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第十一章

 夕食を終え、三人でマインの部屋。


 「また女性の部屋に申し訳ない。お前が魔力を使うところを見せて欲しい。お前の魔力操作は秀逸だからな。俺の勉強にもなる。ハーデンにとっては言わずもがな。ハーデン、お前はそれを感じながら魔法発動の練習だ。」


 「はい。承知致しました。」

 「お、おう。」


 二人に瞑想の姿勢をさせた後、

 「マイン。お前には俺が今から作る、操影と呼んでいる影に同調してほしい。お前なら直ぐに出来る筈だ。それと同時に先程の身隠しを発動させて欲しい。これには意識が無かったと思うから、自身の身を守りたい、隠したい、欺きたい、等といった感覚によるものと思う。」


 俺はハーデンの前に黒穴引を生成し、

 「ハーデン、お前は瞑想の形を崩さず、目の前でマインが魔法を具現化させるのを感じながら、お前の体に溜まった魔力を、火、炎、にするイメージを持って、この影に投げ入れるイメージだ。」


 「お、おう、お前の言う炎とは、この影の先にあるバカでかい炎のことか?」

 「お、お前。この炎が見えているのか!?なら、お前はこの炎を超えるモノをイメージして欲しい。」


 「お安い御用だ。」

 そう言ってハーデンは、ピンポン玉程の炎を作って俺の影に投げ入れた瞬間、魔力切れによる寝落ちする。


 そしてマインの方はと言うと、苦戦している。

 少し前に戻るが、俺がマインに俺の操影に同調して欲しいと言い、操影を自分とマインの足元に展開し、その操影にマインが同調しようとした直後


 「うっ」

 俺の中に強烈に違和感が走る。

 (こ、これが他人の魔力を自分の中に感じ取るということなのか)


 大きく「ピンッ」


 俺が指示して同調するようにしたのに、体が勝手に無理やり入ってくるモノを押し出そうとしている感覚。

 (俺から来いって言ったのに俺から拒むなんて!どうにか抑えろ!)


 俺は必死に自身が放つ拒絶を抑え込むことに意識する。

 そうしていると微かにマインの作り出す操影が俺の操影に同調する。


 (ここだっ!)

 俺は自身の操影をマインの操影ごと階下に引っ張っていき、裏庭にある雑草を見付けて、それを強く引き抜く。

 そこで俺の操影が力尽きて消える。


 「はぁ、はぁ。悪い。ここまでしか出来なかった。」

 「は、はい。驚きました。」


 「短い時間の同調だったが、何か掴めそうか?」

 「はいっ!十分です。私は初めての魔力同調だったのですが、まさか初日に成功するなんて!?」


 (ん?どういうことだ??)

