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何も言わない王子に、私も何も言わず、聖獣の王子を撫でる。
王子は気持ち良さそうに目を細めていた。
そう言えば、最初の”もふもふタイム”の時は、
背中しか見せなかったのに、
今では横にゴロンとなり、お腹も見えている。
本来弱点であるお腹を見せるのは、
それなりに、気を許してくれていると言う事なのだろうか。
そう考えていると、王子もちょぴっと、
寂しかったのかなと思い至った。
本当は、”もふもふタイム”をずっとして欲しかったのかなと。
そんな思いをいだきながら、王子を撫でていると、
ふいに声が響いた。
「名前を呼んで欲しい」
「名前ですか?」
王子の事はずっと王子と呼んでいた。
そう言えば、名前を呼んだ事はない。
唐突にどうしたのだろうと思いつつ、名前で呼ぶ。
「ユリウス様?」
「様はいらない」
ちょっとためらって、
「ユリウス」
と呼ぶ、尻尾が大きく動き、ご機嫌のようだ。
「2人だけの時はそう呼んでくれ」
そういって、聖獣は喉をゴロゴロならして、満足しているようだった。