」
「は?」
何人かが同じ反応だ。
「俺が思うに、わざわざ敵の思うようにこちらから奴らの砦に攻め入る必要は無い。と思っている。」
「はあぁぁ?」
殆ど全ての冒険者の反応だ。
「ほう!?では、ひゅうごには何か策があるということか?」とギルマス
「策と言う程のものではないが、あの砦に攻め入るには必ず犠牲者が伴う戦法になると思う。だが俺は、犠牲者は出したくない。奴らの策に合わせるのではなく、こちらの策に乗って貰うようにしたい。」
「ほほぅ、してその策とは?」とジゼル
「ゲリラ戦を講じて、奴らをおびき出させたい!」
「げりらってなんだ?」とギデル
「あぁ、所謂陽動作戦だ。奴らはいつでもこちらを攻め入る体制は整えている。そのきっかけを作ってあげるんだ。」
「ほほぉ、それで出てきたところを準備万端な我々が叩くと?してそれはどの様にきゃつらをおびき出させるのでしょうか?」
恐らくジゼルの性格なのだろう、きっちりと細かく落ち度がないか確認したいのだろう。
「あぁ、それは俺に任せて欲しい。所で、遠視って出来る奴はいるのか?」
「えんし?何の事だ?」とギデル
「あぁ、悪い。遠距離まで視認出来る能力・・・みたいな?」
「あぁ、身体強化の視力強化か?大体の斥候が使えるぞ!」
と、そう返すギデルに、俺は
「そうなのか!?では、どの位の距離まで視認出来るかと、何人いるんだ?」
「と、その前に。どうしてそれを訪ねるのか、意図を説明願います。」
ジゼルに阻まれる。
「俺は皆さんの力量を知らないので、出来るかどうかは別として聞いて欲しい。」
「どうぞ、続けて。」とジゼル
「俺の考えはこうだ。少数精鋭部隊を2つ作り、一つはゴブリンの斥候部隊50匹を、もう一つは砦で陽動を行う。少数精鋭にするのは、いきなり大人数で攻め入ると奴らは直ぐにでも本隊を出すだろう。そうさせない為にはそう、5人のパーティーが3つ位がベストだ。それも守りの強いパーティーがいい。相手はゴブリンといえども50匹だ、数の戦力に負けない鉄壁な守りのあるパーティーが好ましい。」
「ふむふむ。」
「先ずは最初の1パーティーがゴブリンを殲滅し始め、ゴブリンが集まった所にもう2つのパーティーも加わるといった具合だ。このタイミングが非常に重要になる。」
「ほほぉ。」
「やつらのリーダーが砦の手前で状況を内部に伝えているようなので、散らばっているゴブリン斥候部隊を集めた後、こちらがもう2パーティーを潜伏させてるのを気付かれる前にそのリーダーを撃つ。その役目は陽動パーティーを率いる俺に任せてほしい。」
「ひゅうご殿が陽動パーティーを?」
「ああ、俺には認識阻害の魔法があり、相手に気付かれずに近づく術がある。俺の考える作戦の最初の要であるリーダー討伐のタイミングは自分でしっかりやりたい。そしてそのリーダーを討ち取ったのを合図に、もう2つ位のパーティーが偵察部隊殲滅に加わるといったのを保険にしたい。」
「それは?」
「あぁ、1つは中でも一番の遠視距離の斥候がいるパーティー、もう1つは高火力重視のパーティーが良い。その一番の遠視距離の斥候がいるパーティーが最初の3パーティーと陽動の俺のパーティーがぎりぎり見える位置を作戦本部とし、可能ならそこから遠視の出来るもので街の門まで点々と配置して、門内にいる本体に連絡を付けるようにしたい。」
「視力強化した者には何を街まで伝えるのですか?」とジゼル
「あぁ、例えば偵察部隊リーダーの殲滅を1とし、50匹の偵察部隊の殲滅を2とし、大きく1と2と書かれた旗を持ち、もう一つ色のついた旗で、青なら成功、黄色は難航、赤は失敗とし、赤が上がったらその場の者も順番に街まで退却し、街の門での戦闘に備える。といった具合だ。」
「それなら理解した。しかもあなたは我々の力量を知ってての作戦でしょうか?」
「え?どうしてだ?」
「ほほぅ、本当に偶然とは。先程の説明、もう既に役割は誰がするのか決まっています。」