 ま、まあ、今は置いておこう。


 「ま、まあ、掴めそうなら自分のものにしてくれ。俺はこいつを連れて自室で休むな。」

 「はいっ!」

 「この後ベッドの上で魔法の続きを行って、魔力切れをしてくれ。」


 そう言って、ハーデンを抱え、隣の部屋に行った。

 そのままハーデンを自分のベッドで寝かせ、人が入れる大きさの黒穴引を生成する。

 そしてそこを通ると、ダンジョンの大黒蛇の部屋に出る。


 「まだ復活はしてないな。」

 そう言い、ヒョウの祠に向かう。


 祠に着くと、

 「ヒョウ、悪い起こしたか?」

 「くぅうぅん」

 「そうか、それならいい。二日も開けて悪いな。」

 「くぅうぅん」

 「そうかそうか。所で、お前に合わせたい奴がいるんだ。」

 「くぅん?」


 「直ぐにではないが、一緒に暮らしたいと思う女性が出来たんだ。お前の事を全て話して、出来ればここで暮らしたい。」

 「くぅんっ」

 「いいのか?ありがとう。今度連れてくるな。」

 「くぅんっ」

 「そっか、今晩はここで寝落ちさせて貰うよ。」

 「くぅんっ」


 そう言って、夜中にも拘らず、先ずは、今日一日殆ど体を動かしてなかった事へ、剣の稽古。重力は5倍。720通りの型稽古を力尽きるまで。


 そうはいっても重力5倍。3順の720通りでへとへとに。


 その後祠で魔法の訓練に切り替えると、早速先程マインと同調させた身隠しを生成する。それを広げて、祠の認識阻害との違いを確認していく。

 それ程違いがない。

 というか、俺の身隠しがまだマインのものに追いついていないせいなだけで、マインのものとここのものとは殆ど同じと言った印象だ。


 「だが、やはりここの認識阻害と同調させると一気に魔力が持っていかれる。」

 そう言い残すと、ふと寝落ちする。


 85日目。


 3日ぶりの祠での目覚め。

 本当に今日まで色々なものとの出会いと、全てのものに感謝の祈りを捧げる。


 完全に魔力は回復している。

 それで、いつでもここに来られるように、黒穴出を祠の中に作りつつ、ダンジョンの黒穴引を作る。


 「じゃあな、ヒョウ。また街に行ってくる。暫く空けるぞ。」

 「くぅんっ」


 その瞬間、大黒蛇の部屋に出る。

 そこから、次々とダンジョンを降りる。

 とにかく全ての魔物から影移動で逃げて。

 大毒蜘蛛の間、まだ復活していない。

 その後も影移動で逃げ切る。大黒蜥蜴の部屋では既に復活しており、倒すしかない。


 「しゅんっ!ずしゃっ!」


 あっという間に大黒蜥蜴を倒し、前回と同じく魔石を取り出し、ドロップ品の尻尾を受け取り先を進む、この辺りから身隠しで通路の魔物には気付かれない。

 続けて大蝙蝠の間、クイーンアントの間では同じく復活しており、倒しては魔石の回収とドロップ品を受け取る。

 そこからも身隠しでダンジョンを降りきる。


 そして、東門前の町中に着くと、門番の若手兵士が俺を見付ける。


 「だ、ダンジョンからこんな時間に何だ?」

 「あ、あぁ、驚かせたな。今日のダンジョンの様子確認に、さっき入って今出てきたところだ。何も変わったところはない。」


 若手兵士は、

 「そ、そうか。問題ないならいい。へ、へんな動きをするんじゃない!」

 「分かってるよ。俺はひゅうご。衛兵のダンには認められているんだ。今後とも良しなに。」


 そう言って、勝手にダンの名前も使って、若い衛兵を懐柔するように仕向ける。

 まあ、ダンがそれを聞いても、同じように対応してくれるだろうと思うが。


 それで急いで梨花亭を目指す。梨花亭に着くと、その裏庭に二人。


 「こんな早くに二人共どうしたんだ?」

 「お、俺は、初めての魔力切れでの寝落ちで、今朝だいぶ早く目覚めて、あんたの姿がないから慌てて裏庭に出て、そのまま稽古してたってだけだ。」

 「私は目覚めると、裏庭で稽古する音が聞こえたので、私も稽古しようとしてたところです。」


 「そうか。で、お前の稽古っていうのは?」

 「あ、はい。私は魔法使いですが、近接戦闘では短剣を使用します。先程からハーデンの稽古を見てましたら、私の基本稽古に良く似ているな。と。」

 「ハーデンに教えたのは、俺がとある師匠から学んだ、基本の型の一つなんだが、それでも剣術だ。短剣でも同じような動きなのか?」


 「あ、いえ。私のは短剣と言っても、両手の双剣使いなので、全然違うのですが、そ、その、型を使う相手の動き、というのですか。基本5手足す5手の2合で1型な所や、その型が想定している相手の動き等が殆ど同じなのです。」


 俺は、型が似ているとか、殆ど同じというより、マインの短剣の双剣使いということの方に驚く。


 「ま、マイン。その、その動きをやってみて貰えないか。」

 「は、はい。」


 マインは短剣を両手に持つと、突進からの3段突きからの動きを見せてくれる。

 俺はそのマインの動きに自分の型の受けを、重ね合わせてみると、見事に一致することを確認する。


 マインの型が一つ終わる頃、俺は木刀を取り出す。

 「マイン、俺に向かってくれ!」

 「は、はいっ。」


 そうしてマインが俺に向かって型を使って突いてくる。

 俺はそれをいつもと逆の左に避け、それに簡単に反応するマインに次々と合わせていく。

 マインの動きを確認しながら。

 俺はそうやって俺の知る型と、マインの動きから、俺が両手剣を持った場合の動きをイメージする。


 一気に2通りの型を確認すると、

 「ありがとう、マイン。次はハーデンと手合わせしてくれ。」

 「はい。」

 「やっと俺か!?」


 俺はもう1本影から木刀を取り出すと、先程のイメージの型を行ってみる。

 「すぅーーっ、やぁっ、はぁっ、はっ!」


 これだっ!両手に剣を持ったらまた素人みたいになってたが、またマインが答えを持っててくれた。

 感謝しかない。


 俺が続けて3通り行うと、

 「キリがいい所で朝練を終わりにして、朝飯にでもしないか?」

 「お!おうよっ」

 「は、はい。」


 そのまま三人で裏口から梨花亭に入り、朝食をお願いする。

 「なぁ、今日は何をするんだ?」

 ハーデンが問う。


 「あぁ、ギルドに行って、同じ依頼があれば、ゴブリン退治にしたいと思っている。」

 「ほおぉっ!それは何でだ?」

 「あぁ、先ず欲しいのは石鹸と、洗髪剤だからだ。」

 「な、なんだあんちゃん。ゴブリンを狩る理由がねえぞ。」


 「それか、良く聞いてくれ。俺は今日は森でいくつかの種類の素材を採取したい。そして、その森にいる魔物はゴブリンだ。ゴブリンの巣や集落に入ったら危ないが、そうならないだけの魔力感知も、今のお前達なら出来る筈だ。お前たちにゴブリン狩りで色々と訓練をして貰ってる間に、俺は森深くに行って探索と採取をしたいんだ。」


 「ほほぉーっ、それじゃあ、そのゴブリンの報酬はまた二人で分けちゃっていいってことかぁ?」

 「おぉ、いいぞ。」


 「よっしゃーっ!ねーちゃん狩りまくろうぜっ!」

 「はい、はい。」


 朝食を食べ終えると、ギルドに向かう。

 ゴブリンの討伐依頼が今日もある事を確認すると、受付をして南門に向かう。


 「おう、ひゅうご。今日はゴブリンか?」

 今日も衛兵はダンだ。

 3日連続だ。

 何の巡り合わせだ?


