リン、初めての店番
夕方にはノアさんを起こし食事をしながら、これからの事を話し合った。
当分、リンが家事炊事しながら店番をして、ノアさんが店の横の部屋で横になり側に居てもらう。
ノアさんは申し訳なさそうにするも、スープもパンもぺろりと平らげた。お風呂にお湯を沸かす。魔石に魔力を補充しておく。まだ夜は冷え込むので温まる入浴剤を入れる。ノアさんをお風呂に入れる。
その後リンは今世で初めてのお風呂に入る。妹様にねだられて作った入浴剤は、材料が奥様持ちだったのでとても良い香りがする。オリーブの油も化粧品用のものなので、お風呂上りでもしっとりしている。
自分で使うのが勿体なくて、いつか使おうと小瓶に入れておいた。小さいながらも肩までお湯に浸れるとは、贅沢だと思いながら満喫した。その後は、生活魔法でお風呂も台所も清掃して自室に戻った。
リンは、日の6刻ごろに明るくなった窓の日差しに起こされた。一瞬ここが何所かと思ってしまった。目覚めと共に覚醒していく。まだ肌寒いので、勢い込んで起き上がる。急いで着替えて階下に降りる。
ノアさんはまだ寝ている。静かに風呂場に向かい洗面を済ませる。
お店周りを掃き、小さい声で窓などを綺麗にする魔法をかける。窓は一度に綺麗にできないので、毎日少しづつやっていこう。
台所に戻り朝食の準備だ。ガタガタと音がしてノアさんが起きてきた。
「おはよう。昨日はとても気持ちよく眠れた。入浴剤のおかげかしら?」
「おはようございます。体の温まる入浴剤です。効果があってよかったです。
以前の職場の人が腰痛もちで軟膏や入浴剤を使ってもらったことがあったのです」
「リンさんは病気を治す薬以外でも効果が高い物が作れるのね」
「いえ、まだまだです。日常生活から病気予防の助けになる物も作りたいと思っていました」
「そうね。病気になってから薬を飲むより、ならない努力は必要ね」
朝食を済ませたら、お風呂場で洗濯を済ませる。裏庭に干して店番に出る。
カランコロンとドアベルが鳴る。
「ノアばあちゃん 初級回復薬5本と傷薬あるかな? あっ、あんた誰?」
「いらっしゃいませ。昨日からお世話になっているリンと言います」
「あら、今日はジョンが買い物の係なの?」
ノアさんが店先に出てきた。椅子を用意して座ってもらう。
「ばーさん腰を痛めたんだって、若くないから気をつけなよ。老化は回復薬で直せないからな」
「ジョンには売らなくて良いよ。リン」
「あっ、ごめん。ごめん。今度薬草取ってくるから許して」
楽しい会話が飛び交う。今までの人と関わらない生活から一気に人が押し寄せる。
リンの人慣れしない様子から、ノアさんは椅子に座って店番をしながらお客層や近所の事、買い物先の店の事、裏庭の薬草や畑の事など沢山話をしてくれた。リンはこんなに人と会話したのは初めてかもしれない。
一つ一つが新鮮な驚きを含んでいた。
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