第13話 ソクア(マキアス兄)視点 俺様、バッタ退治で活躍(無茶苦茶)する
俺は3等騎士たちを引き連れて、ゲイナス(マキアスの父)領のコルナ村にいた。
村を中心に弧を描くように畑が広がっている。畑以外にな~んもない。
「なんでこんな朝っぱらから、この俺様が虫退治なんかしなきゃいけねぇんだよ!」
俺はイライラしながら、【剣聖】のスキルを発動した。その瞬間、剣が眩い光に包まれる。
「おらぁ―――!!」
力任せに剣を一振りすると、光の斬撃が畑に激突して凄まじい亀裂ができた。
「ソクアさま、あまり騒がれては村人たちも怯えております。それに畑はわが領の大事な土地ですぞ」
「ああん? ラーン、おまえ誰に口答えしてんだ? こんなしょぼい村で俺様の【剣聖】を拝めたんだぞ、畑の1つや2つどうでもいいだろうが! それとも何か? 俺様のやることに文句でもあるのか?」
「い、いえそういうわけでは…」
俺がラーンと呼んだこの男は、今回の害虫討伐隊の副隊長である。また討伐隊で唯一の2等騎士で、のこりの隊員は全員3騎士だ。つまりは使えないザコばかりというわけだ。
「もうこれで何個目の村なんだよ! じょぼいクソ村巡りばかり飽きたぜ! どの村も荒らされた後だったじゃねぇかよ!」
「今回ようやく先回りできました。今度こそ害虫を迎撃できるはずです」
「おい。俺さまの【剣聖サーチ】(世界トップクラスの索敵能力:自称)にケチつけてんのか? てめらがノロノロしているから虫ごときに後れをとるんだろが!」
「そうですね。【剣聖サーチ】はよくわからないですが、ここで害虫拡大を防ぎましょう」
「ふん。まあいい、ところで肝心の虫けらはどこにいるんだ?」
「そろそろ現れるはずです。隣村はあらかた食い荒らされてましたから、次は手近なこの村に―――」
ラーンが話していると、ブーンという不気味な音が聞こえてきた。
「きたぞ! ノルタス! おまえのバックパックのポーションを全員に1本づつ配れ! 残りはおまえがしっかりと持っているんだ! 戦闘中に追加が必要な者にわたすのだぞ! 」
「は、はい! 副隊長!」
ラーンから命令を受けたノルタスは全員にポーションを配る。その手が震えており、受け取る3等騎士たちもみな緊張で動きが硬い。あ~あ~ビビっちまってる。たかが虫だろうが。
「よし、村を囲みつつ各自戦闘配置に着け! イーゴナは、村の周囲にある畑に群がるぞ! 一匹も村に入れるな! 村に近づく個体のみ攻撃せよ!」
「「「「「は、はい! 副隊長!」」」」」
「ソクアさま、全員戦闘配置につきました。彼らは実戦経験もほとんどなく緊張で動きが硬くなっております。指揮官としてソクア様から、彼らに激励の言葉を」
「よ~し、わかった! おい、おまえら! 3等騎士のくせにいちょまえにポーションなんてもらえて良かったな! だが俺様のスーパースキル【剣聖】が一瞬で終わらせるからな! いいか、おまえら俺様の邪魔すんじゃねぇぞ!」
騎士たち全員があっけにとられた顔をする。全員それとなく副隊長ラーンの方をむいた。
なんだぁ? こいつらアホなのか?
「そ、ソクアさま。私は部下たちの鼓舞をしてほしいと申し上げたのですが…」
「ああん? 最高にテンション上がっただろうが! 俺様のおかげで、このクズどもはノーリスクで討伐完了するんだぜ~これ以上テンション上がる理由ないだろうが!」
ラーンは何かを言おうとしたが、すぐに注意を空にむけた。
ブーン ブーン ブーン
耳障りな羽音を出しながら、森から複数の黒いかたまりが飛んでくる。
「ひゃはぁああ! きたなクソ虫ども! 早速俺さまのスーパースキル【剣聖】のえじきに…ん?」
初めは遠くにみえた黒い塊だが、近づくにつれてどんどん大きくなっていく。
「お、おい。なんかでかくないか? あの虫」
「はい、ソクア様。イーゴナは虫と言われてますが、大きさは人を上回るサイズの個体がほとんどですよ。」
まじかよ…にしてもでかくね?
