リン、職を探す
宿の部屋で男装を解いて、ワンピースに着替え宿の女将さんに声を掛けた。
「女将さん、商業ギルドは何処にありますか?」
「えっ!あんた誰?」
「あっ<すいません。先ほど宿に入ったリンです。男装してたのでわかりませんよね」
驚くおかみさんはリンを頭から足元まで眺める。
「おおぉ、華奢な坊やだと思っていたけど、女の子だったんだね」
「長旅だったので男装してたのです。すいませんでした」
「いやいや、構わないよ。こんなに可愛いなら気を付けるんだよ」
40過ぎだろう。恰幅の良い女将さんは愛想よく声を掛けてくれた。
商業ギルドの行き先を聞いてリンはすぐに出かけた。
普通のカバンに魔法のカバンを入れて、肩から斜め掛けをする。防犯対策だ。今までに作りためていた薬も持参する。まずは商業ギルドで薬師募集を探す。一応ギルド経由なら安心な職場が見つかるかもしれない。薬師ギルドだと仕事範囲が狭すぎて、なかなか見つからない。
大きい薬屋より、個人経営がいい。住み込みが出来ればなお良い。
大通りに大きな店が並んでいる。小道に入れば、小さな店が沢山ありそうだが今は行かない。路地は危険が多い。でも、掘り出し物は大通りより、こっちの方だ。大きな白い建物。ペンと馬車の車輪と天秤の印が入っている看板が見えた。白い壁に蔦が巻き付いている。大きな木造の扉にも商業ギルドの看板が彫り込まれていた。
「すいません 仕事を探しています」
「いらっしゃいませ こちらの個室にお入りください」
商人相手だと機密事項も多いいのか 個別対応が当たり前のようだ。
深い青色の髪を小さくアップにまとめ落ち着いた紺色のドレスを着た女性が対応してくれた。
「カエデ街に初めて来ました。リン、20歳の薬師です。これが商業ギルドカードです」
パイロンに書いてもらった紹介状も出す。
「ギルドカードと紹介状を確認させていただきます」
黒のトレーに乗せ、いったん個室を出ていく。しばらくして、カードと紹介状を持って戻ってきた。
「ギルドカードと紹介状をお返しします。貴族からの紹介ですので、大型店もお勧めできます」
「出来ましたら、大型店より小さめのお店で住み込みができれば嬉しいです。家事炊事もできます」
「あらら、小さい店舗はお給料がね、、、」
「それでもいいです。 独り立ちしたばかりの薬師ですから。教えをじっくり受けたいです。大型店を除いた募集主の書類を見せて下さい」
受付は奥から募集要項の書かれた書類を持参した。
リンは募集依頼書をじっくりと読む。これからの自分の生活がかかっている。じっくり仕事が学べるところ。出来れば住み込みができるところ。宿屋代もかかるし借家はまだ敷居が高い。
「あの ここのお店は?」
「あっ、そこはね、ノアさんというおが経営している薬屋です。ノアさんが腰を痛めたから一時期お休みしたんだけど、一人で仕事をするのが大変になって 薬師を募集を出したの。腕はいいのよ。元は貴族の薬屋で働いていたけいれきがある。女性なら住み込みも大丈夫だと思う。
お年が御歳だから、家事を手伝ってくれると助かると思う」
「この方はどのような方ですか?とても条件が良いのにずいぶん長く募集しているようですが」
「ああ・・・エドイット様ですね。貴族籍を抜けられたばかりの薬師の方です。カエデ街の北側の貴族の次男様です。仕事ができる方ですが、雇い主が元貴族なので、庶民の薬師では色々気に入らないようで・・・。」
口ごもる受付嬢の様子で、訳ありのようだ。採用になってもしばらくすると辞めさせる。紹介状も書かないらしい。最悪だ。逆に貴族の薬師では格が逆転するので上手くいかない。我が儘な人だ。
「貴族の所で働いたことのあるリンさんなら、問題ないかもしれませんね」
いろいろ相談した後、ギルドから近いノアさんの薬屋を訪問した。歩いて30分ほど。大通りより1本奥まったところに木造の建物があった。
建物周りはきれいに掃き清められ、花壇には可愛い春の小花が咲いていた。
何とも言えない可愛いお店だった。
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