リン、穏やかな調剤棟の生活
リンの生活は調剤棟の管理と調剤(パイロンの代わりに薬を作る)で回る。
朝セレスタからの薬草や消耗品の納品を受け取る代わりに前日に作った薬を納品する。これは門番経由なので煩わしくない。セレスタからの依頼などはその時伝えられる。こちらからの発注も同時に伝える。
他に用事がなければ街に出ない。調剤棟の生活で完結する。
パイロンが来るのは午前中と言っても昼前なので、調剤は午前中に行う。
パイロンが来なくても昼過ぎまでに朝納品された薬草と依頼書をもとに
明日の朝の納品分の調剤を済ませる。2・3種類の薬を20から30個大体作成する。ランクが高いせいか初歩的な薬でもよく売れているようだ。
さらにダンさんから貴重なお薬の解説書が 初級の回復薬を作成依頼ともに届けられた。パイロンによく読んで欲しいと無理なお願い付きだ。専門書はとても貴重で手元に置くなど夢のまた夢。リンは時間を見ては書き写していった。
リンはカイル調剤長から、中級までの回復薬の手解きを受けていた。カイル調剤長は薬屋イバの中でも優秀。薬の開発、研究も熱心に行っていた。自分の仕事を見てどんどん知識を吸収するリンが、面白かったんだろう。
調剤や研究内容なども見せてくれた。
リンはパイロンが対応できない薬はなるたけ作らないようにしていた。いずれはここを出ていくことになるからだ。
それでも貴重な本のお礼に、初期の回復薬だけは納品するようにした。
昼食後から日がかげるまでに調剤棟の周りの整備にあたる。伸び放題の雑草を根こそぎ引き抜き土を耕す。やはり、以前薬草畑だった。雑草に隠れて苗が残っている。
よく使われ栽培の簡単なヨモ草・ワレモ草・ズイコ草・ユキシタ草など傷薬や皮膚湿疹・整腸・胃弱などに効果のある便利な薬草たちだ。
雑木林と思った木々は、杏子やイチヨの木・ザクの木・コブの木もある。利尿・消炎・強壮などの効果がある。それに日常に食べられる果物も小さいながらも少しは生っていた。時間がかかるが楽しい作業になりそうだ。
本邸との通路様に雑草を刈っておいた。
あれからロージーともう一人、ノルという男の子が配達してくれていた。貴族の厨房の賄い料理は美味しい。少し多めと言ったが十分2食分になる。
手荒れの酷い二人に 簡単な軟膏を手渡した。本邸の使用人から購入依頼が来たのには驚いた。
ダンさんに話したら、セレスタからの薬草でないなら作って販売してもいいと許可が下りた。量が多くないから薬草以外は使っても良いらしい。
薬草畑から収穫して作るので元手はたいしてかからず、ちょっとしたお小遣いになった。腰痛や膝の痛みの軟膏・皮膚の保湿液などを作るようになっていった。
ここでの生活は、お金を使わない。ここから出ていく時に困らないようにしっかり貯めておこう。今は男の子でも通るけど、この言い訳も長くはもたないだろう。調剤棟に人が増えれば身ばれの危険は高くなる。使える時間は少ない。
薬種商会セレスタに卸す薬は順調に増え、納品できている。ランクも良いので苦情等もない。納品される薬草も割と良い物が増えた。
ダンさんが手配してくれているようだ。
納品時の手紙に珍しい薬草があるから使うかと書いてくれることも増えた。
ローストが来ることはない。パイロンもたまに顔を出してもすぐに帰っていった。平穏な生活が出来ている。
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