マキアスの野郎がよく虫取りなんて言ってたけど全然イメージと違うぞ…
「まあいい、俺様の【剣聖】で華麗に蹴散らせてやるぜ!」
俺はスキル【剣聖】を発動して、光の斬撃を繰り出すと、前方にいたイーゴナ数匹が斬撃とともに吹き飛んだ。
「はぁっは―――、やはり俺さまの敵じゃねぇ! この巨大バッタ野郎が! 俺様は無敵だぜ!!」
その後も俺は、光の斬撃を放ちまくった。これであの鬱陶しい羽音も聞こえなくなっただろ。ざまぁみろてんだクソ虫ども…
ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン
「おい………なんか増えてねぇかこれ」
「ソクアさま! 西側の騎士たちが押されています! 正面ばかりでなく、全体のフォローを!」
「くそ! 俺様に指図すんじゃねぇ、クソ副隊長が! おら~おら~おら~」
な、なんだよ、俺は最強のスキル持ちなんだ! こんな虫に負けるはずがないんだ! 俺はさらに光の斬撃を放ちまくる。死ね死ね死ね死ね!!!
ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン
「ひゃぁ!! 増えてんじゃねぇかよ! なんなんだよこいつら!」
「ソクアさま! 一部の防御陣が崩壊しつつあります! 早くフォローを!」
「ごたごたうるせぇ! 使えねぇ奴らだな―――うおっ!」
不気味な虫たちが俺を取り囲みはじめる。なんだよ、クズの3等騎士たちが踏ん張らないからか!
俺さまの足をひっぱるんじゃねぇよ!
「うきゃぁあああ!」
俺は無我夢中で光の斬撃を放ちまくる! 死ね死ね死ね死ね死ね~虫ぃ~~!!
「そ、ソクアさま落ち着いてください! ソクアさまの攻撃に味方も巻き込まれています!」
う、うるさいなこいつ! 俺は今それどころじゃねぇんだよ! 3等騎士なんて、いてもいなくてもどうでもいいだろが! 巻き込まれるノロマが悪いんだよ!
「はひぃぃ! きもい! よるな~この虫ぃぃい!」
ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン ブーン
「ひぃぃぃいいいいい! 増えてるぅぅぅ! この~【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】!!」
はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、俺はスキルを乱発してなんとか接近する虫を始末した。
「ソクアさま、一時的にイーゴナの勢いが弱まっています。今のうちに補給と防御陣の立て直しをします! ソクア様は単発的なイーゴナの突撃を防いでください!」
え? 何言ってんの? このバカ副隊長? 全てにおいて俺様最優先でうごけよ!
おいおい、森の方をみると、黒い塊が大量に飛んできてるぞ。なんだこれヤバくね? スキルも使いすぎてほとんど発動できねぇぞ…
くそ、ここは次期領主としての威厳ある発言で乗り切るしかねぇな。
「よ~し! ちゅうも~く!! 帰るぞ!」
副隊長ラーンを含んだ付近の騎士たちがソクアの発言に唖然とした。皆固まってしまっている。
「な、何を言っているのですか!? ソクアさま! この状況で撤退など不可能です! 村人を見捨てるのですか!」
「あ~、誰が撤退なんて命令したんだよ。 お前たちは残るんだよ、ここに!」
「え? あの、申し訳ございません…私にはソクア様が何を言っているのか…今こそソクア様の【剣聖】をお使いになって窮地を乗り切らなければならない状況かと」
「このアホどもがぁ! だからその超絶凄い俺さまのスーパースキル【剣聖】で害虫どもを弱らせてやったんだろうが! ここまでおぜん立てしてやったんだ、あとはぼんくらのおまえたちででもなんとかできるだろうが!」
イーゴナたちはよりブーンブーンとまがまがしい音を強めて、討伐隊を包囲しつつあった。
「おっと、忘れてた。おいお前! そのポーションのバックパックを俺さまによこせ!」
「な、何を? これがなければ我々は回復もできません! 持久戦のためにも必要です!」
「回復だぁ、まだわからねぇのか! 俺様の回復が最優先事項なんだよ!」
俺はさっさとグズからバックパックを無理やりむしり取ると、最後の力を振り絞って【剣聖】のスキルを発動させてその場を脱出した。
「ふう、あぶねぇ~、あの虫普通じゃねぇぞ。あんなの相手なんかしられっかよ。何が虫取り程度だ、クソマキアスも適当にウソの報告してやがったなぁ、あいつじゃ1匹も始末できねぇだろうからな。俺は未来ある栄光の次期領主さまだからな、3等騎士どもやド田舎村人みたいに安い命じゃねぇんだよ」
にしても、俺ナイス機転だな。俺の命令を無視して勝手に突撃したことにして、あいつら3等騎士どもに罪をなすりつけりゃいいんだ。
「使えない人材は早々に捨てる!」
やべぇ領主としての才覚がではじめてきたな。やっぱ俺は凄い奴だぜ! これでリリローナ姫も俺様にゾッコン間違いなしだぜ!
「にしても、これクソ不味いな」
俺はポーションのカラ瓶をポイポイ捨てて、悠々と自領の館に向かうのだった。
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