リン、薬屋イバで仕事する 3
リンが街の薬屋イバで、仕事を始めて4年、14歳になった。
少しポッチャリした時もあったが、背は伸びたらまた棒切れのようになってしまった。
下働きから内向きの仕事、薬屋の事務仕事から、納品・受注・帳簿関係までできるようになった。薬草や商品の説明ができるようになった。
そして、ついに調剤の現場で仕事ができる。
調剤室の下働きになった。異例のことらしいが薬屋イバの若店主が推薦してくれた。
調剤室の下働きは、調剤の準備や片付け、掃除、お茶出し、記録等を行う。
それでも貴重な器材や薬草などの管理を手伝う。ある程度薬に知識がある方が使い勝手がいい。お給金は少し上がる。
薬師には、大方薬師見習いが付いているので調剤に携わることが無い。
薬師になるには、薬師認定試験を受けねばならない。薬師は男ばかりだ。基本薬師の見習いで入る。見習い期間に薬草や薬の知識を身に付け、指導薬師の調剤を介助しながら仕事を覚える。長い研修後、薬師認定試験を受ける。
薬の調剤は見て覚えるが基本。本は貴重なのでなかなか手にすることは出来ない。リンは職場の本を何度も読み返す。近くで先輩薬師の調剤を見ることが出来るのはありがたい。知識も技術も荷物にならない。無料なものは猫の手でも借りる。リンはいずれ薬師認定試験を受けたい。
何人かいる薬師の中には、腕の良い者、要領の良い者、怠け者、薬を横領している者、欲が強い者・・・色々いる。薬師の下に薬師見習がいる。
薬師になるためにそれぞれの薬師について修行を受ける。自分で選ぶことはできない。他所の薬屋の跡取りだったり、貴族の次男・三男など跡を継げなかったりする者が多い。
薬師試験は難しいようで、調剤ができるようになっても4年・5年かかるのが当たり前のようだ。良い師に出会えて、知識と技術とやる気と几帳面さが必要らしい。
調剤室は男性ばかりの職場。だからか20歳の売り時の女性は、怖い。特に仕事が目的でない女。
「あなたが、リンさんね。私は、ミーナ。掃除や片付け、備品の管理をやって頂戴。書類仕事は、私がするから宜しくね。新人は覚えることが多いから。頑張ってね」
つまりは汚れ仕事はリンの担当。こういうタイプの女性は仕事はしない。薬師の嫁か、貴族のボンボン狙いだ。
調剤室には不似合いなひらひらした露出の高い服を着て、薬師の前だけ仕事する。要領が良くて顔のいいハーストが狙いだろう。
でも、ハーストはここのお店のお嬢さんを狙っている。てい良く遊ばれているようだ。
それでも二人しかいない調剤室担当、仲良くやっていきたい。
リンが調剤室担当になっても早起きは変わらない。まずは身支度して、今まで通り店の外を掃除しながら、店先の品揃えの変化を確認する。
季節や気候の変化で必要な商品は変化する。冬には風邪薬や冷えの薬。春は体調を崩しやすいので滋養の薬。そして外に出ることが多くなるので傷薬。
夏はあせもなどの皮膚問題に対しての薬等のほかに、年中必要とする頭痛薬や腹痛・下痢止め・吐き気止め・二日酔い改善薬なども置いてある。受注商品は別扱いになる。
個人の体質や症状にあった物を医者や個人から求められたりする。個別受注の薬が出来るようになれば独立も夢でない。
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