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高いところは




 「最後はやっぱり?」


 休憩後歩き疲れることもなく、テーマパークを可能な限り遊んだ俺たちは、残り時間ですることはもう決められているようだった。それを碧が誘導するよう聞いた。それに答えるのは莉織だ。


 「もう向かってるから観覧車一択よ」


 「はい、クソ野郎」


 分かっていたから口悪くなるのも当然の流れ。


 「始まりはジップライン。終わりは観覧車。高所恐怖症イジメツアーでもしているのか?」


 「そんな悪人じゃないわ。普通に乗りたくて最後に相応しいから乗るのよ」


 「ジップラインとジェットコースターに比べて怖さは減ってると思うので、多分乗り越えた2人共にそんなに苦しい話でもないと思いますよ」


 「まぁ、乗るけどね?」


 ここに来て乗らないとか言えたなら、その時はこのメンバーの中に加わってない。それに乗らない選択肢を莉織と結が与えるはずもないので、ここに居る時点で乗る以外に未来はない。


 「そうなったら気になること出てくるよな。ジェットコースターぶりの」


 ジェットコースターを乗り終えてからは、室内のアトラクションに切り替えて遊び、そこに横に何人とかの人数制限がないのを選んだ。だからここに来て蘇る最も面倒な問題。


 「それは杞憂よ。しっかり6人乗りだから」


 「あのデカさだとそうだよね。安心安心」


 「15分くらいってとこだな。それだけ高所に耐えないといけないが……何とかなるか」


 最後に揉めることもないようで何よりだ。


 「待ち時間はどのくらいですか?」


 「20分よ」


 「さっき最大50分とか言ってたけど、やっぱり少なくなるんだな」


 他のアトラクションを乗り終えて、莉織から観覧車について提案された時はそうだった。でも子連れも老人も少なくなったように感じる今、18時というのは若過ぎても歳を取り過ぎても酷な時間帯なのだろうということは理解した。


 「それじゃ行こうか。最後にこのギリギリの夕陽を見て帰ろう!」


 すっかり元気になった碧。ライクマを持つことはなくなって、被り物も忘れずにつけている。元気が欠けない碧らしい姿を久しぶりに見た気がする。


 ということで、俺たちは観覧車へ向かった。並ぶ人たちが多く見えるのは、それだけ俺たちと似た考えを持っている人が居るということか。男女カップルが多く見えるのはどのアトラクションとも同じだな。


 並んで20分待ち、俺たちの順番になるとスムーズに乗る。莉織も焦ることなくマイペースにゆっくりと乗り、ここから15分くらいの旅が始まる。


 俺の隣に莉織。その前の席に千隼、結、碧が座っている。


 「これで終わりかぁ。早かったね」


 「最初はこんな地獄が続くのかと思ったが、それが楽しかったから良かった」


 「今日の悲鳴を聞けないと思うと残念です。また違うテーマパークに行って悲鳴を聞きたいですね」


 「なら恐怖エリアに行けばお前も一緒に叫べるぞ」


 「ふふっ。面白い冗談です」


 ニコッと。今日何回目だろうか。こんなにも笑顔の意味を否定するような笑顔を見たことがない。


 「頻繁に来ると人混みに頭をおかしくされそうだから、時々のペースがいいわね」


 「そうですね」


 人が多いとそれだけ混んで歩きにくくなることは、莉織にとっては危険が伴うことと同義だ。そして人混みが苦手な結も疲労が溜まりやすくなる。


 俺たちが居て意識を人混みから外したとしても、結局は体が反応するから抑制は無理。楽しくても頻繁に来ては薄れるだろうし、来ても半年に1回くらいがいいかもしれない。


 「莉織の部屋戻ったらすぐ寝そうだよ」


 「なら今寝るといいわ。1人で何周するか気になるし」


 「終わったら起こしてよ」


 「気分次第よ」


 ここの寝心地悪そうなので多分2周で起きるだろうな。


 「寝たら恐怖もなくなるので、いいんじゃないですか?私今からここでジャンプしたい気分ですし」


 「君はやはり頭がおかしい。どんな思考回路でジャンプしたくなるんだ?」


 「冗談ですよ。それと、頭がおかしいのは普段通りですよ」


 結が第一印象の時のままだったなら。そう考えることはもうなくなった。普通に碧と同等以上の変人なので、可愛いとか癒しの担当はもう千隼へと乗り移りを完了しようとしていた。


 「高所恐怖症で碧が大人しいと、結の非道が目立つよな。小学生の好奇心は無限大だから仕方ないんだろうけど」


 「碧さんを殴らなくなると私を殴り始める七生くんも結構酷いですよ」


 「元々七生に道徳心なんてないから奴隷なのよ」


 「理不尽な決めつけからの扱いの昇格は最高に悲しいな」


 付き人とから、いや、もう最初から下僕として始まった関係が、今日で奴隷へと昇格した。俺からしたら降格以外何と捉えればいいか分からないくらいの処遇だが、ジップラインでの一件から別に気にすることでもないと思い始めている俺も居る。


 「そんな奴隷のしょうもないことについて喋ってると、いつの間にかもう下見れないよ」


 「確かにそうだな。私も見れない」


 「いや、否定しろよ」


 千隼にも見捨てられるくらいの扱い。この4人の中で俺は何でも言うことを聞いて、何を言っても怒らない都合のいいサンドバッグと思っているのか。もしこんな美少女たちに触れられることの代償として、その扱いをされるとしたら、もう触れられたいと思わないのでサンドバッグを解放してと懇願したいものだ。

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