ローストの想定外あれこれ 2
ローストは薬種商会セレスタを引き継いだ。楽々商会を回せると思った。
調剤棟の薬師に貴族からの注文の薬の作成を依頼した。調剤棟から数種類は作ったことが無いと言われた。
おかしいじゃないか。仕事しないなら辞めてもらうと脅せば、日に日に折り合いが悪くなる。彼らの作る薬は出来がいい。だが、高額取引の薬ができないのは困る。
調剤棟まで出向く。初めて入った調剤棟は、色々な器具が並び薬草の匂いがする。薬師と話し合っても、できないものは出来ないの一言で話し合いにならない。
在庫がないかと調剤棟の部屋を荒探しするも、普通の薬と薬草しかない。調剤する部屋や住居の個室、食堂や厨房は何事もなく見ることは出来た。
一部屋だけ開かない部屋があった。商会長の部屋のようだがどうしても開かない。椅子をぶつけても、裏から回って窓から入ろうとしても入ることは出来なかった。
「無理だと思うよ。なんか契約魔法がかかっているから、知らないの?」
小馬鹿にした声に腹が立った。
貴族から特注の薬の購入依頼が来ても対応できない。姉夫婦は、自分達しか分からない薬を受注していた。帳簿も取引台帳も見つからない。
貴族の秘密なのか管理が厳しかったのだろう。誰もありかを知らなかった。その薬の製作者も分からない。
3ヵ月もしたら、貴族からの依頼は来なくなった。開かずの部屋に何かあると思うが、開けることが出来ない。薬師が一人また一人と辞めていった。
姉夫婦の事故を盾に、粗悪な薬を売れと言われる。断れず売れば、当然信頼を失う。
知り合いのいかがわしい店に粗悪な薬を下ろし、代金だけを振り込んだ。
街の薬屋から製品を購入して、容器を変えて売ったりもした。商会の経営が困窮した。ついに薬師はいなくなった。もうだめかと思った。
粗悪な薬を売りつけていた奴が死んだ。取引のもつれであちこち恨まれていたようだ。街の薬屋から安く薬を買って、転売することでぎりぎり経営出来ていた。そんな綱渡りの時、息子のパイロンが薬師を取った。なかなか腕が良いようでいい薬を作ってくれるようになった。
少し息が付けた。そんな時 父が死んで領地経営がわが身に降りかかった。
パイロンが学院を卒業して結婚した。これから調剤に専念できると思った。
パイロンも積極的に仕事に打ち込むと話していた。モーリアス家の安泰も近いと思ったのに。
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