 「あぁ、ダン。二人はゴブリン狩りで特訓だが、俺は森で採取だ。」

 「ええっ?今回は採取依頼を取ったのか?」

 「いや、依頼には無い採取だ。自己満足だ。」

 「なんだ!?そりゃ?」

 「まあ、ダンには関係ない。作成して売れる様になったら売ってやるよ。」

 「はぁ!?訳の分からないものを、俺が買うかっ。」

 「ははっ、冗談だよ、冗談。」


 「まあ、お前達なら心配いらないと思うが、4の鐘を聞いたら戻って来いよ。5の鐘で門を閉めるからな。それを過ぎたら野宿だ。出来るだけ砦の壁に近づいて寝ろよ。砦の防護結界で、多少魔物から守られるからな。と、一応これ、ここを通る者に必ず聞かせる決まり、の話。」

 「あぁ、そうだろうな。ま、じゃあ行ってくる。」

 「行ってくるぜっ、俺は強くなるぞぉ!」

 「行ってまいります。」


 この世界には前世と同じ時間がある。

 が、時計は一般個人には普及されていない。

 で、街の真ん中に時計塔があり、6時に最初の鐘が鳴り、その後は3時間置きに鳴り、21時で最後の鐘が鳴る。

 多くの者が6時の鐘で起き、9時の鐘でお店や門が開く、18時の鐘で店や門が閉まり、21時の鐘で酒場が閉まる。


 例外もある。

 梨花亭のアギレンの場合、夜明けに起きて仕込みをし、1の鐘、6時に開店だ。

 ギルドもそうだ。

 1の鐘で開き、朝食も、依頼も受けられる。

 2の鐘で門が開いたら依頼を開始するという具合だ。


 ただ、東門だけは全く違う。

 東門はダンジョンの入り口だけを見張っていて、ダンジョンからは魔物が出てくることがほぼ無い為、門は開きっぱなしだ。

 唯一夜でも依頼をこなせる。

 その為、衛兵は24時間の体制で交代制だ。


 そこまでするのは、この街の唯一の人を集める魅力がダンジョンだからだ。

 そうして出来た街だからだ。


 ただ、魔物がほぼ出てくることがないと聞いたが、数十年に一度、魔物がダンジョンで大量発生し、街に溢れ出すことがあるらしい。

 しかし、その際には、一番下層の蟻の魔物が1、2体で出てくるので、それを見付けた際には、1の門と2の門の間で待機している衛兵が、直ぐ隣のかなり太い縄を切る事で、二つの門が同時に閉まり、衛兵はその間に到達した蟻の魔物だけ倒せば、街に被害は全くないとのこと。

 もし倒せない魔物がその門の間に入ったとしても、そこにある一人用の詰め所に掛け込めば、1週間程で大量発生は自然に収まり、門間に居る魔物も外気に触れすぎ、同時に消滅すると。

 その1週間をしのげる食料は、欠かす事なくその詰め所に保管されている。

 そして衛兵はその縄を切る訓練、切れなかった際の対処方法、スモールアントからブラックアント、勤めが長いものだと、ポイズンスパイダー位は簡単に倒せる程に訓練されていると。


 これらはこの街に来てから知った。

 みつかいさんへの質問では、極々小さい「ピンッ」しかなく、分からなかった。

 どうやら、人間のルールみたいなものは、みつかいさんには完全に把握してないようだ。

 恐らく数百年単位でルールが変わるようなものには、興味というか、関心というか、監視というものが無いらしい。

 これらの知識は全て、初日の梨花亭の食事中にダンとマインとアギレンからの受け売りだ。


 2の鐘と同時に森に向かう。

 1時間位で森の入り口に着くと、索敵で5体ずつ位のゴブリンが所々にいるのを感じる。


 「ここで別れようと思う。お昼になったらここで待ち合わせよう。一度休憩をする。日の高さで判断してくれ、奥まで行かなければ鐘の音も聞こえるだろう。」

 「はい。」

 「おうっ。」


 「今一番近くのゴブリンを感知できるか?」

 「んーー、ぼやっとだが。」

 「はいっ、ここを真っ直ぐ南に5体おります。」

 「そうだ。そこまではっきり感知できるなら安心だ。マイン、任せたぞ。」

 「は、はいっ。」


 「5体だとぉ、よくそこまで分かるなぁ。」

 「お前はまだ魔法訓練始めたばかりだ、感じられるだけでも凄いことだぞ。」

 「そ、そうなのか?やるなっ俺!やるぞっ俺!」

 「ははっ、お前はその位が丁度いい!」

 「了解だぜ!師匠!」

 「し、師匠!?」

 「だってそうだろ?」

 「ま、まあ勝手にしろ。」

 「オッケー師匠!」


 「なっ。ま、まあ、マイン、ここでハーデンにドレインを二つ掛けたらスタートだ。マイン、お前が肝だ。ドレインを掛けた後、少数のゴブリンに接敵したら、先ず1,2体は影縫いを掛けろ。いや、アースバインドだったか。」

