リン、モーリアス子爵邸の離れの調剤棟2階に住む
初めてな 快適な個室での生活
不安とワクワクな新生活の始まりです
リンは、薬屋イバを退職した。パイロンに引き抜かれることで、モーリアス子爵邸の離れの調剤室に勤めることになった。調剤棟の2階に住居を決めた。調剤棟はリンしか住んでいない。パイロンは、屋敷から通ってきている。他の薬師や従業員は半年前を最後に誰もいなくなった。
パイロンは、跡取りなのでとても大切にされている。薬屋イバの見習いでも 頻回家に帰っていた。だって自室の掃除もできない。食事は外食、洗濯なんて自宅に持ち込んでいる。一人では暮らせないボンボン。
さらに、1年の薬師見習いに出たことを母親が、苦労させたと甘やかしている様子。
パイロンは 学院に復学して社交界にも顔を出して、素敵なお嬢さんを見つけるために調剤どころでないらしい。パイロンが熱冷ましや腹痛止めの薬を作っても、やっと売れるCランクが出来たら良い方だ。
あくまで貴族籍を継ぐためだけの薬師資格なんだろう。
リンには、朝日が差し込む日当たりのよい個室を住居に選んだ。雑踏の騒音がない。小鳥のなく声と優しい日差しで目を覚ます。初めて手足を伸ばしても何もぶつからない部屋。一人部屋なのが嬉しい。ずーっと誰かと一緒の相部屋だったから。
少しくたびれた木枠の窓を押し開けると、秋の風が吹き込んでくる。
まだ、カーテンも布団もない。部屋にあった毛布にくるまって夜を過ごした。
以前の事を思えば寝台がある。隙間風も入らない。一人部屋は高級宿のようだ。いずれはいろいろ揃えなければならないが、急ぐことはない。
寒くなってもこの部屋には魔石ストーブがある。凍え死ぬことはない。
この調剤棟は、薬屋イバの調剤室など比較できないほど設備が整っている。
これを放置していたのが残念だ。パイロンが、頑張ってくれるといいのだが 無理だろう。リンが住むようになったら、調剤室のことさえ何もしない。
調剤する気があるのか一度話をしたいと思っている。
貴族の屋敷だけに敷地は広い。本邸からはかなり離れている。さらに、屋敷回りには大きな木々が生えている。人目を気にする必要がない。ありがたい。
手入れが行き届いていないので、調剤棟の周りは、雑木林と雑草に埋もれている。裏庭を整備したら薬草が育てられそう。パイロンに相談しよう。
ここは住居用の個室でもシャワーも使える。トイレまで魔石で洗浄できている。お茶を入れられるように小さな台所がある。簡単な自炊もできる。
街以外は、穴ほってその辺で済ませる。
ここのお抱えの薬師は、貴族だったんだろう。設備が整っていて当たり前。
井戸汲みが懐かしい。ゴンばーが水汲みが一番大変だとよく言っていた。
リンも裏町に来たばかりは大瓶にいっぱいにするのに、小さな桶で何回も運んだ。懐かしい。
リンの最初の仕事は、水汲みに掃除と薬草取りだった。少しずつ料理や洗濯、お使い、調剤と広がっていった。それでもリンの小さい手で出来る事は、少ない。それでもゴンばーは言っていた。
「リンが運んでくれた水は美味しいね。ありがとう」
「水は命の基だから大切にしないといけない」
買ってあった少し硬いパンを食べて、階下の調剤室に向かう。ここに来てから5日間、一人で掃除に明け暮れた。パイロンは掃除を家の使用人に頼んだようだ。調剤の器材の整備などは何もしていなかった。
購入した物品は箱詰めのまま放置されていた。本当に最小限の掃除で終わっている。
調剤棟の1階には、部屋が沢山ある。薬師の個室、食堂、見習い部屋、厨房などが完備されてる。パイロンが来るまで見て回る。
バイロンに期待するのが間違ってる。そんなことを考えながら、今日から仕事することになっているのでパイロンを待つ。
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