リン、仕事を丸投げされる
パイロンはソファーに座って言いたい放題だ。
なんと勝手なものだ。元から要領の良い見習いだった。仕事仲間とも喧嘩することもなかった。揉め事にしない才能だ。
こんな事になるかと思ったから薬師の資格は取っておいた。ゴンばーといた時、資格なしの商売は捕まったら牢屋入りだと知った。たとえバイロンの名前で商品を作っても、何かあったらリンが無資格だからと責任をとらされる。
資格があっても何を言われるかわからない。相手は、貴族だから。慎重に行動しないといけない。
「では、時々は顔を出してね。一応お薬作ってるという態度は見せないと。
あと、薬草や消耗品などの請求や納品はどうするの」
「一度商会に行って手続きしないといけない。今日できた薬持って行ってよ。
連絡しておくから。取引先は商会関係になると思う。なんかあったら僕から言うから。それと食事だけど自炊するの大変だろう。一人分本邸の厨房から届けさせるよ」
「食事は助かる! 昼の分を届けてもらうと助かる」
「昼だけ?」
「朝はパンとスープで夜は昼の残りでいいから」
「うん、分かった。お昼少し多めにして、パンも追加しておくね」
「あっ、前薬草畑だったとこ耕しても良いかしら?それと他の部屋も覗いてもいい?」
「好きにしていいよ。さっきも言ったけど、調剤棟の表の主は僕だけど、裏の主はリンでいいよ。リンは壊したり盗んだりするような人でないから心配していないよ。新しい薬師が来るまでいろいろ整備してよ」
「分かったわ。昼後でも商会に顔を出すわ。黒板に納品内容書いておくから黒板見て。あと納品台帳みたいなものない?」
「うん、用意しておくよ。じゃよろしく」
言いたいことだけ言ったら バイロンは本邸に帰っていった。
リンはそのまま傷薬を30個作り上げた。
バイロンのおかげで、昼食は厨房の下働きのロージーが届けてくれた。恐る恐る調剤棟に来たようで、リンの顔を見てほっとしていた。
「こんにちは。厨房のロージーです。毎日お昼に食事を届けに来ます」
「ありがとう。僕はリンと言います。 バイロン様の手伝いで調剤棟に住んでいます。もし、ベルを押しても僕が出てこなかったら、ここに箱を置いておきます。この中に置いていってください。食器は洗っておきます。翌日の昼に回収してください」
「洗ってもらえるなら翌日でも大丈夫です。ずっと空き家だったから来るの怖かったです。リンさん優しそうだから安心しました。何かありましたらお知らせください」
ぺこりと頭を下げて戻っていった。
リンと同い年くらいだ。下働きは手が荒れる。手荒れ用の軟膏を作ってあげよう。厨房までの道の草を刈っておかないといけない。やることが多い。
昼はお肉の入った野菜スープに果物。多めのパンと紅茶の茶葉が入っていた。昼食を済ませ商会の手続きのため外出の支度をする。ローストから身なりを整えろと言われたので、服を購入しなければならない。調剤用の服も買わないといけない。いろいろ物入りだ。
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