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「あり得ない」
ダンスホールに、私の言葉が響く。
上等なホールだけあって、自分でもびっくりするぐらい、
声が響いた。
「何なのですか!そのダンスは!!!!」
下手だと聞いていた。
隣国の王女を転ばしたとも。
しかし、王子のダンスの腕前はその予想を遥かに上回る、
出来の悪さだった。
リズム感がない、ステップを間違える、女性を強引に動かしたりする。
学園で、酔っ払いみたいな剣士のダンスに付き合った経験もある、
あのヘンテコダンスがまだマシだと思う日がこようとは・・・・
しかし、ダンスの先生は感激し、王子もどこか嬉しそう。
「お・・・王子が・・最後まで踊れるなんて・・・・」
確かに踊った、踊りきった。
しかし、それはステップを間違った王子の足を全て私がよけ、
無理矢理私を動かそうとしたのを、
す・べ・て・フォローした結果である。
一番簡単であるはずの、スローワルツでこれ。
王妃となる人の為にも、何とか矯正しなければ。
「王子!特訓です!!!」
王子は、どこか嬉しそうな表情のまま、私の手を取った。