「えっ?どうして?」
「本当に知らないで考えたんですね。驚かされます。最初の3パーティー、あれば我々玄武に打って付けです。それに保険の一番の遠視パーティーは視力強化が一番得意なギデルの居る翼、火力重視のパーティーはハオクの白虎が最適でしょう。それと、あなたの所の陽動には後どういったメンバーが必要でしょうか?」
「そうだったんだ。それは知らなかった。俺の所には俺の相棒である闇魔法使い、それと遠距離が得意な魔法使いを2人とその者達を護衛出来る者を1人貸してほしい。俺の相棒は明日一日準備すれば、自身を含めもう3人なら認識阻害が出来る筈だからだ。」
「遠距離魔法ならさほど差が無いと思われますので、ブロンズから1人ずつ借りる事で可能でしょう。そのブロンズを点々と配置すれば門までの連絡は取れるでしょう。後はあなたの所の護衛でしょうか。少々ブロンズから1人とは心許ない位ですが。」
「いやっ!その役、俺にやらせてくれ?俺ならブロンズより適任だと思うが?」
と、突然ダンが割り込む。
「ダンですか。確かに適任でしょうね。代理になったあなたが外れられるのでしょうか?」
「そこは心配には及ばない。こうなる事を見越して代理の代理を頼んである。しかもひゅうごは明日1日を準備にと言った、俺は元々明後日は交代予定だったんだ。何とかなる。」
「そうですか。それなら問題なさそうですね。ギルマス如何でしょうか?」
「問題ない。それでいこう!決行は明後日の1の鐘。ミイナ!職員に指示を!数字の旗を門と翼とブロンズの7セット、色の旗を玄武とひゅうごを加えて9セット作成させろ!後の者は詳細を詰めるぞ!」
「はいっ!」
一同が返事する。
「では俺の相棒を迎えに行くからここで皆に紹介したい。さっきと同じ魔法を出すがいいか?」
「ああ、そうしてくれ。」
俺は作戦室の隅に行き、
「これも内密に願う。」
「ああ、皆、これも口外禁止だ。」
「はっ!」
俺は人が通れる大きさの黒穴引と出を作成し、引に入っていく。
「ヒョウ。また突然すまんな。マインの様態はどおだ?」
「ひゅうごさん、私はもう無事です。でも驚きました。目が覚めたら黒魔虎様がおいでで。一言先に言ってからにしてほしいです。」
「悪い悪い。一刻を争うと思ってな。」
「聞きました。それはもう慌てておいでだったと。」
「え?あ?だ、誰に聞いたって?」
「黒魔虎様に決まってます。」
「え?ヒョウから?何でだ?ま、まあいい。お前達を襲ったゴブリンを明後日冒険者全員で討伐することになった。そこで今ギルドで作戦会議を開いているんだ。そこでマインを紹介する。着いて来てほしい。」
「えっ?あっはいっ。」
「ヒョウ、悪いな。また行ってくる。」
「くぅうん。」
「じゃあ、マイン。ここを潜るとギルド作戦室になる。20人ちょっといるから驚くと思うが付き合ってくれ。」
「は、はいっ。」
そうして二人で黒穴引に入ると、直ぐに作戦室の黒穴出から出る。
俺はその二つの黒穴を消し、皆の方を向くと、
「リーデ!?」と驚く女性の声
するとマインがビクンっと体を強張らせる。
「マイン?どうかしたのか?」
先程の女性が
「ま、マイン?」と溢し、ギデルが
「ブリュー、知り合いか?」と聞き、そのブリューが
「いいえ、人違いでした。」と
そこでマインが少し落ち着いたように感じた。
俺は皆にマインを紹介した。
その後、地図の上でマインにあの後俺が見たものから順番に作戦の内容を説明する。
今度はジオラマの方に向かい、我々陽動チームの動きを細かく説明していると、いつの間にか各パーティーの紋章を描いたチェスの駒の様な物が街の門からゴブリンの砦に向かって配置されている。
いつの間に?と思ったが、俺の駒はどんなんだろうかと興味を持ち目で追うと、そこには紋章はないが一つだけ黒い色を着けた一際かっこいい騎士の形をした駒がある。
盛りすぎーっ!