 「はいっ。」

 「それでハーデンは、バインドが掛かってないゴブリンから倒す。メイジやアーチャーがいたらそいつらを優先にだ。」

 「おうっ。」

 「マインはバインドはメイジやアーチャーには掛けるな。勿体ない。その代わり、メイジにはMPドレインで魔力回復をしろ。」

 「はいっ。」


 「お前は近接に切り替えるには杖を仕舞い、両手にダガーを持つ必要がある。そこに隙が出来る。なるべく近接戦闘は避けろ。ハーデンの補助に徹しろ。ハーデンにお前の魔法があれば必ず出来る。」

 「はいっ。」


 「二人共出来るな?俺は最初の5体との戦闘を確認したら、そのまま南へ奥へと採取に向かう。」

 「はいっ。」

 「おうっ。」


 「まだあいつらはこちらに気付いていない。行ってこい!」

 「はいっ。」

 「おうっ。」

 そう言い、俺は二人の後を追っていく。


 最初のゴブリンのグループは、4体のゴブリンに1体のアーチャーだ。

 一番先頭から2体のゴブリンにマインのバインドが掛かり、その隙を縫ってその先のゴブリンを屠りつつ、アーチャーを目掛け、あっけなくアーチャーも屠る。

 そして残った動けるゴブリンから、それも一撃ずつで倒していく。


 「心配は無用そうだな。」

 「おうよっ!」

 「ありがとうございます。」


 「ただ、無理はするなよ。巣や集落には突っ込むなよ。」

 「分かってるって!」

 「承知致しました。」


 「んんっ、じ、じゃあ俺は奥に採取に行ってくる。」

 「おうっ、いてらー。」

 「お任せ下さい。」


 俺はこの直後から、みつかいさんとの質問・確認タイムに入る。

 俺は、この辺りの森で、洗剤と洗髪剤になる素材が取れる事までは確認出来たが、どれがそうなのかは今からだ。植物なのか菌類なのか、はたまた動物なのか。

 とにかく聞きまくる。

 そうしてやっと洗髪剤に成り得る植物、リンスインシャンプー的効果が見込める実、をいくつか採取した時、俺の索敵で思わぬ状況を理解する。


 3回目の接敵をした二人に、離れているゴブリンのグループが一斉に二人に向かっている。

 位置的にみて、囲まれそうだ。

 5,6組位のグループだ。


 俺は採取を即座に止め、二人の元に向かう。

 しかし、二人は5匹の対処をしていて、新たなグループが一度に襲ってくるなど、全く想定出来ていない。


 この瞬間、全てを理解した。

 最悪な未来が頭をよぎる。

 一昨日のゴブリン討伐に、必ず1グループにアーチャーやメイジがいたこと。

 その両方がいたことも。


 そのもっと前には、俺よりも強いヒョウが、ここでゴブリンの集団にやられそうになってたこと。


 それらが全て繋がった時、ここらの森のゴブリンは、かなり上位種のゴブリンか何かに、戦闘訓練を受けていて、自分達より強い者を排除する術を学んでいたと。

 必ず森の中では決まった匹数で行動し、有事のあった際には何かの方法で、集まって対処すると。


 俺が二人の戦闘の場所に着いた時には、満身創痍なハーデンが、今にも死にそうにそこら中から血を流しているマインを抱え、大量のゴブリン達の攻撃を、折れた剣で躱している姿だ。


 俺は一瞬でキレ、黒虎徹と木刀と影槍で、その場にいるゴブリンを全て屠り、マインに掛け寄る。


 「どうした?どうしてこうなった?マインは何を受けた?お前は大丈夫なのか?」


 俺の矢継ぎ早な質問に戸惑いながら、どう答えようか考えを張り巡らせてるハーデンに、落ち着いて答えるように促す。


 俺はとにかく出来ることから。

 「解毒っ。」

 「お、俺は大丈夫。さっき突然ゴブリンに囲まれて、二人で別々で倒してたんだ。でもマインの背後にメイジが居る事に気付き、マインが全然気付かないから、俺は慌てて魔法でメイジをを牽制したんだ。」


 「え?お前が魔法を。」

 「そうなんだ。咄嗟に出たんだ。だけど、その魔法で俺が気絶してしまって、マインは俺を庇ってくれたんだ。俺はマインの魔法で魔力を回復してくれ、起きた時にはもうこうなってて。」


 「そうか。良く話してくれた。しかし、マインの出血が止まらない。」


 駄目だ。このまま出血が進めば、恐らく助からない。

 ヒョウとは元々の生命力が違うのだ。

 何とかしなければ。


 「このまま出血を抑えながら、街に戻るぞっ!」

 「はいっ。」


 俺はマインを抱えたまま操影を出し、ハーデンを操影に載せ街へと向かう。

 「街の何処に行けばいい?」

 「重症の時は神官の祝福だ。神殿だ。」

 「神殿?それは何処にある?」

 「街の北門の近くだ。」


 「くそっ、一番遠いかっ。頼む、間に合ってくれ、死ぬなマイン。誰かマインの傷を癒してくれ。みつかい様、俺の優遇を無くしてくれてもいい、助けてくれ。神様、いるなら俺の願いを聞き入れてくれっ!」


