表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/56

48新規商品の登録         

 リンはアリスからジュリアに商品が渡ったことを確認した。リンは、ノアさんの旦那さんが研究した、健康を補助するお菓子を新商品の登録申請に出した。


 病気の時や、体力が落ちた時に食べるクッキー、風邪に罹りそうなときになめる飴。手軽に飲める回復液。先の二つは、通るか分からないが、ノアさんの旦那さんの代理申請とした。もし収益があればノアさんに振り込んでもらうつもりでいた。


 治療のための薬種商会で、受け付けてもらえなければ商業ギルドで申請を出そうとリンは考えた。ノアさんの旦那さんの考え方は先進過ぎてその時代では、受け止められなかったかもしれない。病気を予防するほどの効果はなくても手軽に庶民が手に出来ればいいとリンは思っている。


 ジュリアは新規商品に申請を出すどころか出勤さえしてこない。アリスと顔を見合わせてしまった。アリスのとこにもジュリアは、何も言ってきていない。


【ジュリア・レーガンは、健康上の都合で退職】


 掲示板に張り出された。リンには訳が分からない。毒を仕込んだわけではないからリンが気にする必要はないが気にかかる。リンからリッツに声を掛けることが少ないが、話せる相手はリッツしかいない。いつも通り製品の確認に来た時にリンは声を掛けた。 


「リッツさん、いつもありがとうございます」

「おっ、珍しいね。リンさんから声を掛けるとは。ジュリアさんのことですか?」


「す、すごいですね。読心術が出来るのですか?」

「いいや、どこに行っても聞かれるからです」


「やはり突然なので、皆さん心配してるのですね」

「いやきっと違うと思う」


「どういうこと?」

「ジュリアとベルはエスぺラン侯爵家のゆかりの人だから結構特別待遇なんだ。それを快く思ってない人もいるからね。仕方ないんだ。薬師の資格を持っていても規定の基準には達していないから」


「えっ、調剤長が忖度したのですか?しそうもないのに」

「調剤長は断ったけど、大奥様からの頼まれごとで仕方なかったらしい。次に受ける特級の試験で、基準を満たさなければ退職させる約束になっている。本人たちは知らされていないけどね。調剤長の妥協点だね」


「わたしに話してよかったのかしら?」

「リンさん話す人いないでしょ」


「随分の言われ様です事。確かにいませんね」

「アリスさんがジュリアさんに脅されてること知っていますよ」


「どうして?」

「寮の料理長から相談受けたんだ」


「リッツさん、仕事多すぎませんか?倒れてしまいますよ」

「嬉しいね。リンさんに心配されるとは思いませんでした」


  確かにちょっと冷ややかな態度だったかもしれないとリンは反省した。ジュリアさんは本当に体調を崩したらしい。身体より精神の病らしい。母親が工房の荷物を取りに来た。普通執事か使用人に依頼するのに驚きだった。部屋や工房のなかで、何かを探してるようだったとリッツは言っていた。


 手渡した商品のレシピだろうか。持ち帰ったばかりでレシピなど出来ていないはず。ジュリアは自分では分析できないだろうから誰かに依頼しただろうに、家族は知らないようだ。リンのせいで心を病んだのでなければいい。


「ベルさん心配してるでしょうね。いつも一緒でしたから」

「どうかな?仲が良いわけではないと思うよ。あそこの母親同士がバチバチだから二人の心中は分からない」


「親の影響は大きいですよね。普通貴族のお嬢様は薬師の資格なんて取らないと思います。薬草で指は汚れるし、ナイフなんか使ったことないじゃないかな」


「以前言ってたけど、二人とも母親から命令らしい」

「お嬢様でも親からの言葉は断れないのね」


「まあな、貴族はしがらみも多いし、婚姻さえ親が決める。思ったより自由はない。これで、ベルの結婚攻撃が収まればいい」

「リッツさんマークされてましたからね」


 実はリッツはベルのお眼鏡にかなう相手ではなかったことが分かった。ベルの希望は高位貴族の優秀な薬師で、顔も良く体型もすらりとしていても体を鍛えてる男性らしい、ここにはいない。寝不足顔のぼさぼさ頭、栄養失調かと思えるほどのヒョロヒョロ体型、頭がいいが、生活力などない人が多い。


 外から通っている貴族の薬師は知らないが、同じだと思う。ベルさんの希望の人なら薬師でなくても引く手あまただと思う。ベルさんが結婚することで何を目指してるのか分からない。結婚退職ではないようだ。


 ジュリアさんがいなくなって、リンの嫌がらせはなくなった。ジュリアさんはリッツさんが好きだったんだと思う。リンの指導で、リッツさんがリンの所に来ることが気にいらなかったとリンは思う。


 リンの新規申請商品は、効能が弱いからこそ手軽に利用できる薬として採用されることになった。調剤長のフリッツさんの後押しがあった。名義はノアさんの旦那さんで、利用料金はノアさんが受け取ることができた。


 リンのお手頃回復液は、魔力をこめずにつくれるし、味は果物の味を数種類作れるので、小さい子供にも使えると試験販売の後、本格的な生産に入った。クッキーや飴と一緒に雑貨屋から街の商会にと販売範囲は広がった。

誤字脱字報告ありがとうございます。

来週お休みをいただきます。週末投稿できるように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