プロローグ2
鞭打ち室に入ると、叔母さんが
「逃げたい」「逃げたい」「逃げたい」と何度も何度も繰り返していた。その様子は海の中で無謀な助けを呼ぶようであった。それをみてどうしようもない恐怖を感じた。
「は、早く鞭打ち始めてよ」
「そう、早くなんて珍しいわね。ジン。今日は機嫌が悪いから強めでいくわね。」
さっきまでの殺気はどこいったのだろうと思い、不思議に感じた。そして、恐怖を感じることはないと思った。
しかし、鞭打ちが始まると、叔母さんは気が狂ったように叫んだ。「あんたのせいよ。私が不幸になったのは」「あんたのせいよ、ほんとに、」「あんたのせいよ」
いつもより、数倍も痛く鞭打ちをされたが、そんなことは半ばどうでもよく、負け犬のとうぼえのように、叫ぶおばさんの姿が、どうしようもないぐらい見苦しくここから、逃げたいくらいであった。
そして、叔母さんは衝撃の告白を告げた。
「あんたのせいよ、夫と別の女との子供のあんたのせいよ」
バシッッ
鞭打ちの傷と、心の傷がいまリンクした。
いままでうけた、仕打ちが、パズルのようにはまっていく。
そして、一つの結論に至った。
私は地獄に生まれていた。
だから逃げようと思った。決してこのことを思い出すことのないよう。
「叔母さん。ごめんね。」
わたしは、そばにおいてあった、鞭を振り回し、叔母さんに叩きつけた。
そして、外にでて、そばに置いてあった馬にのった。
私は、決して、決して後ろを振り返ることはなかった。
秋の夜中に、ただ馬が走る音だけがひびく。
「こら、何をしているんだ。」
まずい。警察がやってきた。まあ逃げることは、規約違反だから当たり前だけど。
真夜中に、2頭の馬の走る音が、颯爽と響く。
そして、私はポータルにはいることに成功した。
ここまで来れば、いったんはまけた。
もうこの街に帰ることはないだろう。
そして、私は永遠に警察に追われることになる。
ここから人生の逃飛行のはじまりだ。
私は、早速、次の目的地に入った。
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