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逃飛行  作者: 三浦央
第一章 彼との出会い
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第五話 外側と内側

私が、彼に持たされたのはパンのかけらが詰まった袋だった。

「さあこれを彼らにあげるんだ。」

「皆さんこの人を紹介するよ。この人は私と一緒に食べ物を与える人だ。」

「おぉぉ君のような救世主がもう一人いたのか」

「ありがたや。ありがたや。」

私は彼らの異臭とみすぼらしさに、顔をしかめた。

だが、すぐさま彼は不快そうな表情をわたしにみせつけた。

私はパンのかけらが詰まった袋を彼らに与えた。

すると、彼はこう言った。

「技術が発達しても、こういう人たちをわざと外側に放置するなんて、最悪だろ。ごめんな、こんな世界で。」

彼は憐れむような、申し訳ないような顔をした。

私は、パンクズを、犬のようにむさぼる姿を見て、この世界への評価を180°変えた。

「さあ、行こうか」

彼は、ゆっくりと、街の方角をわざと見ないように歩き出し、ドローンを展開した。

また、彼はドアを完全自動で開けた。

「ただいま」

「おかえり」

あの人はお母さんらしき人だろうか。

「今日のご飯は、人手が増えた記念で、ガルバ肉の焼肉をあげるわねー」

食卓にはすでに焼肉が並べられていた。

すると、彼はお母さんが、目を離した隙に机に置いてある肉を何枚か盗んだ。

私はその光景を非常に称賛した。

やがて、焼肉パーティが開催された。

そういえば、父がいないということが気になった。

しかし、そう言った質問は、いつの世界でもモラル違反なのでやめておこう。

「やっぱり、原始的にフライパンで焼くのはうまいな」

フライパンが原始的?と、思ったが、この程度で驚くのはやめることにしよう。

「ええ。いまの装置だと、焼くのは早いけど、あまり火力がでないものね。」

「さあ、あなたもお食べ」

せっかくだから頂戴することにする。

ガルバ肉という見たことない名前の肉だ。

口でかみきり、味わう。

あまり、美味しくはないとは言わないが、何か物足りなかった。たぶん、前の世界にあった、牛と呼ばれるようなものの方が、油が乗っていて美味しかった気がする。

私はできるだけ美味しそうに見せるよう、口元だけ、あげることにした。

すると、彼が、私のことを見透かしたような目で見てきた。

私は、その顔が面白かったので、自然と笑みが溢れてきた。

すると、お母さんが、

「あれ、これは何かしら。とつぶやいた。」

そして、お母さんの形相が、みるみる恐ろしくなり、もう見てられないようになった。

彼は、私を寝室へ誘導するように、指で刺した。

私はもうこの現場にはいられないと思ったので、彼のいうままに、寝室に駆け込み、鍵を閉めた。

すると、壁の外から何か、叩く音が聞こえてきた。

彼が、何で怒られているかは、容易に想像できる。

しかし、彼はそれでへこたれないでほしかった。

彼には頑張って彼らを助けて、この世界を変えてほしいから。

私は歯磨きもせずに、耳と目を閉じて布団を被った。

多分夢には、彼らと、それを放置する恐ろしい世界の話がでてくるだろう。

しかし、私は決して逃げない。

彼がいる限り…


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