息子が消えた日
15歳の春、息子が消えた。
息子は中学を卒業した後、高校へ進学しなかった。
中学一年から始まった凄まじい反抗期。
初めて「死ね」と言われた時、
初めての家出、
本当に苦しい3年間だった。
息子は私や夫と話すことさえ拒み、進学しないことも担任から聞かされた。
中学2年生から不登校になり、私は毎朝学校に電話をかけた。
「すみません、今日も起きれないみたいで…。」
学校が大好きな子だった。
友達もたくさんいた。
ほとんど部屋から出てこない、そんな日々が続いたけど、
ある日私が体調を崩し、
「私がいなくなったらどうなるんだろう…」
不安が頭の中をぐるぐる回る。
たまたま、寝ている私のそばを息子が通った。
私の気持ちを素直に伝えた。
「あなたはね、」
「あなたはなんだってできる。」
「お母さんにないものをたくさん持ってる。」
「この先どんなことがあっても、」
「お母さんは味方だよ。」
息子は黙って聞き、立ち去った。
翌朝、息子は制服を着て部屋から出てきた。
そして数カ月ぶりに学校へ行った。
あの時私は、自分がいなくなる前につたえなければ、と必死だった。
結局、その次の日は学校へ行けなかった。
それでも嬉しかった。
3年生になって、少しずつ登校する日が増えていった。
学校では居眠りをしたり、テストをわざと白紙で出したり、問題行動ばかりだった。
それでも、朝学校へ行く、それだけでよかった。
夕方家に帰ってくる、当たり前が幸せだった。
相変わらず会話はなかった。
ただ、中学を卒業したら就職するんだろうな、とは思っていた。
中学を卒業して2週間後のある日、
玄関のドアが閉まる音がした。
息子の靴がなかった。
「コンビニにでも行ったのかな」
そう思っていた。
しばらくすると、ママ友から一通のメールが届いた。
『息子くん、東京へ出発したのねー。』
『うちの子、駅まで見送りに行ったみたいよ。』
「え…」
慌てて息子の部屋へ行く。
いつもと変わらない。
そして息子は消えてしまった。