 そう言うと、突然マインの傷口が金色に輝く。


 「な、何が起きているっ!?」

 「こ、これは見たことがあるっ!神官の聖なる力だ!」


 「聖なる力?誰がマインに?」

 「いや、師匠だろっ?師匠今、神に祈ってたじゃんかよっ。」


 「お、俺?俺の先程の願いが叶ったってことか?」

 「師匠、それ分かっててやったんじゃないのか?師匠神官じゃないのか?あ、いや、師匠って魔法使いだったな。魔法使いで神官・・・ってこと?」


 「待て、それはいい。今はマインだ。」

 先程の力が、俺のものだとしたら、先程の祈りをもう一度再現させられるか確かめる。


 「神よ。俺の祈りを聞き給え、このマインに傷の癒しの祝福を与え賜え。」


 マインの傷がまた金色に輝く。

 マインの顔色が良くなっているのを確認する。

 南門に着く。


 「おうっ、どうした?大丈夫か?」

 「ダン、悪い、通してくれ、マインが危ないんだ。直ぐに神殿に向かいたい。」

 「ま、待てっひゅうご!砦には砦付き神官が居る!先に治療をして、納付金は後に出来る!今呼んでくる!」

 「あ、ああ、頼む。マインが助かるならいくらでも払う!」


 暫く待つと、ダンが神官らしい男を連れて戻ってきた。


 「患者はこちらの女性ですか?」

 「そうだ、ゴブリンアーチャーの毒矢とメイジのファイヤーによる火傷と切り傷がある。」

 「ゴブリンですか。それは怖い。ただ、既にヒールが掛けられたようですね。それもハイヒールよりも強力な。グレートヒールに近いものを。私ではハイヒールまでしか掛けられないので、ここで出来ることはないと思います。」


 「そうなのか?じゃあ神殿に行くしかないのか?神殿にはもっと強いヒールを掛けられる奴がいるんだな?」

 「神官長がグレートヒールを掛けられますが、この方にはヒールはもう必要ないかと思われます。血を多く流されたと思われますので、直ぐには動けないと思いますが、安静にしていれば血液が増えて治るかと思います。」


 「じゃあマインは大丈夫なのか?」

 「はい。恐らく。今意識が戻られないのは毒の影響かと思われます。こちらは我々神官の使う法術とは何か違う方法で、何か物理的に近い方法で毒を取り除かれた跡があります。それだと体内の奥深くに回った分の毒が頭に回ったのだと思われます。」


