リン、初めて薬種商会セレスタにお薬納品
一人で作った傷薬初めてのドキドキ納品
隠れ薬師生活の始まり 思いのほか待遇良いので申し訳ないかな
パイロンとの話が終わり傷軟膏を30個仕上げて昼食を取った。その後、リンは街にある薬種商会セレスタに向かう。
30個の傷薬とパイロンから預かった紹介状をカバンに詰めて出かけた。屋敷からは正門でなく、使用人出入り口から出入りすることになっている。
最初の日に門番に挨拶を済ませてあるので出入りは自由だが、朝は5刻、夜は月の9刻までしか出入りできない。
貴族街は高台にある。高位貴族ほど高台に広い屋敷を持つ。整備された石畳を歩いて1時間ほどで街に出た。リンは男装しているが誰かに見られては困るので足早にセレスタに向かう。
「こんにちは」
重い木のドアを開けてセレスタにの中に入る。ガラス窓から日が入り中はとても明るい。薬屋イバと違って薬が並んでいない。薬屋と言うより、貴族のサロン?ようだ。受付の女性の後ろに綺麗に磨き上げられた大きな薬棚が壁一面にある。天井に近い戸棚はどうやって取り出すのかとかとボーっとしてしまった。
「いらっしゃいませ」
赤髪のきれいな女性が声を掛けてくれた。落ち着きのある貴婦人のようだ。
「あの・・・ パイロン様からの紹介で調剤棟から納品に来ました」
声が上ずってしまった。男なのに素の声が出てしまう。
「あら、聞いています。こちらに座って待っていてください。ダン!調剤棟から来たわよ」
受付の横のドアから 背の高い男性が現れた。
「こんにちは。セレスタの薬品管理を担当しているダンと申します」
「初めまして、モーリアス家の調剤棟で仕事をしてます。リンです」
リンは今まで人との関わりが少ない生活をしてきた。仕事以外世間を知らない。どう話していいかわからずどぎまぎする。
「緊張しないで。これから長い付き合いになるのだから。ロースト様から指示を受けています。パイロン様は薬師資格を取ったばかりなので、調剤は大変でしょうけど しづつ頑張って下さい。
こちらが調剤棟で必要なものを購入するときに使うカードです。
リンさんの管理でいいそうです。3金貨入っています。明細をいただければ 出金分入金します。基本、調剤に必要な薬草や器材・消耗品は、商会の取引先から直接納品します。代金はこちらで支払いますので煩わせることはないです。必要なものは、薬の納品の時お知らせください。
それから、リンさんのお給料は毎月2金貨カードに入れます。他に聞きたいことはありませんか」
立て板に水のごとし。お給料がもらえることが分かった。
しっかり薬を作らないと決意してカードを受け取った。
「あっ、傷薬30個納品します」
「ありがとうございます。鑑定させていただきますね」
そう言って 傷薬の一つをもって奥に入っていった。
「リンさん、そんなに緊張しないで。何歳なの?」
「もうすぐ17になります」
「パイロン様より、一つ下ね。これから頑張ってね」
お給料はともかく貯めておこう。何がなくてもお金があればこの街を離れるのも簡単だ。もしものために、調剤の技術も磨かないとならない。とても良い職場。足場を固めたら次を考えよう。
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