「ひゅうごよ。お前の陽動班に付ける魔法使いの二人を紹介する。それと、その者達と同時に我々にも陽動班がどの様に動くのか説明して貰えるかな。我々も把握しておきたいのだ。」
「勿論だ。」
「これは漆黒の炎のマルティア、火属性の魔法使いだ。これは疾風煉我のビルカーヌ、風属性の魔法使いだ。」
「宜しく願う。」「宜しく。」「宜しく。」
「ではひゅうごの思っている作戦を聞かせて貰おう。」
「ああ。先ずは我々の最初の目標は斥候部隊のリーダーだ。明日もう一度念のために配置を確認するが、恐らくほぼ変わらないであろう。この位置だ。ここに俺の認識阻害で俺一人を、マインの認識阻害で残り全員を隠し、」
「え?私、まだそんなっ。」
「大丈夫だマイン。お前の認識阻害は俺のより上だ。明日1日の訓練で4人分の阻害は可能になる。確信している。」
「は、はい。」
「それでリーダーを見付けたらそこで待機。俺は1kmの範囲で索敵が可能だから10組みのゴブリンが集まり始めるのを確認する。」
「索敵が1kmだと!?」とギデル
「あぁ、これも内密に頼む。それで、集まり始めたら俺とマインのMPドレインでリーダーが気絶するまでMPを奪う。」
「何故殺すのではなく気絶なんだ?」
「あぁ、これには二つの目的がある。その後の作戦の為に二人のMPを万全にしたいことと、リーダーが砦内の者に連絡するのを阻止できる確率が高い方を考えたんだ。」
「ほほぉ。」
「その後リーダーの取り巻きを声を発する前に俺とマインで静かに殲滅し、ギデルにダンから旗を見せる。そして翼と白虎が合流したことを確認してから砦の陽動に切り替える。そうすることで俺達が挟まれる心配が減るからだ。」
「そんなことにはならないですよ。我らが保険の2つが到着前に殲滅致しますよ。」
流石自信家のジゼル。
「それで俺達は羽橋の手前にある1本の木に登る。そこから約150mの所に砦の見張り台がある。その台を二人の魔法使いに叩いて欲しい。」
「見張りをではなくて?」
「あぁ、見張り台には予備の武器や投石が大量に仕込んであって、見張りを落としても直ぐに替えが入るようになっている。台をそのまま叩いて無くしたい。それが成功すれば陽動班は撤退だ。俺だけ残って侵入して内部をかく乱してくる。」
「えええっ!?」大勢の者が驚く
「お前が一人でだとっ!?」とダン
「まあ、聞いてくれ。内部の迷路によって俺は簡単には見つからない。逆手を取ってやるんだ。それに、俺の移動速度は最速で秒速15mだ。そしてそのスピードを維持したまま湖から海まで往復も可能だ。実際にやったこともある。半日だったな。」
「ええええっ!?」ほぼ全員が驚く
「砦で陽動した後、街の門までには何人も抜かせると思うぞ。まぁこれも内密に頼む。」
「いったいどんなけ規格外なんだよ!」とダン
「それと可能であればなのだが、一つ頼みがある。」
「何だよ、急に改まって。」とダン
「ああ、明日捕まえに行くのだが、明後日の撤退時まで、マインの魔力回復用に魔物を当日預かってほしいんだ。縛っておくからワイルドボアをここのパーティーで待機時見ててもらえないだろうか。」
「ワイルドボアだとっ!俺達を全滅させたいのかっ!?無理に決まってるだろ!」
そう叫ぶのは作戦本部に最も近い位置に配置予定の漆黒の炎のリーダーだ。
ちゃんと縛るって言ったのに。
「それならゴブリンメイジならどうだ?ちゃんと縛りあげておくから。2匹ほど。」
「そ、それ位ならいいぞ。」
「助かる。当日渡すからお願いしたい。」
「あ、あぁ。」
「それじゃあマイン、撤退時この位置に放置されているゴブリンメイジがいるから、そいつからMPドレインを行って魔力を補充してくれ。縛られた奴を殺すのは道に反する様なら俺が回収してやっておくからいいぞ。」
「いえ、その程度で心は揺らぎません。私が仕留めておきます。」
あ、今朝の件で怒りの方が上回ってるようだな。
「それならいいんだ。じゃあ頼む。」
「はい。」
「ギルマス、作戦会議はこれで終わりでいいのか?ひとつ個人毎で聞きたいことがあるんだ。」
「皆の者、会議はこれにて閉会。明後日の決行に向け各自準備せよ。明日は3の鐘以降外出禁止。明日の3の鐘には全ての土属性魔法使いは南門に集合。南門と西門に仮石砦を作成する。以上だ。解散。」
