一対一
「ギャウウウウ!」
一回り大きいゴブリンは怒っているようだった。そりゃそうだ。自分の家が破壊され自分の部下を傷つけられたのだから。でも家に最後の一撃を加えたのお前だけどな!
ウィンドバレッドは家に邪魔されたようでゴブリンの体は傷ついていなかった。
「一対一だ。正々堂々と勝負しようぜ」
「ギャアアア!」
返事をしたかのように叫んで突っ込んできた。持っている武器はこん棒だ。配下が持っていたこん棒よりは太いが。俺は無茶苦茶に振られるこん棒をよけながら隙を伺っていた。
こん棒と短剣だとどうしてもリーチが違うので攻撃に転ずるのが難しいのだ。それに短剣でこん棒を防ぐと短剣が抜けなくなる可能性があるのだ。案外やりづらい相手だった。これが普通のゴブリンだったら筋力がないので警戒する必要はないがこっちは当たれば骨折するかもしれない。
いつ攻勢に出るか考えているとゴブリンが攻撃をやめて肩で息をし始めた。
【決着だな。もう少し考えて攻撃するといいぜ】
転生者じゃないか一応のため日本語で話しかけつつとどめを刺しに行く。
「我が剣は最高の切れ味なり。万物を切り裂く剣である。『エンチャント:シャープネス』」
「ギャアアアアアアア!」
最後の叫びだとでもいうようにこれまでで一番でかい声を出してきた。転生者ではないことを確認すると俺はそれに怯まずゴブリンに向かっていった。剣の切れ味を上げて首に切りかかる。半ばまで首を切り裂くことができたがゴブリンの鋭い歯で反撃され肩を切り裂かれた。
「油断したか。いてぇな」
父さんにぼこぼこにされてなければここで蹲っていたかもしれない。だが俺は蹲ることなくもう一度ゴブリンの首に向かって剣を振った。ゴブリンの首は跳ねとび、転がっていった。
「父さんのおかげで楽に勝てたな」
父さんが猪の首をスパッと落としていなければ、この魔法を実践するのはもうちょっと後だったな。魔法で剣の切れ味を上げられるか微妙なところだったからな。
「さてこの後が面倒だ」
俺は魔法を使ってゴブリンの死体を集めて魔石を抜いていった。魔石を抜くのは魔法ではまだできなかったので一つ一つ手でやった。魔石を抜いている途中に肩が痛み出してきた。戦闘中出ていたアドレナリンが切れてきたようだ。攻撃魔法ができたんだったら回復魔法もできるんじゃね、と思い試してみることにした。
「奇跡の技よ。我が傷を治せ。『ヒール』」
回復魔法の効きは悪くあまり治らなかった。うーん、これは現代医療で一気に治ることはないというイメージが染みついているからだろう。現代人だった弊害がここに出たか。だが少しづつは治るし回復魔法になれたらこの問題も解決すると思うので心配はしていない。てか、聞くようになると思いたい。俺だけ回復魔法が効かないとか嫌だぞ。
何回もヒールをかけ傷を治したところで魔石を抜く作業を再開した。
「これで終わりか」
魔石と右耳をとり終わるころには昼頃になっていた。
「初めて魔法を使ったし、バッグもまぁまぁいっぱいになったから帰るか」
俺は帰ることにした。集まった魔石は六十五個で倒したゴブリンの数は六十九匹だった。数が違うのは魔石にウィンドバレッドが当たったようで無くなったり粉々になっていたりした。ちなみに討伐証明の右耳も一つ無くなっていた。
魔法を使うとこんな弊害があるのかと思った。次からはなるべく剣で倒すようにしよう。粉々になったものは集めるのも大変だし金にならないと思い集めなかった。ゴブリンの魔石一つが小銅貨一枚くらいなのだ。粉々になったらはした金にもならないだろう。
魔石だけだと銅貨七枚くらいになるだろうが今回は討伐依頼を受けているのだ。討伐依頼は討伐証明がないと失敗になるが討伐証明があるとお金がもらえるのだ。ゴブリン一匹につき小銅貨一枚になっている。つまり魔石と討伐の報酬合わせて大銅貨一枚にはなるのだ。今と比べれば大金持ちってもんよ。一応一回り大きいゴブリンの右耳もとったが金になるかは分からない。
ゴブリンを合計で百匹ぐらい狩ったらバッグも一杯になったので、帰りに会う魔物には見向きもせず帰った。




