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第32話 フードの男

「か、か、か、か、か、川を作るとは! キ、キ、キ、キサマ! ちょっとはやるようだな」


 僕らはリーナを王都へ送り届ける道中にて、謎の暗殺剣士5人に囲まれていた。正確に言うと現在は2人だ。3人はさきほど僕の発動した【水分創成】の水流により流されてしまったらしい。


 弓の暗殺剣士なるなんとかさんが、警戒したのか後方に飛びのきつつ僕と距離を取った。


「ふう、ようやく視界が全快したぞ。これで存分に戦える!」


「ぐっ、まだ全力ではなかったとうのか…だが、調子づくのもここまでだ! 弓の暗殺剣最大奥義であの世にいくがよい!」


 弓の剣士がスキルを発動したようで、かれの手に弓のような獲物と1本の剣が具現化する。


「弓の暗殺剣! 最大奥義! 剣の乱れうち!」


 弓の剣士は弓らしき得物に剣をつがえて、僕に連続で放ってきた。


『ええ~? 弓矢でよくない!?』


 エレニア(スキルプレート)の突っ込みはおいとくとして、なかなかに強力な攻撃力だ。しかもスキルの力なのか剣が次々と具現化しているので弾切れも無さそうだ。


「【風力創成】速力アップ!」


 僕は風をまとって高速移動しながら、連射されてくる剣をかわす。かわしつつ、相手の間合いにズンズン踏み込んでいく。


「くそ! なにをやっているグズ弟が! さっさと援護しろ!」


 弓の剣士が後方にいた木の剣士に怒鳴り声をあげる。この2人は兄弟らしいな。


「わ、わかったよ兄貴。き、木の暗殺剣! 最大奥義! 高速素振り!」


 グズ弟と怒鳴られた木の剣士は、持っていた木刀を高速で素振りしながら近づいてくる。


『素振り? どういうこと? 練習? 頭おかしいの?』


 そうとも言えないぞ、エレニアさん。これは非常に合理的な攻撃方法かもしれない。なぜらなら素振りは全ての剣の基本だからだ。

 今までボクトンが打ち込んだ回数がよくわかる。それほどボクトンの打ち込みはキレイだった。そしてボクトンは一気に間合いを詰めてくる。


『ま、マキアス様、まさか惚れ惚れしているのではないですよね…』


「いや、あの打ち込みは一朝一夕ではできない…じゃなくて! もちろん見惚れてなんかいないよ!」 


「マキアスが見惚れるのは私だけでいいでしょ!」


 何故かリーナも会話に混ざってくる、しかし―――


「素振りに関しては、僕も毎日欠かしてないからね! 【風力創成】風力を剣にも付与! マキアス流【風速素振り】!」


「うぉおおおおおおおおおおおお」


 僕の素振り速度がどんどん加速していく。


 まだまだいけそうだぞ! 


 はやく! 


 もっとはやく!


「な、なんだこりゃ~。剣先がまったくみえねぇ~はやすぎる! ふんが~息ができねぇ~~~~~」


 まだまだ!


 もっともっとはやく!


「あ、兄貴~僕の素振りよりぜんぜん早いよ! ぐふ~~~~~~」


『マキアス様! もう終わりです! 2人とも気絶してますよ!』


「え? そ、そう…なんで?」


 僕の足元には、暗殺剣士2人が泡を吹いて地面に転がっていた。


『えっと、マキアス様の素振りが早すぎて、周辺の空気がすべて吹き飛んでしまったようですよ』


 そ、そうなんだ。素振りをすると息ができなくなるのか。これは知らなかった。気を付けよう。


「マキアス毎日時間があれば素振りしてるものね。それに素振りするマキアスもカッコいいわ!」


「う、うん…ありがとうリーナ」


 なんかよくわからないが、褒められたようだ。毎日見てくれていたのか…ちょっと恥ずかしくもあり、嬉しくもある。


 暗殺剣士軍団とやらは全滅した。目をこすって素振りしただけのような気もするが、深く考えないでおこう。僕らが馬車に戻ろうとすると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「ふう、やはりこうなりましたか。わたしも同行して正解でしたね」


「誰だ!?」


 僕が叫んだと同時に目の前の空間がゆらゆらと歪み始めて、フードを被った男が現れた。


「やれやれ、なんですかこの情けない暗殺者たちは? この実力であの高額な依頼料ですか、可哀そうな雇い主殿だ。彼はまったくもって人を見る目がありあませんねぇ」


 フードの男は足元で泡を吹いている暗殺剣士2人をみて、肩を竦めた。


『たしかに、雇い主の顔がみたいわね。どんだけアホなのかしら…ところであなた何者? 暗殺剣士とは違うようだけど』


 エレニアの問いかけに、フードの男が少し顔を上げて僕の方を向く。フードで顔がほとんど見えないうえに、殺気を感じ取れない。

 なんだろう? 気配がない感じだ。


「なるほどその声、スキルプレートに宿るとは考えましたね。どうりで大戦以来あなたを発見できないわけだ」


『まさか…あなた…』


「エレニア? 知っている人なのか?」


『マキアス様…いま最も出会いたくない人かもしれません』


「これは嫌われましたねぇ。ですがターゲットの第三王女リリローナ姫に【万物創成コード】のスキル持ち、そしてあの忌々しい女神までいるとは。ある意味うれしい誤算ですよ」


 メガミ? 何を言ってるんだこの男? 意味がわからないぞ。


「え? 女神ってなによ?」


 リーナも疑問の声を発した。僕と同じくこの男の言葉の意味がわからないようだ。


「ああ、第三王女さま、あなたは何も知る必要はないのでご安心ください。この場ですぐに消えてもらいますからぇ、ふふ」


 フードからわずかに見える口から淡々とした冷たい声が聞こえてきた。


「何言ってるの! あんたなんかマキアスがやっつけちゃうわよ! マキアスの剣技とスキルは凄いんだから!」


「ええもちろん知ってますよ、その忌々しいスキルの恐ろしさはねぇ。さておしゃべりはこのぐらいにしましょう。さっさと死んでもらいますよ―――遮蔽解除!」


 フードの男が現れたように、再び空間に歪みが発生したと思えば、なんとも形容しがたい物体が出現した。しかも2体。


「な、なんだこれ! 人形!?」


 なんとも奇妙な物体に僕は思わず叫んでしまった。金属の筒と箱が幾重にも重なった物体で、人の形をしている。こんな魔物はみたことがないぞ。


「リーナには指一本触れさせないぞ! 僕はどんな魔物でもひるまない!」


 僕は抜刀して、臨戦態勢を取った。


「ははは、何を言ってるんです? あなたたちは全滅ですよ、この機械兵をみて生き残れるなんて思わないことですね」


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