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皇后がお呼び1

____



「……うん。美味しいし、飲みやすいわ!」


「それはよかったです!それにしてもソフィー様、エルダーフラワーに薬効があるなんてよくご存じでしたね。これまでは薬として重宝されることの多いものでしたから、これをお茶にしようという発想は、意外性のなかに的を射たような……ふむ、やはり素晴らしいですね!さすがソフィー様です」


「たまたま薬として使われていることを知っていただけよ。おだてても何も……ジェシー、リダさんに何かお持ちして」


「はい、お嬢様!今日はシェフお手製の苺タルトがありますよ。すぐお持ちしますね!」


今日はカンデス領で、先日収穫したエルダーフラワーを使ったお茶の試飲会を行っている。

試飲会といっても小規模なもので、メンバーはリリーとルーク、そして専属の焙煎士であるリダの3人だけだ。

リダはソフィーのお店で雇った、ハーブティー専門の優秀な焙煎士だ。各地を回りその土地のハーブを研究しているため、こうして会うのは数か月ぶりだった。


ソフィーは新しいハーブが収穫できるたびリダへ連絡し、次回カンデス家を訪れる際、試作品を持ってきてもらうようにしている。


「結構フルーティでさわやかな味なのね!これならお兄様も飲みやすいんじゃない?」


「うん、俺はわりと好き」


「よかった!ルークが言うなら間違いないわ」


リダからレシピを受け取ったソフィーは、ジェシーを呼んで早速店の工場で量産してもらうよう伝えた。


「でもこれが風邪の引き始めに効くとか、よく知ってたわね。薬の勉強もしていたの?」


「まあ、少し、興味があって。ちょっとかじっただけだから、あまり詳しくは知らないの」


リリーからの質問にどう答えるか迷って、結局あやふやな言い方になってしまった。効能に詳しいのは、一度目の人生で私が皇后として王宮にいた頃、王宮専属の薬師と時々会って、よく薬のことを教えてもらっていたからだ。


「ソフィーはなんでも好奇心旺盛だよな。ハーブの栽培に、野菜作りだろ?あと薬にも詳しいし、料理もできる。教会で子供たちと遊ぶのも上手だ」


「それだけじゃないわ!ソフィーが発案したお化粧とかドレスも、若い令嬢に今すごく人気だし、この間夜会にソフィーがプレゼントしてくれた香水をつけていったら、これもまたみんなに根掘り葉掘りきかれちゃったんだから!」


「なんと!ソフィー様は多方面に優れていらっしゃるのですね!来るたびにいつも驚かされます。それに、その若さで各国の情勢にも興味を示されているのは素晴らしいです!僕にいつも各国のことを尋ねられるのは、この国に有益な情報を余すことなく求めているからでしょう?!」


「え、ええ。まあそんなとこかしら」


ソフィーを除く3人で話が盛り上がってるのを傍目で見ながら、話題の中心であるソフィーは、ここ数年の日々を懐かしく振り返った。


(元からなにもかも得意だったわけじゃないわ。私はただ、必死に努力する道を選んだだけ)


お茶の話をしていたのが、ソフィーの最近の活躍に話がすり変わってしまった。一旦試飲会は終わりかしら、と3人にそろそろと声をかけようとしたとき、ジェシーがタイミングよく戻ってきた。


「失礼いたします、ソフィーお嬢様。そろそろお稽古のお時間ですよ」

「あら、もうそんな時間なのね」


「稽古?ダンスの練習でもするの?」


リリーが訝しむように言った。もちろん、ソフィーはここ3年どんな夜会やパーティにも出席しないのだから、ダンスの練習など必要ない。


「いいえ。剣の練習よ」


「「「剣?」」」


3人とも一斉にソフィ―の方を向いた。


「は、待て待て。なぜソフィーが剣?」


ルークはニコリと笑っている風だが、目が笑っていない。


「それは、その……まあ護身のためよ。世の中何があるかわからないじゃない?」


まさか山賊に追われて死んだことがあるからとは言えず、なんとなくそれらしい理由をあげてみた。


「ふうん」


ルークの探るような視線を感じるが、あえてリリーとリダに向かって言った。


「じゃあそろそろ稽古に行くわね。私は戻れないけど、ゆっくりしていって!」


「はあ。私はソフィーが何やってももう驚かないと決めたわ。今」


「ソフィー様!次回作は最高のネタを探してきますから!」


「……あんまり無茶するなよ」


バラバラな反応の3人に手を振って、稽古の準備へと急いだ。


☆フィクションなので、薬効については参考にしないでください!

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