リン、退職金代わりに魔法カバンと錬金釜に家族の絵もらい受けます
後半バイロン視点
リンが20歳になり、パイロン様が貴族学院を卒業した。
パイロンは正式に薬種商会セレスタの調薬部門の代表になった。リンは生活魔法が使えるようになっていた。まだ錬金には手が出せない。
調剤棟に新しく何人かの薬師が勤めることになる。リンはこれを機に、ここを辞めようと思っている。リンの男装も限界が来ていたからだ。
あと、妹様に懐かれ過ぎて、奥様が不機嫌になっている。
当然である。貴族令嬢が庶民の男に懸想しては困る。職を失う前に前に、穏便に紹介状を貰って辞めたい。女性の薬師では、ふらりと行ってすぐに働けるとこはない。屋敷の使用人でも、紹介状が無いと良い所には勤められない。
ここでの2年半で貯めたお金は十分ある。薬師としての紹介状をパイロン様が書いてくれることになった。調剤棟を探索したおかげで、父の実家を知ることが出来た。
魔法のカバンは魔力が無ければ使えない。パイロンに試してもらったが、普通のカバンにしかならなかった。
「気に入ったら持って行っていいよ。他にも何かあったら言ってよ」
なかなか気前が良い。リンに難癖付けられてはパイロンの方が困る。今まで仕事らしい仕事をしていない。リンが幅を利かせては、パイロンが威張れない。
リンは魔法のカバンに家族の絵と父の錬金釜や本・錬金薬のレシピを放り込んだ。自室の日常雑貨も貰っていくことにした。ここで購入した自分の道具もちゃっかり貰うことにした。買えば結構の値がする。薬の売れ行きが良いので良い品を納めてくれていた。
去る個室を生活魔法できれいにした。春まだ早いすがすがしい朝。リンは来た時より少し増えた荷物を持って調剤棟を出ていった。ゴンばーや両親の復讐をしたいと思って近づいたが、魔法に出会ってしまった。今はその出会いを大切にしたい。
パイロンは社交場で出会った侯爵家のアンバーと学院を卒業後、結婚をした。父から子爵委を正式に継いだ。これからは薬師を雇って、自前の薬を量産していかなければならない。
リンの話から調剤棟は施設的に十分そろっている。薬師さえ採用すればよいようだ。リン一人でも結構の良い収益になったと、ダンが言っていた。
パイロンはリンがすこぶる腕の良い薬師であることに気が付いていない。リンが薬草畑で魔力を注いだ薬草を育てていたことを知らない。
魔力をたっぷり含んだ薬草で作られた高ランクの薬の存在を知らない。
調剤長として君臨するパイロンにとって、弱みを知っているリンの存在は 少し疎ましかった。さらに最近、エメルメアのせいで、リンので母の機嫌が悪い。そんな時、リンから退職の話があった。渡りに船だった。
紹介状さえあれば街の薬師として働けるだろう。
パイロンはこれからの明るい未来を確信していた。調剤棟にリンの残したものは刈り取られた薬草畑だけだった。それさえもパイロンは気が付かなかった。のちに、リンを探さなければならないとは、この時はバイロンは夢にも思わなかった。バラ色の人生だけが彼を虜にしていた。
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