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第17話 マキアス、感謝される

 僕たちはコルナ村のマーサの家で1泊したのち、出発の準備を進めていた。村の畑に相当な被害がでたが、村人に死人はでなかった。人さえいればなんとか立て直すことができる。


 ちなみに1人先に帰ってしまうとんでもない人がいたが…

 僕はいまだに兄上が帰った理由がわからない。


 昨日の夜は、村をあげて僕らの歓迎会をしてくれた。イーゴナ襲撃により、十分なもてなしができないことに村人たちは申し訳なさそうにしていたけど、久しぶりにたくさんの人と笑った気がする。


「マキアスどうしたの?」


 リーナが僕の顔をのぞき込んできた、どうやら荷造りする僕の手が止まっていたようだ。


「いや、あんなに大勢の人と話したのは久しぶりだったからね」


「ふふ、マキアスの笑った顔を久しぶりにみれて安心したわ」


「え? そうなんだ、そっか」


「だって、マキアスあんまり笑わないから…そのわたしも心配してるのよ…」


「えっと、そうか、ごめん…」


 確かにリーナと再会してから怒涛のような日々が続いている。追放されたことや彼女を無事に王都に送り届けることや僕のスキルのこととか。自然と考えることが増えてたんだな。


「私ね、好きよ」


「へ!? え?」


 やばい、変な声がでてしまった。


「あ、ちが、笑顔よ。うん、マキアスの笑顔のことよ!」


「あ、なるほど。そうか、僕はなんかいつも難しい顔してたんだね。でも少しずつ変わってきたような気がするよ。リーナがそばにいてくれたからかもしれないね。」


「ふふ、そういうことならいつまでも傍にいてあげてもいいわよ」


 リーナがぱぁっと笑顔を輝かせた。


『私のマキアス様。イチャイチャしているところ申し訳ないですが、騎士たちが来たようですよ』


 エレニア(スキルプレート)さんが割り込んでくる。イチャイチャて…


「マキアス様! 我々は館に戻ります。最後にご挨拶をさせて頂きたく参上しました!」


 そこにはラーン副隊長をはじめ3等騎士たちが整列していた。騎士たちもケガ人は出たものの死者は出なかった。日頃から真面目に訓練していたおかげだろう。


「えと、ラーン。様はいらないよ。マキアスでいいから」


 僕はもう領主の息子でもないし、彼らが敬語で対応する義務はない。なのに、イーゴナ退治が終わってから、よりいっそう僕のことを様付けするようになった。


「いえ、我らが討伐隊の指揮、あの神速の剣技、そして神の矢を降らすお力。まさに我らの主となる器量をお持ちかと存じます!」


「ちょ、ラーン。それおおげさだから!」


『当然よ! マキアス様は凄いんだから、領主どころか世界を救う英雄になるわ!』


 何故かエレニアがさらにハードルをあげてきた。いや世界とか話が大きすぎるでしょ。


「じ、自分はマキアス様のような剣の達人になりたいです!」

「私は、マキアス様のように窮地を救える指揮官になりたいです!」

「僕は、マキアス様のような領民にも部下にも好かれる優しい騎士になりたいです!」


 ラーンの後ろに整列した、若い3等騎士たちが目をキラキラさせながら口々に想いのたけを僕にぶつけてくる。

 これ、かなり恥ずかしいな…なんか背中がムズかゆくなる。


「ははは、マキアス様は彼らの絶大な信頼を獲得しましたな」


 ラーンが興奮する3等騎士たちを見回しつつ、満面の笑みで僕に言う。


 それから、ラーンが静かに右手を上げると、全員が直立不動の姿勢をとり、右手を自分たちの胸にドンと打ち付けた。


「生涯の恩人マキアス様に女神エレヌリアの加護あれ!」

「では、マキアス様。我々はこれにて失礼します!」


 彼らは隊列を組んで、村を出ていった。 


「は、はは…」


 僕の口から言葉にできない何かがもれる。


 右手を自分の胸に打ち付ける行為は騎士の最上級の敬礼なのだ。


『まあ、これでマキアス様の株がまた上がりましたね!』


「うん、素直に嬉しいよ。でも僕もまだまだだよ。もっと心も剣もスキルも磨かないとね。女神さまに笑われてしまうからね」


『ま、まあ…女神はマキアス様を笑うわけがないですけどね…だって…』


 最後にエレニアがなんか言ったようだが、小さな声でよく聞こえなかった。


 ちなみにリーナの発動した【ライトシールド】についてだが、なぜ使えたのかは不明のままだ。本人いわく「虫が近づいてきて怖すぎて、きづいたらできていた」らしい。


 エレニアによると『マキアス様のコード操作を身近に感じることで、リーナの固有スキルになにかしらの影響を与えてたのかも』とのことだ。

 うむ、えらくざっくりだけど、わからんもんはわからないからな。とりあえず、窮地を脱したので良しとしよう。


 などと、思いを巡らせているうちに、出発準備が整った。


 僕とリーナが馬車に乗り込もうとしたところ、マーサがぼくらに駆け寄り飛びついてきた。


「お兄ちゃんお姉ちゃん、また会えるよね?」


「ああ、そうだねマーサがいい子にしていればね」


 マーサの僕らをつかんだ手がぎゅっとなる。まあ本当は別れたくないのだろう、昨日も大泣きさせてしまったしな。


 それでもマーサは僕らから離れて、笑顔を作り頷いた。

 良い子だな、本当はもっとわがままを言いたい年頃なはずだ。でも我慢するときは頑張ってする。僕はそんなマーサの頭を撫でて、後ろにいる両親に一礼して馬車に乗り込んだ。

 その時だった、一斉に村の人たちがでてきて、僕らに感謝の言葉をなげかてきた。


「「「「「「「「「ありがとう! マキアスさん! リーナさん!」」」」」」」」」



 僕は馬車の手綱を引きながら、すこし俯きつつ目頭が熱くなってしまった。そんな僕の様子を見てリーナが声をかけてくれた。



「ふふ、みんな領主の息子ではなくマキアスに感謝してるのね」


「そ、そうなんだ…」


「そうよ、さあ胸をはって行くわよ! さすがマキアスは最高の男だわ!」

『当然です! マキアス様以上の男なんてこの世に存在しません!』


「そうだね! みんな、ありがとう! 虫が出たらまた言ってね~!」


『「だ、ダメよ。もう二度と虫退治なんかしないんだから! 虫は嫌~~~!」』


 虫嫌いの女子2人の叫び声とともに、馬車は次の町へむけて出発するのだった。


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