 「そ、その法術とやらで、マインの頭の中の毒を取り除けるのか?」

 「そうですね。キュアポイズンだと恐らく除去できると思われますが、それも神官長しか使えません。神官長は現在王都に居られ、お戻りにはあと3日程掛かります。」


 「なんだと!?じゃあマインは助からないのか?」

 「いえ、このご様子だと、多くの毒は取り除かれているようですので、2、3日高熱にうなされるとは思いますが、回復はされるでしょう。」


 「そうなのか。無事なら先ずは良かった。安静にさせるよ。それで、診てくれた料金はいくらだ?」

 「いえ、診断までは掛かりません。あくまでも処置に対してのお布施を頂いてます。」

 「無料なのか。助かる。じゃあ急いでマインを寝かせてくる。ありがとう。ハーデン、先を急ごう。」

 「お、おう。」


 「じゃあ、ダン。助かったよ。」

 「お、おう。お大事にな。」

 「あぁ。」


 俺はマインを抱えハーデンと急いで梨花亭の2階に向かう。

 梨花亭に着くと。

 「ひゅうごさん。どうしたんだ?マインさんが怪我でも?」

 「そうだ。だが砦で診察してもらい、安静にしていればいいと。騒がせて悪かったな。寝かせてくるよ。」


 「そうか。処置されたなら安心だが、なんか必要なことあったら言いな。」

 「ありがとうな。その時は頼む。」


 マインの部屋のベッドにマインを寝かせ、様子を診る。

 ヒョウの時を思い出す。

 あれ程強いヒョウだったから自力で治ったんだろうが、マインの頭に残った毒で後遺症などになったら、悔やんでも悔やみきれない。


 「な、なあ、師匠。姉ちゃんは本当に大丈夫なのか?」

 「神官が言うにはな。だが心配だ。頭に毒だと、治った後にも影響が残ることもある。」

 「そ、そ、そんな!」

 「何か出来る事はないか?何か、何か、」

 ふと、先程俺の祈りでハイヒール以上の法術とやらが発せられたなら、キュアポイズンは?祈ってみる。


 「神よ。俺の祈りを聞き給え、このマインに残る毒の傷に、癒しの祝福を与え賜え。」

 するとマインの頭を包むように金色の輝きが発せられ、ふわっと消えていった。


 マインの様子が変わった。

 先程まで息が荒く、大汗をかいていたのだが、顔が落ち着き、今はただ眠っているだけのようだ。


 「ハーデン。マインを診ててもらえないか。俺はギルドに報告に行く。思い当たる事があるんだ。」

 「思い当たる?」

 「あぁ、はっきりとしたらそれは後で説明する。頼めるか?」

 「勿論だ。」

 「じゃあ、頼む。」


 そう言って梨花亭を出て、ギルドに向かう。

 受付のミイナを見付けると、


 「ミイナさん。緊急だ。ギルマスに報告したい。即刻ゴブリン討伐依頼を止めてほしい。マインが大怪我をした。今は処置を行い命に別状はないが、重体で安静にしている。」

 「そんなっ!直ぐに確認致します。」


 そう言うとミイナさんは後ろに向かい、何かの魔法道具に向かって話始める。

 何かの緊急用連絡装置なのか。

 その魔法道具から「通せ。」の声が返ってくる。


 「ひゅうごさん、どうぞギルマスがお会いになるそうです。2階へ。」

 ミイナさんの案内でギルマスの部屋に案内される。


 「失礼します。どうぞ。」

 「ああ。」

 「ひゅうご、緊急だって?」

 「ああ。」

 「ミイナ降りてゴブリン依頼取り下げとけっ。」

 「は、はい。失礼します。」


 「それで?ひゅうご、何があった?」

 「あの森に恐らくゴブリンの上位種が生まれてる。それと結構な規模の集落、村が作られてると思う。」

 「その言い方だと見た訳じゃないんだな。どうしてそう思う?」


 「あいつらが訓練された動きをしているからだ。必ずファイブマンセルを取っていて、強敵が現れると集団戦に切り替えてくるんだ。」

 「ふぁ、ふぁいばん・・・?」

 「あぁ、悪い。5匹で1つのグループで行動していて、1,2グループが攻撃されると、何かの連絡方法を使って、その攻撃者に即座に複数組み集まって対応してくるんだ。」


 「それでお前たちのメンバーがやられたと?」

 「そうだ。俺だけ別行動していて、二人が3組目と遭遇した所で、周りにいた5匹ずつのグループが一度に5,6組集まってきて囲まれたんだ。俺が追い付いた時にはもう二人は騒然としていた。」


 「ゴブリンにそんな事が出来ると?」

 「ああ、俺は見たからな。これは弱者が強者に対する戦法で、一定人数の斥候をいくつか配置し、どこかの斥候がやられたら、散っていた斥候グループが集まって対応するんだ。」


 「ほほぉ、詳しいな。」

 「それにこれは今回だけじゃないんだ。」


 「というと?」

 「俺はこの街に来る前、森で大きな黒猫と住んでたと前に話したが、その黒猫と出会うきっかけも、そいつがその森で30匹位のゴブリンに囲まれ瀕死の怪我を負った所を、たまたま通りかかった俺が助けたことからなんだ。」


  「それで?」

 「ああ、その後回復した黒猫が、実は俺なんか足元にも及ばない程強かったんだ。それでどうしてゴブリンごときにって、いくら数がいようともおかしいなと思ってたところだったんだ。」

 「そういうことか。」


 「まだある。先程の斥候が集まって対応すると言ったが、斥候が集まっても対応出来ない場合、本隊が出てくる。」

 「え!?本隊?」

 「そうだ。十中八九、どこかにゴブリンの大部隊がいると思って間違いない。この戦法は本隊ありきの戦法だ。そしてその本隊は恐らく森の西にあると。」


 「それはどうしてだ?」

 「俺は黒猫と森の南、海まで辺りと、湖がある東の森で活動していたからだ。一度もその辺りではゴブリンに遭遇していないからだ。」


 「そうなのか。」

 「ああ。それとこれが一番大事なのだが、」

 「あぁっ?まだあんのかっ?」

 「ああ、聞け、これらの戦法に一番欠かせないのが、連絡方法だ。」

 「ほほぅ。」


 「先程マイン達がやられた時、あいつらは一切の迷いなく二人に向かって行ってたんだ。しかも俺は何の音も声も聴いていない。何か念話に近い連絡手段を持っている筈だ。それで、それらを扱えるようになったきっかけ、そいつらを訓練した奴の存在、その両方から上位種が確実にいると思って間違いない。」


 「ううぅ、ゴブリンの上位種に村、大軍隊だと?何をどこから・・・とにかく人を集めて、と同時に情報だな。西かぁ。なあ、ひゅうご、西の村がどの辺りにあるのか偵察隊を送るとしたらどの位危険だ?」

 「かなり危険だ。簡単に囲まれるからな。囲まれてもいいように10人以上のグループにしたら、今度は簡単に本隊を呼ばれてしまうだろう。」


 「そっかぁ、あぁ、その為の戦法だからなぁ。ゴブリンの癖に厄介な!」

 「逆に俺一人の方が安全に探してこれるかもだ。」

 「な、何っ!?」


 「俺は索敵の範囲が1km位あるし、身隠しという相手に見つかり難い魔法を使える。ただ場所を探るだけなら、俺の知る限り一番の適任者だな。」


 そりゃそうだろう。

 知っている人間自体がほんの数人だからな。


 「た、頼めるか?そんなに危険なのに?ちゃんと報酬は出すぞ?」

 「そりゃあ助かるが、俺も見つかったら逃げ出す位しか出来ないから、成功報酬で頼む。」


 「いや、危険手当だ。依頼と成功報酬は別で出す。是非頼む。」

 「ならそれで大丈夫だ。それとマイン達が襲われたゴブリンをそのまま回収しているんだが、解体がまだなんだ。どこか解体出来る場所と、死体を処分する方法を教えてくれないか?」


