リン、ニキビ治療に、精を出す
突撃してきたパイロンの妹は、当然というように調剤棟に乗り込もうとする。リンはそこをどうにか勝手口の扉を閉めて、その扉を背にする。
「今日はね。手荒れの薬のお礼に来たの」
わたし偉い!という雰囲気を出している。
「丁寧にありがとうございます。毎日食事を運んでくれるお礼に。手荒れの軟膏を差し上げただけです」
「エメルメアにも作って!」
妹様の突然の要求。腰に手を置き胸をそる。
「パイロン様はご存じですか?」
「お兄様に何度も頼んでも作ってくれないの」
あらら、お兄様は妹のお願いを聞いてあげてください。無理と言ったら大騒ぎになるよね。ここは優しく言葉を選ぶ。
「わたくしが勝手にお嬢様の薬を作ることが出来ません・・が、何かお悩みがありますか」
妹様は一瞬泣きそうな顔になる。
「あのね・・・」
前髪をそっとあげる。妹様の額には、赤いぶつぶつが出来ていた。こすり過ぎたのか全体が赤くなっていた。
「これが気になったのですね。分かりました。お嬢様の担当のメイドとお話ししましょう」
「きれいに治る?」
先ほどの勢いが消えて、年相応の女の子になっていた。
「大分擦りましたね。少し時間かかるけど治りますよ」
「やったー! すぐ行こう エミリーが心配しているから」
妹様に手を掴まれる。今にも本邸に走りだそうとする。慌てて調剤棟の鍵閉める。満足そうな妹様に連れられ本邸に向かう。正面玄関に向かいそうになって、慌てて勝手口に向かった。
妹様の侍女が青い顔をして勝手口に立っていた。付き添いを断られどうして良いか分からなかったんだろう。 昼食運ぶロージーの後ろを、そっとつけたようだ。妹様の上機嫌な顔を確認してほっとしている。
「お嬢様、エミリーは心配しました。奥様に報告するとこでした」
「あっ、駄目!母様に知ったら怒られてしまう。エミリー、心配かけてごめんなさい」
しゅんとして、侍女のエミリーを上目遣いに見る。エミリーはいつもの事なのか、慣れた様子で気を付けてくださいと声を掛けた。
妹様は額にできた皮膚湿疹が気になって仕方なかったようだ。他人から見たら、たいしたことないと思われても、10歳の乙女心には大事件。
リンは、メイドに額の湿疹について、手当の方法を説明した。こんな湿疹は誰もが経験している。年齢、食生活、髪型、擦りすぎ、規則正しい生活…ある年齢を過ぎれば消えることが多いい。ただ手当てを間違えると痕が残る。
リンは侍女に柔らかい布で石鹸をよく泡立ててるやり方を説明する。できた泡で、そっと洗顔する。よく水で流す。ごしごし拭かず布を押し当てるように水分を取る。家にいる時は前髪を上げて置く。
「お年頃の女性によくできる湿疹です。今は赤みが強いので目につきますが、お薬は塗らないでください。食事は規則正しく食べる事、脂の多いものは控えめにしてください。だからと言って食事を減らすと、美人になれません。果物も毎日少しづつ取ってください。赤みが取れるまでお日様に当たらないように帽子や日傘を忘れないでください」
妹様は額の赤いぶつぶつを自分で悪化させたようだ。薬はいらない。若いんだから大丈夫。変化があったり、治りが遅いようならお知らせください。お医者様に見てもらっても良いですよと伝える。
「お嬢様、湿疹が治るまでは、甘いおやつは少なめに。エミリーの言うことをよく聞いて、手当してくださいね。決して手で触ったり、擦ってはいけません 勝手に薬を塗らないでください」
妹様は治ると分かっただけで、安心したようだ。
「リンの言ったこと、エミリーお願いね。お兄様のお友達が来る前に治したいの。手伝ってちょうだいね」
ちょっと頬を赤くする。パイロン様の友人にあこがれの方がいるのだろう。とりあえず湿疹の手当てを説明して、最後に危険だから、調剤棟に来ないように説明をして調剤棟に戻った。
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