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プロローグ
私はあの街に負けた。
あの時の私は何も知らなかった。
街で鞭打ちを受けていた方がまだマシだと思えるような悲劇と喪失にたくさん出会った。
しかし、あの時のわたしは鞭打ちが怖かったのだろう。
逃げ出してしまったのは鈴虫が鳴くような秋の夜で逃げるのには絶好の夜だった。
「あ」
鈍い音がした。
「ジン、なにやってるの。」
ああ、またやってしまった。
今回で皿を割るのは5回目だ。
「はーい鞭打ち100回」
「おじさん、鞭打ちは昨日やったから、やめてくださいよ」
「何を言っているんだ。君はこの家に雇われている身だ。上下関係を考えればわかるだろ??」
「わたしの権力があれば君をこうすることができる」
おじさんは、首を切るポーズをした。
「女房、口答えぶん鞭打ち100回追加で」
わたしは鞭打ち室につれてかれた。