 「全部回収?逆にそのまま確認したい位だ。そのままってそのまま回収してあるのか?」

 「ああ、そう言ったろ。」

 「そ、そうか、それなら出してほしい場所がある。付いて来てほしい。」

 「ああ。」


 俺はギルマスに付いて行き、受付に向かう階段とは別の階段で下の階に降りる。

 降りた先は、ギルドのいつもの部屋の裏側にあたる部屋だ。

 部屋というか、広い土間。広い部屋の壁際には沢山の魔物の肉が吊るしてある。

 所々に大きな机?作業台?がある。


 「ここは大物の解体場だ。ここでならゴブリン程度何体でも出して貰っていいぞ。」

 「この作業台の上に出した方がいいか?」

 「いや、ゴブリンは食用にならないから、全てこの辺りの地面にだ。」

 「そうか、なら遠慮なく。」


 俺は大き目の黒穴出を作り出し、先程、マインの落とした杖や短剣を拾うのと合わせ、その辺に転がっているゴブリンの死体を全て回収してあり、その中のゴブリンの死体とそいつの持ってた武器も合わせて一度にこの部屋に出す。


 「どさどさどさどさどさどさどさっ!」

 濃い緑の肌をした、泥や血や垢に汚れたゴブリンの死体が、山になる。


 「おおおぉ、凄いな。まあ、これらはこちらで確認作業に使わせて貰う。解体費はいらないぞ。ゴブリン村の探索依頼ついでだ。」


 「そういうことなら、それで頼む。」

 「これからこれらの確認をして、当初のゴブリン依頼の計算し、加えて今回の情報提供料も計算する予定だ。実際の支払いはもう少し待って貰えるか?」


 「ああ、構わない。では、マインの様子を見に行き、ハーデンに状況説明したら、早速西の森のゴブリン村捜索任務をしてくる。」

 「そうか。早いのは助かる。それでお願いする。南門には緊急案件の依頼を出した事を伝えておく。」

 「そんな事が出来るんだな?それは助かる。今日の門番はダンだったから心配掛けさせたくないからな。」


 「おう。それは任せておけ。これで全部なんだな?装備も全てだな?助かる。ゴブリンアークメイジの存在も確認したいからな。」

 「アークメイジ?それは何だ?」

 「あぁ、ひゅうごは知らないか?ゴブリンメイジの上位種だ。」

 「そ、そんなのがいるんか?」

 「ああ。アークメイジになると、闇魔法を使うからな、厄介なんだ。」

 「やっ?闇魔法!?」


 「そうか?ひゅうごも闇魔法使いと言ってたか?なら分かるだろ?とにかく厄介なんだ。攻撃回避に魔法回避、行動不能に更に上位になると眠らせの魔法を使う者もいる。」

 「それはどうやって見分けるんだ?」

 「そこが厄介なんだ。大抵のモノは装備が違ってくる。」

 「大抵の?」

 「そうだ。そこからなんだ。分かり易いモノは杖が少し高級な物になってたりする。少し分かり難いのが指輪やネックレスに魔力を高める為の魔術具を持ってたりする。そこに、狩ってきた冒険者の証言を確認して判断する。」

 「そうか。それは大変だな。」


 「ああ、だが装備品では確認出来なかったが、証言からは明らかにアークメイジだったと判断した例も無くはない。この事は口外禁止情報だがな。ひゅうごだから話しておくが、内密にしておいてくれ。」

 「あぁ。約束する。」


 俺は砦の様に真実かどうかを確認する術がここにもあるんだろうなと思った。

 「貴重な情報に感謝する。では急ぐ故これにて。」

 そう言って俺は梨花亭に向かって駆ける。


 「ハーデン!マインの様子はどうだ?」

 「あっ師匠!先程と一緒だ。変わりはない。汗も引いて呼吸も落ち着いている。が、目を覚ます様子は全然ない・・・。」


 「そうか。良く診ていてくれたようで感謝する。しかも報告も的確で分かり易い。助かる。」

 「そ、そんな。お、俺は迷惑かけてばかりで・・・。」

 「迷惑なんてない。あれは俺の落ち度だ。あいつらの連携がいち冒険者パーティーを上回ってただけの話だ。これはこの街始まって以来の出来事だそうだ。お前が気を落とす様なことではない。」


