ローストの想定外のあれこれ 1
息子のパイロンが無事薬師の資格を取った。調剤も順調だった。自前の薬があるだけで利益は高い。散々ごねた領地にいた父から、爵位を得ることが出来た。姉が死んでから20年かかった。
父は姉の子供が見つかるのではないかと、望みを持っていた。とっくに死んでいるのに。爵位を継がなければいろいろなものを動かせなかったので、少しは楽になると思っていた。
ローストが侯爵を受け継いだ後すぐに侯爵領を管理していた父が死んだ。
ローストにとって前侯爵は実の父ではない。子供の頃親戚が話しているのを聞いて知っていた。父は知らないと思っている。
ローストには姉がいた。出来の良い姉だった。薬師資格は学院を飛び級して卒業の年には取っていた。学院で出会ったどこかの貴族の息子と結婚した。成績が優秀で、姉と共に薬師の資格も取っていた。薬師の資格があるだけで男を婿に迎えた。信じられなかったが父は喜んでいた。
父は領地経営に、姉夫婦は昔から我が家の薬種商会を営んでいた。領地からの薬草を使って薬を作り貴族に売る。何代も引き継がれた仕事だった。
調剤棟の薬師が薬を作って、売るだけ。誰にでもできると思っていた。
ローストは義父の弟の息子だった。
放蕩の限りを尽くして借金まで作った。弟夫婦は死んで子供を残した。義父は 残された甥がかわいそうで引き取って育ててくれた。
姉と同じように育ててもらった。出来る姉の後では、何をしても見劣りがする。
ローストはついつい遊びに逃げた。結果、実父と同じように借金を作っていた。何度か姉にお金を出してもらったが、今回は借金先が悪かった。姉夫婦にも断られた。義父には秘密にしていたので焦った。
「ロースト、お前が商会でこの薬を売ってくれれば、借金は減額するぜ」
「俺には、商会の経営に参加できない」
「姉夫婦が仕事できなくなったら、お前が全部手にできるんだろう」
「長男だろう。本来はお前が継ぐのが普通だろう」
「姉夫婦に横取りされたんだよ」
金貸しが囁く言葉に心が揺れた。
姉夫婦は事故死した。俺がやったわけではないが後ろめたい。
駆け付けた時の姉夫婦の血だらけの姿にローストは意識を失った。気が付いたとき、子供の泣き声が聞こえた。血だらけの姪だった。今にも死にそうだった。自分の従僕に託した。助けろとは言わなかった。
従僕から下町の薬師に預けたと聞いた。しばらくして死んだらしい。後悔をしたが今更どうにもできない。
商会はローストが継いだ。父から薬師の資格を取るように言われた。今更資格を取るほどの努力などできない。息子のパイロンに取らせることで納得してもらった。そのころから、父は領から本邸に来ることは無くなった。
領地からの収益の一部を振り込んでくれるだけになった。
領地にいる父には 姪は姉夫婦と一緒に死んだと伝えてある。
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