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第26話 王女、カラスの巣で変な奴(ソクア)にドン引きする

 僕らは港町リマンから出航した船に乗っている。

 一度はあきらめた海路であったが、港を封鎖していた怪物アイランドタートルを退けたことにより、船の出航が可能になったのだ。


「ふあ~甲板は気持ちいいね、リーナは無理しなくていいんだよ」


「そ、そうねマキアス…、でもぜったい…マキアスと甲板に出るてきめて…たから…もっとロマンチックな感じを期待していたのに…うう…」


 リーナはその綺麗な顔を真っ青にして、辛そうに俯いている。そして何故か僕に抱き着いてきたので、やさしく彼女の身体を支えている。


『な、なんですかリーナ…酔ったふりしてマキアス様に…抱き着いてるんじゃないの…わたし…船は好きなのとか言ってた…くせに…うう…』


 エレニア(スキルプレート)がリーナにからんでいるが、いつもの精彩を欠いている。


 そう、2人そろって仲良く船酔いの真っ最中だった。


『マキアス様…平気なんですね。さきほどは食事もしてたし…さすがは私のマキアス様…』


 エレニアが言っている食事とは、僕は宿屋の孫娘さんが渡してくれたマキアスサンドなるものである。マキアスサンドはマキアス弁当に比べて軽く食事を済ますのに向いている。その恥ずかしすぎるネーミングについてはもう何を言っても聞いてくれなかったので、突っ込まないことにした。


「ああ、僕は大丈夫だから。2人とも波を見ない方がいいよ」


 まあリーナはわかるとして、スキルプレートって船酔いするものなんだろうか? そんなことを考えていると、船内が急に騒がしくなり始めた。多数の大声が船内に響き渡る。


「リバークロウだ!!」

「海路の悪魔だ~!」

「武器を持てる者は応戦準備!」



 船の上空を大きなカラスがゆっくりと旋回している。


「リーナ! 後ろにさがって! 」


 僕は抜刀して、リバークロウの動きに神経を集中する。スキルの使用はかなり制限されるな。限定された船上での戦いとなると、船が損傷する可能性のある攻撃は極力避けなければならない。船が沈めば全員助からないだろう。


「ケァ~ケァ~!」


 リバークロウが船めがけて急降下してくる。甲板で武器を構えた水夫数人が応戦するも、鋭い爪と大きな羽により吹っ飛ばされた。衝撃で船体が軋んで、ギシギシといやな音が響く。


 僕も再び上空に飛び立つリバークロウに剣をふるうが、素早く上昇されて躱されてしまった。

 その後もリバークロウはヒット&アウェイを繰り返す。


「船長! これじゃあ船がもたねぇ!」


 1人の水夫が悲痛な叫びをあげた。

 これを繰り返されたらおそらく船自体が崩壊してしまう。


「エレニア! 次にリバークロウが急降下してきたら、【風力創成】であいつの真下に移動する!」


 こんな狭い空間で高速移動するのはリスクを伴うが、いまは自分を信じてやるしかない。


「きた! 【風力創成】速力アップ!」


 リバークロウが船の甲板に急降下するタイミングを見計らって、僕は高速移動する。


「よし! どんぴしゃ!」


 ギリギリで真下に移動することに成功したので、そのまま突撃してくるリバークロウの顔面に斬撃を放った。


「ケバァ~!!!」


 顔面に斬撃を受けたリバークロウは、左目を失いおびただしい血を振りまきつつ、そのまま体勢を崩して船の甲板後方に墜落した。


「よし! これで決めるぞ!」


 僕はとどめの一撃を入れるべく、力強く踏み込んでリバークロウの墜落地点へと駆け出す。


「キャアアア!」


 その時、聞き覚えのある悲鳴が甲板に響いた。


「り、リーナ!!」


 リーナはリバークロウの大きな後ろ足につかまれていた。彼女は衝撃で気を失ったのか、ぐったりとしている。リバークロウはその大きな翼を広げて飛び立っていく。

 そのまま海の彼方に飛び去って行く。


「戻ってこない! 巣に帰る気か! 隕石創成はリーナを巻き込むし…クソっどうしたら」


『マキアス様、とにかくリバークロウの巣に向かいましょう! 巣に持ち帰るということは、すぐには食べない可能性が高いですし。』


「そ、そうだね。わかったよエレニア」


 食べられてたまるもんか! 絶対に阻止する!


「巣に向かいたいのか?」


 振りむくと先ほど船長と呼ばれていた人が立っていた。彼は船から遠ざかりつつある巨大ガラスを指さしながら話を続けた。


「あのリバークロウは[海路の悪魔]と呼ばれていてな、少し先の無人島に巣があるらしいのだ。討伐隊を出しても誰も帰ってこないんで、俺たち船乗りの悩みの種なんだよ」


「船長さん! そのリバークロウの巣がある無人島に行けますか? というか行ってくれ! たのむ!」


「もちろんだよ、港を救った英雄の頼みを断れるかい! 野郎ども進路変更だ!」


 船長は親指をサムアップしてドヤ顔全開で言い放つ。


「おお! 英雄様がカラス退治をしてくださるぞ!」


「すげぇ! さすが英雄様! [海路の悪魔]まで退治してくれるなんて!」


「英雄マキアス! 英雄マキアス! 英雄マキアス!」


「あ、あの…英雄はいいので速くリバークロウの島に行ってください」


 英雄を連呼する異常にテンションが高くなった船は、リバークロウの巣であろう島にむけて船足を速めた。




 ◇◇◇




 ソクア(マキアスの兄)視点 


 無人島にある山の山頂にリバークロウの巣があった。

 巣といっても普通の鳥の巣よりはるかに大きい。


「ケァ~ケァ~!」


「ひぃ! また戻ってきやがった、化けガラス!」


 リバークロウはその巨体を巣におろすと、俺様の顔をべろべろと舐めてくる。


「ひぃ! なんなんだよ! おれはおしゃぶりじゃねぇ!」


 リバークロウは、ひとしきり俺様を舐めると満足したのか再び巣から飛び去っていった。


「ふぅ~なんとかここから逃げ出さねぇと、今のところよだれまみれになるだけだがいつ食われるかわからねぇしな、うん? この匂いは!?」


 くんくんくん


 これは!? 俺様の嗅覚にまちがいはねぇ。


 くんくんくんくんくん


「ん、んん…」


 巣の中央から、むくりと起き上がる銀髪の女性、その麗しい宝石のような青い瞳、これでもかというぐらいのでかい2つのふくらみ! ドレスではなく旅仕立ての服装だが俺さまにはビンビンに感じるぜ!


「おお! やはりリリローナ姫でしたか! 姫の匂いがしたものですから!」 


「え…匂いって…」


「もうご安心ください! このスーパースキル【剣聖】のソクアが姫をたっぷりとお守りします! まずは密着しましょう!」


「………………」


 うむ、姫はこのような場所に連れて来られてさぞ不安なことだろう、俺様がしっかりと抱き着いて守ってやらねぇとな、ぐひひ。


「ソクア!」


「はい! なんでしょうか姫!」


「キモいっ! 私から離れなさい!」


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