リン、新しい街着く
リンはモーリアス家の調剤棟から街に戻る。男装のまま旅支度をした。
リンはローストに復讐を望まなかった。笑顔のサファイアには、復讐は似合わない。厳しかったゴンばーは、人の命を大切にしていた。
リン自身が貴族に戻りたいとか思わなかった。魔法をに魅了されたこと。
両親の肖像画を見たとき、両親の愛を感じた。人の死を願えば自らも悪の泉に沈んでいく。ローストなんてどうでもよくなった。それ以上に新しく自分の道を探したいと思った。
退職前に本邸を訪問した。本邸の執事が渡してくれた荷物に手紙が入っていた。父方の祖父母がモーリアス家に出した手紙だった。開封されていない。
事故現場からいなくなったサファイアを探してくれという手紙だった。
昔からいる執事などだろう。何回か会ううちに、男装がばれていたのだろうか。リンの中に母に似たサファイアを見た
のかもしれない。捨てに捨てられなかった手紙をリンに渡してくれた。サファイアでないかもしれないのに。
モーリアス家の祖父母は離れた領地で暮らしているらしい。ローストになかなか爵位を譲らなかったことから、親子間は上手くいっていない事が分かる。事故で跡取りの娘夫婦に孫まで失う。意気消沈しいぇも仕方がない。残されたローストがあれなら期待できない。孫のバイロンは、仕事にさえ興味がない。最後は爵位を譲った。
リンは乗合馬車で、トランプ国の東に位置するモーリアス家から南に位置する、クイーン領に向かうことにした。今は春、これから南に向かうには丁度いい。季節が良い。この時期雨も少ない。旅日和。
トランプ国は王制を取っている。昔は隣国との領地問題があって、小競り合いがあったが、今は両国は平和協定を結んでいる。
さらに、王太子が隣国の姫と結婚した。国の安定は、国の治安をよくする。
リンは作り置きした薬を売りながら、旅をつづけた。流れる風景、出会う人とのつかの間の会話、痛むお尻、食べにくい保存食、お風呂に入れない日々、
それでも初めての旅に胸は高鳴った。
大きな街をいくつか通り過ぎ、20日かかって緑豊かなクイーン領に入った。
さらに馬車を乗りついで、カエデという街にたどり着いた。
クイーン領はトランプ国の食糧庫と言われるほど、豊かな土地で農耕が盛んだ。そのためか、街のあちこちで食料品のお店が開いている。
新鮮でおいしい野菜や果物が並んでいる。同じアプルの実もモーリアス家の調剤棟でなっていた物より大きく甘そうだ。値段もとても安い。あちこち見ながら市場調査をしていく。
雑貨屋と薬屋では回復薬や薬の値段を調べて置く。まずは宿をとり、身支度を整える。
男装の時に一つ結びにした髪は、洗髪すると綺麗な黒髪に戻った。乗合馬車に乗る前に買った、女性用の緑のワンピースに着替える。
スカート丈が踝あたりに長くなった20歳のリンは充分大人になった。化粧はしていない。本邸の侍女達のために作った、保湿剤はリンも常用していた。
外に出ることも少ないので色白の肌、重労働もしないリンは体つきは華奢といっていい。生活魔法で洗い物もする。手荒れもなく薬草による汚れもない。
世間ずれしていない上に童顔であるから、本人が思うほど大人に見えない。
自分を理解していないのは今も、昔も変わらない。
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