「はっ。」
「ひゅうごよ。聞きたい事とは何だ?」
「人払いをお願いできますか?」
「いや、緊急時には作戦室は解放することとなっておる。隣の部屋を使おう。ミイナ、小会議室の準備を!」
「はいっ。」
そう言ってミイナさんが執務室の外に出ていく。
「何かミイナさんだけ激務じゃないか?」
「あ?あぁ、ミイナは受付職員長でもあり、緊急時のギルマス秘書を兼務しておるのだ。」
えぇっ!ミイナさんってそんなえらい人だったんだぁ。
「ご準備出来ました。」
「では行くぞ。」
「はいっ。」
隣の会議室に入ると即座に別の受付嬢が3人分のお茶とお茶菓子を用意する。それが終わるとそそくさと部屋から出ていく。
「して、何の相談だ?」
「この世の魔法体型について教えて欲しい。魔法と神官の使う魔法との兼ね合いを含めて。」
「それならこんな部屋を用意せずともあちらで聞けば良かろうに。どうせ記憶喪失なのだから。」
ニヤッとするギルマスに続けて話す
「マインの負傷に、神に祈りを捧げたら祝福の光が現れたんだ。それを見たハーデンが神官の祝福だと言った。これって普通のことなのか?」
「あぁぁっ?それではひゅうごが100年ぶりの賢者になったってことか?それはありえないだろ?だってお前は闇属性だっただろ?」
「どういう意味だ?」
「あぁ、どっから説明すれば・・・魔法体型な。先ず、魔法には火、水、土、風、光、闇の6つの属性に分かれており、火は水に弱く水は土に弱く土は風に弱く風は火に弱いという4すくみの関係で、光と闇はそれぞれ対比している。
「ほぉ。」
「そして、その6つの魔法と神官が使う聖法とは更に対比しておるのだ。」
「へぇ~。」
「6つの属性魔法のうち2つや3つを持てる者が稀に現れるが、更に稀に魔法と聖法の両方を扱える者は賢者と呼ばれ、100年に1人現れればその時代は人類に安定が持たらされると言われる程だ。」
「そぉなんだ。」
「しかしその賢者も文献によると全ての者は魔法の属性が光なのだ。光属性魔法が唯一聖法に近しいと言われているのが所以だ。その光と相対している闇属性の魔法使いが賢者になるなど、もしあったなら創世依頼初めての快挙となるであろう。」
マジかっ!?そんな大事になるなんて。やっぱり内緒で相談して良かった。
「こ、これも内密に願います。」
「で、では、本当に聖法が使えるのだな?」
「あぁ。」
「はあぁぁぁぁぁ。お前はいったいどれだけの秘密を持ってるんだぁ。これは流石に俺も聞かなかったことにするぞ。なるべく悟られない様にしておけ。そうとしか俺の口からは言えん。」
「わ、分かった。だがその聖法について知っていることを教えてほしい。」
「俺も神官ではないから基本的なことしか知らないからな。」
「それで構わない。魔法と違って祝福を与えても魔力が減らないんだ。その辺りが分かればいい。」
「本当に使えるんだな。驚いたな。
「そう、聖法の祝福とは神を信じ神に祈りを捧げた分だけ使える、と言うより神の力を借りると言った方が近いか。そういったものらしい。だが、無限に使えるかといったらそうではなく、祈りを捧げてきた量を超えて願うと急に死に近づくんだ。」
「ほぉ。」
「俺も何度か見たことがあるが、神から不敬を買って生命力を削られるのだそうだ。魔力切れの気絶とは違って、その場で血を吐いて倒れるんだ。だから扱いには非常に注意が必要で、毎日の祈りと自身が扱える法術を研鑽しながら取り扱えるようにしていく必要があるんだ。この位しかないぞ。」
「いや、十分だ。知らずに連発しなくて良かった。助かったよ。」
(結構連発したけどな。)
「しかし、もし今後も使うっていうなら、事情を説明して良く指導してもらった方が良いと思うが、今は止めておいた方が良い。一気に国王様の前に立たされることとなろう。」
「それは避けたいな。」
「あぁ。俺もそうしてほしい。」
そう落胆するギルマスが、俺には意味がわからない独り言をつぶやく
「はぁ、しかし今回の騒動、今ここに光がいないのを嘆いておったが、逆におらなんで良かったと思えるとは。。。」




