リン、金髪ツインテールに突撃される
リンは血液の魔力による契約魔法で閉じられていた開かずの部屋を偶然開けてしまった。母が使っていた執務室、父が使っていた錬金調剤室、初めてなのに初めてでない感覚だった。
それからは時間があれば、毎日錬金調剤室に通った。最初は、周りを見て回る。物珍しくていくらでも見ても飽きるということはない。この部屋にいるとライの胸の奥底が暖かい。まるで取り入られたようだ。
リン
は自分の魔力を理解していない。初歩の初歩だ。開かずの部屋のドアノブが動いたのは、指に傷から血が付いたからだ。つい力任せに動かそうとした。血液と魔力による、二重の鍵がかかっていたのでないかと思う。
モーリアス家の血か?父の血か?両親の魔力か?それとも、サファイアの登録があったのかもしれない。
ローストやパイロンでは、扉は決して開かない。事務所には、金庫や長い年月の帳簿が保管されていた。錬金調剤室の保管庫には、錬金で出来た薬が残されていた。それらの薬を運ぶように、特別なカバンや薬のレシピが書かれた紙が綴じられ保管されていた。
この部屋は、父専用の特別な薬を作り取引をしていたようだ。ローストは、父が錬金調剤をしていることを知らなかった。だから、雇っていた薬師が貴族からの依頼を受けられないことに苛立った。特殊な依頼を受けていた者が分からなかった。薬師なら何でも作れると思っていた。
ローストは、調剤棟の薬師の腕が悪い程度にしか考えられなかった。自分で薬を作る資格を取らない、取れない程度に薬業を甘く見ていた。
雇われている薬師たちも父の錬金薬を知らなかったんだと思う。母のいる事務所内に錬金調剤室の扉がある。魔力で制限かけていたから、誰も知ることはなかった。
薬屋イバでも錬金調剤なんて聞いたことがなかった。庶民には、魔力という認識さえない。魔力の有る、無しで生活に困ることはない。
なんの手掛かりもないまま月日が流れた。それでも、時間を見つけては隠れて部屋を訪れていた。たくさんの本を読み、魔力について、魔法について、手掛かりを探した。
リンが調剤棟に来て1年過ぎた頃、いつものようにお昼を届けてくれるベルが鳴る。ライは声を掛けながらドアを開けた。
「ありがとう。ご苦労さま」
「あっ! 本当にいた。やっと会えた」
10歳くらいの金色の髪をツインテールしている女の子が叫んだ。
「お嬢様、私が旦那様に叱られます」
おろおろするロージーは、今にも泣きそうだ。
「ロージーは心配しないで。黙っていればいいの!」
いえいえ、ロージーは困るよ。本邸の人に怒られるのは、悪くなくてもロージーになる。パイロンの妹様だろう。
「こんにちは。お初にお目にかかります。調剤棟に住んでいるリンです」
「あら?ちゃんと挨拶できるのね」
あらら・・生意気。私より年下だよね。
「こちらには、毒草などもあります。お嬢様は来てはいけないのではないですか」
ちょっと困り顔になるもすぐ持ち直す妹様。
「お父様やお兄様と一緒のことを言うのね。もう子供でなくてよ」
いえいえ、十分子供でしょう。親の言うことは聞いてください。
私達が責任とらされるのに、下手したら解雇になる。場合によっては死が待ってる。勝手裏のドアに立ちふさがる、妹様を如何したらよいのでしょうか?
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