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選択肢1

その翌日から、クロームやランデルとともに近隣の街や、耕地を廻る日々が続いた。


クロームは現地の視察と同時に、必要な物資などの手配や、領主や役人からの情報収集などで忙しく、朝から晩までほぼ予定がびっしりと埋まっていた。


ソフィーは、本来の予定ではリリーとともに耕地で研究をしたり、空いた時間は二人でのんびり過ごしたりと余裕のあるスケジュールを組んでいたが、現地の状況やリリーがそもそも不在ということもあり、大幅に予定を変更したのだった。


基本的に朝クロームについてその土地の耕地を廻り、持参した種の説明や今後の記録のつけ方を領民たちに指導するサポートにまわった。午後は近くの教会を訪れ、初日同様に負傷者や病人の看護に走り回った。


そんな日々もあっという間に過ぎ、視察も最終日を迎えた。

ソフィーは感慨深いものを感じながら、穏やかな気持ちでクロームに話しかけた。


「いよいよ今日で最後ですね……今日はどのような予定でしょうか?」


「日が落ちる前にここを出発し、王都に向かう予定だ。帰りもまた長い道のりになるから、今日はほどほどにするように」


「?はい、殿下にご迷惑はおかけしませんわ」


毎日へとへとになるまで働くソフィーを気遣ってのクロームの発言だったが、

ソフィーは彼に心配されるなど予想すらしていないため、遅くならないよう警告したのだと解釈した。


「……まあ、そういうことでいい」


「殿下も不憫ですねえ~」


涙を拭うしぐさで不器用な主君の気遣いをソフィーにも気づかせようとしてみたが、ソフィーは全く気づくそぶりもない。ランデルの思惑は外れたばかりか、クロームも不自然なまでの笑顔を浮かべてこう言った。


「お前がそんなに俺のことを心配してるなんて知らなかったな。ちょうど城に着いたらご褒美が沢山あるから、楽しみにしておけよ」


ランデルは途端に顔を真っ青にして、悪魔だ、悪魔がいる。えっ俺むしろいい働きしてなかった?違った??とかなんとか大きな独り言を散らかしている。


「ランデルさん、ちょっとうるさいわ」

「お二人とも、俺への態度が雑じゃないですか!?ねえ」


めんどくさそうと判断し、ソフィーは静かに目を閉じた。


____

今日は視察初日に訪れた街に再びやってきた。

町の中央にある広場に着くと、まばらだが前回よりも人影がある。


不思議そうに見ていると、先ほどまでグズついていたランデルがケロッとした表情で言った。


「ああ、今日は月に一度の市場がある日ですよ。珍しい地域の民芸品や貴重な陶芸品が手に入る、骨董品市があるんです」


「へえ~!骨董品市というのは、興味があるわ!」


「よかったら行ってみますか?」


「いいの?!」


骨董品市と聞かされて興味津々なソフィーだったが、黙って聞いていたクロームがすかさず釘を刺してきた。


「おい、ランデル。余計なこと言うな。ソフィー嬢も、今日は特に人も多くて危険な日だ。……そんな顔してもダメなものはダメだ」


むっとしてクロームを下から睨みつけてみたが、視線を外されただけだった。


「ねえ、お願いランデル。もし私を連れて行ってくれたら……そうね。1日お休みをあげるわ」


「ぐっ卑怯ですよソフィー様……」


でも流石は鉄の近衛騎士。甘い誘惑にグラついていた(そもそも1日も休めないのが可哀そうだ)が、ソフィー様を危険にさらすわけにはいきませんから、と至極真っ当な理由で断られた。


しかたがないと諦めて、ソフィーは以前訪れた教会へと再び足を運んだ。


「あら、王宮のメイドさんかしら?元気がよくていいわね。見ている私まで元気になるわ!」

「あの子たいしたもんだよ。ひどいケガにも顔色一切変えないで、手当もそつなくこなすんだから」


事情を知らない領民やシスター達は、ソフィーのことを王城のメイドだと勘違いしているようだ。

まさかこの国の次期妃候補とは知らず、自分の娘や孫のように温かい目でソフィーを見守っていた。


(セントラルノ教会で見習いのようなことをやっていたおかげね)


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