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皇后がお呼び3


「殿下、お茶を淹れてまいりました」


もう帰ったと思っていたのだろう。

顔を上げたクロームは、意外そうな顔でソフィーとお茶を交互に見た。


「ああ……ありがとう」


ランデルにもお茶を淹れて渡すと、水のようにグビグビと飲み始めた。


「ありがとうございます……!」


「お二人とも。一体どれほど働けばそんなに目の下にクマができるのですか?休憩のお時間も取らないと、体を壊してしまいますよ」


「殿下にぜひ言ってやってください!ここ1週間は休憩もなしで1日ぶっ通しで書類を片してるんですから。ろくに寝れてもいません。はあ、早く家に帰りたいなあ……」


呆れているソフィーと、嘆くランデルを無視して、クロームはそっとお茶を飲んだ。


「これは……?」


「あまり馴染みがないかもしれませんが、東方のお茶です。疲労回復にいいんですよ」


一口飲んで、そのままクロームの動きが止まってしまった。


あまり口に合わなかったのかと、クロームに聞こうとした時。


コンコンと扉をたたく音が聞こえ、我に返ったクロームが返事をすると、

執務室の扉が開き、男が入ってきた。


「失礼いたします。殿下、干ばつ問題の件でご相談がありまして。今よろしいですか?」


「ああ」


出ていくタイミングを失ったソフィーに、ランデルが、長くなりそうなので終わるまでソフィー様もお茶を飲んでゆっくりしていってください、と着席を奨めてきた。勝手に帰ることもできず諦めてお茶を飲むことにした。


クロームらが話しているのは、国の南部で問題となっている干ばつの件だった。


「ここ1か月の間、南部で暴動が起こる頻度が増えており、各領主からの救済を求める声が上がっています。こちらから兵を派遣して何とか抑えている状況ですが、これ以上は難しいかと」


「領兵は動いているのか?」


「はい。ですが領兵だけでは抑えられない状況になっています。雨が降らないことにより、作物も深刻な被害を受けています。水や食料の供給も必要かと思われますが、いかがしましょうか」


「まず第一に領民の保護だ。各教会と連携を取り、危険地帯にいる領民は安全な場所へと移せ。そこに水と食料を運ぶ。あと2日あればこちらでの仕事もある程度片つく。視察に行くと伝えてくれ」


「はっ」


「ランデル、あと2日で片すぞ」


「ええ、わかっていましたよ、今日無事に帰れるわけがないことは……」


(南部がそれほど深刻な状況だなんて……それに殿下が多忙なのは前と変わらないのね。お茶を飲む時間もないほど忙しいなんて)


初めて聞く南部のひっ迫した状況に、ソフィーも何かできることがないかと考えた。


「あの……殿下」


「なんだ」


「口を挟むようで恐縮ですが……リリー・タラン・ルータス行っている緑化事業などはご存知ですか?ルータス領の干ばつの被害に悩まされているようで、被害を少しでもなくそうと取り組んでいる事業です。もしかしたら、南部の干ばつの件で、お力になれるのではないかと」


「ルータス家の令嬢か。少し耳にはしていた。事業はうまくいっているのか?」


「はい。少しずつではありますが改善が見られるようです。大きな成果と言えるようになるのは、これから先何十年後の話だそうですが……」


「そうか」


クロームは少しの沈黙を置いて、こう言った。


「急だが、2日後にルータス令嬢をここへ呼べるか?君にも同席してほしい」


「承知しました。至急連絡いたしますわ。……って、私もですか?」


「ああ。君も興味があるんだろう?」


「ええ、まあ、興味はありますが……」


顔に出ていたかもしれない。


「わかりました。またご連絡します」


今度こそ挨拶をして部屋を出た。

ランデルさんはご丁寧にも執務室の外までお見送りをしてくれた。


「ソフィー様、本日はありがとうございました」


「お忙しいのは仕方ありませんが、無理して倒れては意味がありませんよ?……そうだ」


ソフィーは紙のメモを取り出して、ランデルに渡した。


「先ほどのお茶ですが、疲労回復に効くのでぜひまた飲んでください。レシピはここに書いておきましたから。渡そうと思っていたのですが、忘れるところでした」


「おお……!お気遣い感謝いたします!殿下も喜ばれるでしょう」


ソフィーはランデルに挨拶をして、王宮を後にした。


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