第25話「Time starts moving」
下を向いていた私達は近づいてきた足音の方を向くと……
そこには時雨が立っていた。
「お前!生きていたのか!?」
天堂と剛、周りで話していた人達も注目を集める。
天堂は刀を抜き、首元スレスレに近づける…が、そこであることに気づく…
(身体の3割が……消滅している…あれじゃあもう…)
時雨は喋ることなく、ハァハァと荒い息づかいでゆっくりとゆっくりと一歩ずつ歩いて、やがて刀夜の前に座る。
私達は見守るだけだった。なぜならその傷を見ればもう抵抗することが出来ないのは明らかに分かっていたからだ。
「なんで……お前は僕の手を……掴んで…くれたんだ?」
そしてふっと微笑み、手を刀夜に近づけながら言う。
「こんな……ぼくを…助けようと………してくれ…たのか?」
(明らかに先程と性格が違う…まるで操られていたみたいに……)
私はそう感じる。
時雨は右手に微かな時の能力を纏い…刀夜に当てる。
そこで時雨は倒れてしまう。
(僕が脱落したあの日から僕の時間は止まっていた……そして、操られたように身体は動き、僕の意識は止まっていた。そして君が助けようとしてくれた時、やっと僕の止まっていた”時間”は動き出した気がするんだ……。ありがとう………)
(!?)
みるみる刀夜の傷は治って、顔色が良くなっていく。
まるで時が戻ったかのように。
だが…時雨は動かなくなってしまう。
その場の雰囲気は暗くなる。たとえこの異変を起こした人の一人でも…裏切られてしまった者の悲しい最後だった。そして第10位の名に恥じない最後だった…。
私は思わずその場から目をそらす。
そして気づけばそこに時雨は居なかった……。
学校敷地内ではないある場所…
「暴走することまで予想したうえで彼をあの場に置いていくことを命じたのですか?」
智美は白いフードの人に聞く。
「……どうかな?」
そう言いながら時雨の遺体を土に埋める。
「十分すぎるほど役に立ってくれた…安らかにお休み……」
そうして白いフードの人は上を見上げる。
その時フードから少し顔が見える…
「君にもう一度会える日を楽しみにしているよ…刀夜…」
その顔は……紛れもない…”津野蓮”の姿だった。
「この後はどのように?」
津野蓮は笑い
「もちろん………」
そして何かを言い終える。
俺が目を覚ましたのはまだ少しボロボロの保健室のベッドだった。
俺は頭を抑えながら起き上がる…。
「生きてる…?」
俺はあの質量のエネルギーにのみこまれる直前に「冬眠冬華」を使ったあとから記憶が無い……
俺は何とか壁を使いながら歩き、窓を見ると…生徒たちと教師達、修正班が学校の修復をしている。
剛と下城は俺に気づくと作業を止め、こちらに向かってくる。
「起きたんだ!」
「まだ安静にしてろよ?」
そう言った声を掛けてくれる。
「ありがとう……なぁ…俺はなんで助かったんだ?」
どう考えても生き残れないような ”あれ”を食らってなぜ生きているのか…気になったので聞いてみると…
二人は暗い顔をした。二人は何も喋らない。
「………時雨がお前を助けたんだ…」
後ろから声がしてそちらを向くと天堂が立っている。
「時雨が…?」
俺が聞くと
「そうだ…」
と天堂は即答する。
(なんで時雨が…しかも生きていたのか?でも、時の能力で治療をしてくれたのなら納得がいく。)
ところでその時雨は…?と聞こうと思ったが…剛と下城の雰囲気で俺は察し何も聞かないことにする。
「すまなかったな…第1位のくせに俺は何も出来なくてお前に重たい役をやらせて。」
天堂はそう言ってくる。
俺は天堂に一言、微笑みながらこうとだけ言う。
「これは”貸し”だからな?」
その言葉に天堂はふっと笑う。
「ああ、必ず返す…」
改めてこの異変は解決した。
幸い毒ガスでの死者数は0名…だが、
最初の試験での脱落者と最後の”クロノス”の技…
教師や生徒を合わせて、死者数、行方不明者数合わせて”125名”に及ぶ…。
生き残った生徒数は150名…。
刀夜の現在の順位は94位