 「そ、そうなのか?」

 「ああ、そうだ。分かったなら俺の部屋に行って風呂に入って休んでくれ。今日は寝落ち訓練はしなくていいぞ。」

 なんとかハーデンを落ち着かせる事には成功したみたいだ。


 「それと、お前にも癒しをだ。」

 「神よ。俺の祈りを聞き給え、このハーデンに体の癒しの祝福を与え賜え。」

 すると先程と同じようにハーデンの体を包むように金色の輝きが発せられ、ふわっと消えていった。


 「あ、あぁ、体が急に軽くなった!ありがとう師匠!」

 「この位どうってこともない。それより急いでマインに確実な処置をしておきたいんだ。お前は俺の部屋に行っててくれないか。」

 「ああ、分かった。」


 俺はマインの部屋の鍵を掛けると、部屋の中に黒穴出と黒穴引を作る。

 「うぅ、魔力が厳しい。」

 だが急ぎで祠に向かいたい。

 俺はマインを抱え黒穴出で祠に向かう。


 「ヒョウ!突然すまん。この子が会わせたかった娘だ。だが今重体でな。この祠の力を借りたい。いいか?」

 「くぅうん。」

 「助かる。それと急ぎ終わらせないといけない仕事が出来た。直ぐに戻らなきゃならない。この娘、マインをお願いしてもいいか?」

 「くぅうん。」

 「悪いな。なるべく早く戻れるように努力する。」


 俺は急いでマインの部屋にもどる。

 そして即座に二つの黒穴を閉じる。

 「結構魔力を使ったな。でも斥候位ならまだ大丈夫だ。いざとなったらMPドレインで乗り切るしかない。」

 そう独り言を残し、急いで南門に向かう。


 「おぉっひゅうご!マインは落ち着いたみたいだな。それと、独りで捜索なんて大丈夫なのか?俺が付いて行こうか?」

 「気持ちだけで助かる。だが隠れて走るのは闇魔法の得意分野なんだ。お前も一部は見たろ?」

 「あぁ。そういうことなら。でも十分気を付けろよ。無理せず何かあったら直ぐに戻れよ。」

 「心配に感謝する。行ってくる!」

 「ここで待ってるからな!」


 俺は振り向かず身隠しを纏い、索敵を行いながら影移動で西の森へ駆ける。


 相変わらず手前の森には5匹1組で全部で10組のゴブリンが感じ取れる。

 斥候部隊といった所か。

 そのまま西の奥へ集落か村が無いか確認に向かう。

 とそこで。


 「あれは何だ?」


 西の奥の森に続く辺りに、全く移動しない1組があり、その他と変わらず5匹1組の中に1匹だけ明らかに灰色の髪を赤黒く染め上げているものがいる。

 その配置とその動きから、この斥候部隊のリーダーであろう。

 俺は気付かれない様に更に奥へ進む。


 「見つけたっ!この先にゴブリンの集団の反応!」


 予想通りの集落を発見し、俺はその規模を確認するべく、索敵の範囲1kmで全てを把握できる距離まで近づこうと試みる。と、

 「な、なんだこれはっ?」


 俺が進んだ先は森の切れ目、湖から西に流れる川の麓。

 その川には跳ね上げ式の橋が架かっており、その先には木造の砦があった。

 その砦の高さは3m程あり、所々に見張り台もある。

 多数のゴブリンの反応はその砦の中からだった。


 「ゴブリンがこんな要塞を作っているとは!?」

 とても緻密に作られている。立地は一方が川でその川は跳ね上げ橋を通らないと入れない。

 他三方は草原で近付く前に見張り台から丸見えだ。


 俺は中の様子をどうしても調べたい。

 総勢何匹いるのか。ゴブリンの上位種は何匹位いるのか。

 その強さ、大きさは。

 俺は索敵の範囲にぎりぎり入れられる程の、近くて高くて葉が生い茂った木を探す。

 1本だけあった。あの茂りようなら視認はされにくいだろう。その木まで向かいゆっくりと登る。


 「これが罠とかは流石にないよな。」


 流石に1kmの索敵能力や、1km先の遠視能力を考えて、この木に登るものを遠視が出来るものに見張らせるとか。

 そう自分で考えて尻込みしそうになるが、そうなったらなったで全速で逃げよう。

 そう決めて、砦の中が見える高さまで一気に登った。


 「うわっマジかっ!?」


 砦の中は完全に要塞の様なつくりになっている。

 それぞれの建物が迷路になるように配置されており、中心よりややこちらからは奥、少し平原寄りに一番守りの高い建物があり、それを守る様に配置されている。

 見張り台には予備の武器庫が併設されており、弓矢や投石が大量に用意されていることが分かる。


 索敵と合わせてみると、ゴブリンは200体位、それより大きく人間位の大きさのホブゴブリン(自称)が100体位、中にはメスもいるようだが、それぞれが戦闘体型だと分かる。

 その他に更に大きい種、2m前後の者、ゴブリンジェネラル(自称)が4体中央の建物の周りに配置されている。

 その内2体の詳細が見えたが、体格が大きく違っており、1匹はとても重量感があり、片手でかなりの重量の金属武器、恐らく斧を所持している。

 そしてもう1匹は引き締まってはいるがやせ型で、凄く長い弓を携えている。

 そして中央の建物に座っているものは立ったらおそらく3mにはなるであろうゴブリンキング(自称)だ。

 そしてゴブリンにもホブゴブリンにも外と同じく50匹に1匹の程度で赤黒髪の個体がいる。ただここから眺めているだけでは、どこから攻めれば崩せそうかなど全く思いつかない。


 「こりゃぁ早めに戻って報告・相談だな。」

 俺は勿論この木から降りて、街に戻るのに魔物に出会わない方向を考える。

 意外と川沿いの最短距離で街に戻れそうだ。


 「ん?」

 自分自身でフラグを立てて、それを回収。

 とかではなさそうな事に安心した。


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