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なおも、固い表情で突っ立っている王子に、
王が話かける。
「こちらこそ礼を言う、そなたの勇気が、王子を救った、
今日はもう遅い、ゆっくり休まれるがよかろう」
「ありがとうございます」
そう言うと、扉が開けられ、案内してくれた人が、
私に退場するよう促してくれる。
王と王子に礼をし、案内人に続いた。
その頃、謁見の間で、王と、王子、大臣が話している、
「うむ、リンダの話だともっと落ち込んでいるかと思ったが」
「そうですよね」
と大臣が続ける。
「やはり遠慮しているのかのう」
そう言って王が王子を見る。
王子は固い表情のまま、自分の手を見ていた。
『ありがとうございます』
そう言われた時の笑顔、それが本心からだと分かって、
自分に嬉しいと言う気持ちが沸き上がった事は事実だ、
自分を恨んでいる風ではないが、それでも、
彼女の未来、夢を奪ったのは事実。
何か自分に出来る事はないか、王子は静かに考えていた。